世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされた2020年、国際報道もまた新型コロナウイルス一色であった。しかし、そのような報道は世界を包括的に理解する上で十分と言えるだろうか。確かに、新型コロナウイルスは世界中で多くの感染者・死者を出し多くの人々の生活を一変させた。新型コロナウイルス対策の影響は、大量の失業者を生み出し、22年ぶりに世界において極度の貧困率が上昇するなど、特に低所得国を中心に甚大な経済的・社会的ダメージとして現れている。一方で、新型コロナウイルスが報道を独占する裏で、世界ではそれと同程度か、もしくはそれ以上の影響を及ぼす出来事が多く起こっていた。例えば保健医療分野に着目してみると、結核によって2019年だけで新型コロナウイルスによる死者数に近い約140万人が死亡している。逆に、アフリカでは野生のポリオウイルスが根絶されたという喜ばしいニュースもあった。また新型コロナウイルス関連以外に、アメリカ大統領選挙についても大きく報道されたが、2020年に世界の多くの人々の命を脅かした出来事は、あまり報道されなかった武力紛争や災害、気候変動などであった。
2018年、2019年に引き続き、GNVは2020年も世界で起きている重要な出来事が必ずしもその規模や影響に見合った報道がなされていないと考え、重要だが報道が十分でなかった出来事をランキングとしてまとめた。
詳細な基準については脚注(※1)、報道量の測り方については(※2)を参照いただきたい。それでは、2020年世界の潜んだ10大ニュースを1位から順に見ていこう。
第1位 中央サヘル:紛争・気候変動などにより1,300万人が人道支援を必要とする
アフリカの中央サヘル地域に位置するマリ、ブルキナファソ、ニジェールなどで、これまでにないレベルの人道危機が起こっている。2012年にリビアでの紛争が波及し、マリ北部で武装勢力や過激派組織などによる軍事反乱が発生、2018年にはブルキナファソとニジェールにも紛争が拡大した。以降、武装勢力や過激派組織、自衛団体、政府系の民間警備隊、治安部隊などが、民族や宗教的アイデンティティに基づいた敵対意識から争いを続けている。標的の中には、民間人や学校、保健センターなどの公共施設も含まれ、2019年10月からの1年に戦闘や暴力事件だけで6,600人以上が死亡、4,000校以上の学校が閉鎖された。さらに紛争による混乱に加えて、これらの地域は世界平均よりも速いペースで気温が上昇しており、予測不可能で頻発する洪水や干ばつなどの気候変動の影響を強く受けている。紛争や気候変動の影響を受けて、食糧生産がままならず、2019年の3倍にあたる約740万人が深刻な食料不足に陥っているのだ。これに加えて国家の弱い統治力や武器の拡散、気候変動による水不足が原因となって紛争はなお悪化しており、国内避難民と難民は2020年には2年前の20倍以上の180万人に急増した。さらに新型コロナウイルスの対策による経済の停滞などもあって、中央サヘルの3ヶ国の人口の5分の1に値する1,300万人以上が人道支援を緊急に必要としている。
報道量
朝日新聞:1記事/1,836文字
毎日新聞:0 記事/0文字
読売新聞:1記事/1,300文字
第2位 イエメン:紛争勃発以来最悪の人道危機に直面
2020年、イエメンは長引く紛争と悪化する人道危機のなかで「差し迫った大惨事」に直面している。イエメン紛争(※3)は2014年、イランの支援を受けているとされる反政府勢力フーシが、首都サヌアを含むイエメン北部を支配下にしたことに端を発する。翌年にイエメン政府を援護する形でサウジアラビア主導の有志連合が介入したものの、イエメン政府は北部の領土を取り戻すことができず、その後も長く紛争状態が続いている。さらに2020年4月には、イエメン政府から分裂し対立していた南部独立を主張する南部暫定評議会(STC)が南部で自治を宣言した。こうした中、2020年11月には有志連合を主導するサウジアラビアとフーシがイエメン紛争停戦に向けた協議を行ったという報道や、自治宣言後も協議を重ねてきたSTCが、12月にイエメン政府との合同政府樹立に合意するなど和平に向かう動きもあるが、未だ問題は山積している。その1つはイエメンの人々が紛争勃発以来最悪レベルの人道危機へと追い込まれていることである。紛争に加えて、集中豪雨や新型コロナウイルスに関連した失職や収入減少、サバクトビバッタの襲来などにより、イエメン南部で深刻な栄養失調の状態にある人々は2019年と比べて10%上昇し、2021年半ばまでに人口の半数にあたる1,500万人以上が食糧不足に陥る可能性があるのだ。また、紛争により2020年までに23万人以上が死亡し、そのうち13万人以上は食糧不足やインフラの欠如などの間接的な原因によるとされる。しかし、このような状況とは裏腹に国外からの資金援助は激減しており、国連主導の人道支援プログラムの3分の1以上を終了せざるを得ない状態に追い込まれている。
