《《The Planetary PressTranslation ofarticle(※1)》
オーストラリアの2つの都市が100%再生可能エネルギーを動力源とするようになった。シドニーとアデレードの2つの都市は、2020年7月1日より、地方から供給される再生可能エネルギーが生み出す電気を使って、都市のあらゆる機能(※2)を動かす意向を発表したのである。
この2つの都市はフロー・パワー(Flow Power)社と共同して、市内で使用するエネルギーを再生可能エネルギーに移行した。フロー・パワー社との電力購入契約(PPA)を通じて、2つの都市は風力と太陽光を合わせた発電方法で電力供給を行うようになる。

シドニー市役所の時計台(写真:Bernard Spragg. NZ/Flickr [public domain])
シドニーの電力購入契約は約4,200万米ドル(6,000万豪ドル)規模であり、次の10年間にわたって年間約35万米ドル(50万豪ドル)以上を節約することができると想定されている。さらに、この契約によってシドニーは二酸化炭素排出量を年間2万トンずつ減らすこともできるだろう。
シドニーでは、使用するエネルギーの約75%がインベレル近くにあるサファイア風力発電所から供給されるようになる。そして残りの25%のエネルギーは、ウォガウォガにあるボーメン太陽光発電所と、ナウラにあるショールヘイブン太陽光発電所から供給される予定である。
再生可能エネルギーを用いた発電方法への切り替えは、気候変動による危機への対策としてシドニーが行っている最新の政策である。オーストラリア最大の都市であるシドニーは2007年に炭素中立(※3)を成し遂げ、2011年に正式に認められた。シドニー市長のクローバー・ムーア(Clover Moore)は、フロー・パワーとの新たな電力購入契約によって、2030年までに二酸化炭素排出量を70%削減するという目標を、それよりも6年早い2024年までに達成できるだろうと明言した。
「私たちは気候変動による緊急事態の最中にある。二酸化炭素排出量を