報道量
朝日新聞:4.5記事/3,936.5文字
毎日新聞:5記事/4,970文字
読売新聞:2記事/482文字
第3位 グリーンランド:後戻りできないレベルで氷床の融解が進んでいることが発覚
グリーンランドの氷床が過去12,000年の中で最も急速に溶けており、毎年海に流れ出る氷の量に対し氷床を補充する降雪量が追いつくことのできない「転換点」を過ぎていることが最新の研究で明らかになった。研究によれば、1980年代頃までは海への氷河の流出量と氷河をつくる降雪量の均衡は保たれていたのだが、ここ10年は融雪量が増加しているにもかかわらず降雪量は横ばいであり、仮に今すぐ気候変動が止まったとしても、溶け出した氷床が完全に再建されることはないとされる。また、グリーンランドの氷床は非常に大きく、氷床自体が周辺の土地の気候に影響を与えてきたため、氷床が溶ければ溶けるほどグリーンランドの気温は高くなり、将来的には降雪量が少なくなることも考えられる。グリーンランドの氷床融解は、現在世界各地で起きている海面上昇の主要な要因とされており、21世紀末までに10センチメートル海面を上昇させ、約4億人を洪水に巻き込む可能性がある。現状、グリーンランドの融雪のスピードはこの最悪の展開を辿りつつあるが、別の研究では、直ちに温室効果ガスの排出量を抑制し、気温上昇を抑えるだけでなく低下させることができれば、融雪および海面上昇の不可逆的な状態を避けることができるとするものもある。完全に手遅れになる前に、早急かつ真摯な地球温暖化対策が求められる。
報道量
朝日新聞:1記事/960文字
毎日新聞:1記事/307文字
読売新聞:2記事/757文字
第4位 バングラデシュ・インド:記録的な洪水が甚大な被害をもたらす
バングラデシュを中心とするベンガル湾沿岸地域で、2020年に記録的な洪水が観測された。8月、バングラデシュはモンスーン期に降り続いた大雨により国土の約3分の1が浸水し、540万人が被災した。また隣国インドでも同時期に同様の洪水によって1,400万人以上が被災し、両国であわせて1,000人以上が死亡した。これらの地域は従来から低地にあることやサイクロンの通り道であること、モンスーンの影響を受けることなどの地理的要因によって洪水が発生しやすい。しかし、近年の甚大な被害をもたらす洪水は、河川の上流地域の森林破壊や都市化、そして気候変動による異常気象が原因となっている。特にバングラデシュでは、気候変動の原因である温室効果ガス排出量を世界のたった1%しか排出していないにも拘らず気候変動によって深刻な被害を被っている。高所得国とのアンフェアな貿易などによって経済が圧迫され、深刻な貧困問題を抱えているバングラデシュでは対処する十分な資金を持ち得ず、2050年までに気候変動の影響による国内避難民は1,330万人にも及ぶとされており、高所得国が低所得国に負担を強いる「気候アパルトヘイト」的構造が出来ている。
報道量
朝日新聞:1記事/144文字
毎日新聞:0記事
読売新聞:0記事
第5位 世界:乳児約50万人が大気汚染が原因で死亡
アメリカ、ワシントン大学の研究機関である保健指標評価研究所(IHME)が毎年発表する「世界の大気状況(State of Global Air)」の2020年版によると、2019年に世界で約50万人の生後1カ月以内の乳児が大気汚染によって命を落とした。健康に大きな害を与える大気汚染としては、工場や自動車などから排出されるPM2.5やオゾンによるものが知られているが、大気汚染によって死亡した乳児のうち3分の2近くは、屋内の空気の汚染が原因であったと考えられている。妊婦や乳児が、家庭内で調理などに使用される炭や木材などの固体燃料から生じる有害物質を吸い込むことで、低体重や早産、脳や他の臓器への損傷を引き起こすのだ。世界全体では電気や天然ガスが普及し家庭内の空気汚染は減少しているが、サハラ以南のアフリカなど一部の低所得国では空気を汚染する固定燃料が未だに多くの家庭で使われており、家庭で過ごす時間の多い女性や子どもが危険にさらされている。2019年、大気汚染は世界で4番目に多い死因であり、約670万人が死亡した。乳児だけでなく大人も長期間汚染された空気を吸い込むことで、肺がんや脳卒中などの病気や死亡のリスクを増加させることが既に明らかとなっている。過去5年間で大気汚染の危険性に関する科学者らの警告は増加したにもかかわらず、大気汚染が改善に向かう兆しはほとんど見られない。
報道量
朝日新聞:0記事
毎日新聞:0記事
読売新聞:0記事
第6位 アフリカ:債務危機が深刻に
増え続ける債務の返済に追われるアフリカ諸国では、本来国家予算を充てるべき医療・保険分野への対応が十分にできない状況に陥っている。2019年の時点で債務返済に割り当てた予算が保健医療に割り当てた予算を上回る国は32ヶ国に及び、債務危機に直面しているのだ。アフリカ諸国では2008年のリーマンショック以降から原材料の価格下落や不況などにより多額の負債の返済の目途が立っておらず、新たな借入も増え、サハラ以南アフリカの債務比率は急上昇していた。そこに新型コロナウイルスが更なる困難な状況を作り出した。新型コロナウイルスへの対策に加え、その流行に伴って原材料の需要が減ったことで経済に大きな打撃を受けているのだ。例えばザンビアは既に総額120億米ドルの対外債務を負担していたが、期間内に既定の金額を返済できず、11月にパンデミック以降アフリカで初めてとなる債務不履行に陥った。このような状況を受け、半数以上をアフリカ諸国が占める世界の76の最貧国に対して、2020年3月にG20が債務返済の1年の猶予を与えることが決定した。この決定は多額の債務を抱える国々の負担を一時的には軽減するものの、根本的な解決には至らないと考えられ、アフリカ各国などからは民間の債務者を含む全ての債務の返済猶予の延長と債務取消を求める声もあがっている。
報道量
朝日新聞:1記事/313文字
毎日新聞:2記事/1,008文字
読売新聞:3.5記事/3,906文字
第7位 世界:バッタの大量発生による食糧危機が深刻に
アフリカ東部で大量発生したサバクトビバッタが紅海周辺、さらに南西アジアへと広がり各地で食糧安全保障を脅かす状況が2020年に入って深刻化している。サバクトビバッタは「世界で最も破壊的な害虫」とも呼ばれ、1平方キロメートルあたり1億5,000万匹の群れが1日に35,000人分もの食料を消費しながら移動する。それにより広範囲で農地が破壊され食糧不足を引き起こしているのだ。とくに東アフリカでは既にサバクトビバッタの影響が深刻であり、約2,000万人が深刻な食糧不足の状況にある。なかでも最大の被害を受けたと推定されるソマリアでは農畜産業に深刻な影響を及ぼし、2020年2月にサバクトビバッタの危機に対して国全体が緊急事態にあることを宣言した。2019年の潜んだ10大ニュースでも第3位としても取り上げた、アフリカ東部を襲う豪雨がサバクトビバッタの繁殖により有利な環境を作り出すため、事態は収束に向かうどころか悪化の一途を辿っている。アフリカ東部で再び大雨・洪水が発生した12月にもソマリアやケニア、エチオピアなどで新たな群れの形成が観測され、さらにウガンダやスーダン、エジプト、エリトリア、イエメン、サウジアラビアなどに移動したサバクトビバッタも繁殖を続けていることが判明した。また、アルゼンチンなどの南米でもバッタの群れが農地を襲っており、警戒が続いている。世界が直面している食糧不足の問題はバッタだけが原因ではない。しかし、この問題に対して何らかの処置を早急にとらなければ、今後もサバクトビバッタは移動を続け、さらに甚大な食糧安全保障の危機を招く可能性は十分ある。報道量は今回当記事で挙げる10の出来事のなかで最も多いが、それでも問題の規模に対して十分な報道とはいえないだろう。
報道量
朝日新聞:7記事/9,296文字
毎日新聞:7記事/6,529文字
読売新聞:3.5記事/6,868文字
第8位 エルサルバドル:かつて世界最高だった殺人率が半減
2015年には世界で最も殺人率が高かったエルサルバドルが、2019年6月にナジブ・ブケレ新大統領を迎えてから2020年5月までの1年間で前年比51.3%にまで殺人率を減少させた。2020年上半期のみを見ると、前年比62.5%減少という圧倒的な数値を記録している。エルサルバドルでは1992年の紛争終結後の国家機関の弱い統治力や格差・貧困の拡大などの混乱の中で、アメリカから強制送還された暴力団やギャングらが勢力を拡大したことで、社会的に暴力が蔓延し2019年には45万人以上が国内の別の地域や国外へ避難を余儀なくされた。そうした状況を改善すべく、ブケレ大統領は刑務所の警備強化や軍・警察のパトロールの強化、若者を対象にした教育センターなどの安全保障政策に力を入れ、高い支持率を獲得している。一方で、ブケレ大統領下の政治においては複数の懸念も存在する。1つ目に、暴力行為が減った要因の不透明さがある。エルサルバドルでの殺人について調査した研究機関、国際危機グループ(ICG) によると、政府と暴力団やギャングが非公式な取引を行い、暴力団やギャングが自ら暴力行為を減らす決定をした可能性があるようだ。非公式な取引の存在について直接の証拠はないが、過去には政府と暴力団やギャングの交渉による休戦状態が実現し、その後休戦が決裂した後の2015年に殺人率が急増したという調査もあり、2020年現在みられる暴力の減少を維持することが重要である。2つ目に、暴力行為を減少させるにあたっての政府の働きかけ方の問題がある。ブケレ大統領の打ち出した施策では当局が過度な暴力を行使する権限を有していたり、それらの施策のための融資の承認を迫るために議会に軍を立ち入らせたりするなど、民主主義の維持にも課題が残っているのだ。
報道量
朝日新聞:0記事
毎日新聞:0記事
読売新聞:0記事
第9位 フィリピン・ベトナム:数十年で最も強い台風が連続して上陸
2020年10月上旬から、フィリピン・ベトナムに複数の台風が上陸、特に3つの大型台風モラーヴェ(Molave)、ゴニ(Goni)、バンコ(Vamco)は10月下旬から11月下旬にかけての3週間で立て続けに襲来し、各地で洪水や土砂災害を引き起こした。3つのうち最も早い10月下旬にフィリピン・ベトナムを上陸したモラーヴェは、ベトナムのみで174人の死者・行方不明者、4万人以上の避難者を生み、電力や道路、衛生施設などのインフラの損傷は数百万人に影響を与え、「過去20年間で最もひどい台風」と評された。さらに、その後、間髪入れず次の強力な台風ゴニとバンコが上陸したことで被害は拡大し、バンコではベトナムで239人、フィリピンで80人が死亡または行方不明となった。またバンコ上陸の際には、フィリピンの首都マニラの北部カガヤン渓谷で高さ12メートルもの洪水によって数万棟の家屋が浸水し、フィリピン全土で14万棟以上の家屋が損壊または倒壊したとされる。ここ最近の台風の上陸頻度や勢力の増加は一度被害を受けた人々の生活再建を阻むだけでなく、その影響が特に大きい農業や漁業従事者を経済的に困窮させている。さらに、予測不能な異常気象や海面の上昇が台風などの暴風雨による洪水のリスクを高めることも指摘されている。1、3、4、7位の重大ニュースに引き続き、ここでも気候変動は切り離せない問題となっているのだ。
報道量
朝日新聞:0記事
毎日新聞:2記事/440文字
読売新聞:0記事
第10位 インドネシア:79の法律の改正に反対する大規模なデモが行われる
インドネシアの国会は2020年10月5日、雇用創出や海外投資の促進を目的とし79の法律を改正するオムニバス法案を可決した。しかし、この法案に対しインドネシアの36以上の都市で労働組合や環境保護団体による抗議デモが瞬く間に拡大し、数百人が逮捕された。この法案に対しては、可決前の1月から複数回にわたって大規模な抗議デモが行われており、10月6日からも約32の労働組合、約200万人の労働者が参加する全国ストライキが呼びかけられていたため、当初8日に予定されていた議決が前倒しされた。雇用創出や海外投資のためのオムニバス法案が大規模な抗議を招いた背景には、この法案によって79の現行法が改正されることで労働者や先住民の権利を侵害し環境が破壊されるという懸念がある。長時間労働や外部委託労働者の拡大・増加を認め、最低賃金や退職金、各種手当金や休暇などを大幅に削る改正によって、労働者の権利が侵害される。また、各地方が土地の30%の森林被覆率を維持しなければならないという法律が改正されることによる熱帯雨林の破壊や、土地取得のプロセスが簡易化されることで先住民の土地の権利が脅かされる危険性を抗議者たちは訴えている。
報道量
朝日新聞:0記事
毎日新聞:2記事/440文字
読売新聞:0記事
以上の10件が、2020年潜んだ世界の重大ニュースとして選ばれた。新型コロナウイルスの流行やアメリカ大統領選挙などの大きく報道された出来事の裏で、多くの重大な出来事が起こっていたことが分かる。またご覧いただいたように、多くの重大なニュースには深刻化し続ける気候変動が何らかの影響を与えている。12月にアントニオ・グテーレス国連事務総長は、現在人類が繰り広げている「自然に対する戦争」は「自殺行為」であると強く警告した。世界は、そして人類は、この「自殺」を止めることができるだろうか。GNVは今後も、気候変動関連をはじめ大手メディアで報道されない情報を提供していく。
※1 ランキングの選出にあたっては、出来事・現象の報道量、及ぼす影響の大きさ、2020年での変化の規模など、複数の基準に則り評価を行った。また、2020年以前より続いている出来事や現象であっても、2020年に明らかになった事柄については2020年に起きたニュースと同様にランクインさせている。
具体的な決め方は以下の通りである。世界を6つの地域(①東・南・中央アジア、②東南アジア・太平洋・インド洋、③中東・北アフリカ、④サハラ以南アフリカ、⑤ヨーロッパ、⑥南北アメリカ)に分け、それぞれの地域で起こった出来事・現象を4件ずつ、さらに地域に限定されないグローバルな出来事・現象を6件、計30件、国内における報道量の少なかったニュースをピックアップした。それぞれの出来事・現象に対して、⑴報道量の少なさ、⑵越境性、⑶影響を受ける人数、⑷政治・経済・安全保障などのシステムへの影響度、⑸新鮮度という5つの基準について、それぞれ3点満点で点数をつけた。特に、注目されていない事柄を重要視するランキングであるため、⑴報道量の少なさに関しては比重を倍にした。その結果をもとに30件を10件に絞ったうえで編集会議で協議し順位を決定した。なお、報道量は2020年1月1日から2020年12月15日までを集計したものである。
※2 報道量を調べる際には、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞3社のオンラインデータベース(朝日新聞:聞蔵II、毎日新聞:毎索、読売新聞:ヨミダス歴史館)を使用した。
記事を報道量とカウントするかについての基準に関しては、その話題が記事のメインテーマになっているかどうかで判断した。つまり、一文のみ話題に触れるなど記事の一部だけで言及している場合は報道量としてカウントしていない。
例えば、第5位に挙げた「乳児約50万人が大気汚染が原因で死亡」というトピックについて、大気汚染を扱った記事であっても健康被害の観点から書かれていない記事についてはここではカウントしていない。
また、1つの記事で2つの話題をメインテーマとして扱っており、その1つが該当する場合には0.5記事としてカウントしている。
※3 イエメン紛争は大手メディアなどによってイエメン「内戦」と表現されることがあるが、実際にはイエメン政府を支援し、軍事介入もしているサウジアラビア、STCを支援しサウジアラビアの主導する有志連合で軍事介入するUAE、反政府勢力フーシ(イエメンだけでなく、サウジアラビアにも攻撃を行っている)を支援しているとされるイランなど複数の思惑を抱いた当事者が関与しており、イエメン「国内の戦争」とは必ずしもいえない点に注意したい。
ライター:Yumi Ariyoshi
待っていました!
日本のメディアが報道しないのに、どうみても重要なニュースばかりです。
できるだけ多くの人に見てほしいです。
今年はコロナ関連のニュースばかりでしたが、それに埋もれてしまった世界の問題・現象について詳しくまとめられていて、とても勉強になりました!
日本のメディアがこんなにも大規模な問題や出来事を報道していないというのは驚きでした。勉強になりました。
とにかく知らない事実が多くあることに衝撃を受けました。情報を得る手段が報道であるからこそ、潜んだニュースに対して目を向け知ることが大切だと感じます!評価方法も丁寧でわかりやすいです!
このテーマを毎年年末楽しみにしています。国際ニュースがコロナとアメリカ大統領選挙で埋め尽くされる中で、世界ではこれだけ深刻な出来事が起きていたことが良く分かりました。
気候変動など地球規模で重大な問題が起きているにもかかわらず、知らないことばかりでした。
個人的には、エルサルバドルのニュースが興味深かったです。
自分で情報を取りに行くには、少々時間がかかるので、このようにまとめてくださるととても助かります。
どれも重大なものなのにどうして報道されていないのか、改めて日本のメディアの問題、矛盾に気付かされた。この記事が報道機関に届けばいいなと思う。
報道量の偏りに問題意識をもち、メディア業界への就職を目指している大学2年生です。GNVのようなメディアが成り立たない社会なのではないかと思っていたので、報道量や選択基準を明確にした限りなく客観的な報道に近づくランキング付けを見て本当に感動しました。この取り組みを将来主要メディアに反映できるようにまだ自分が何が出来るかわかりませんが、あらゆる世界の事象に関心を持ち続けていこうと思いました。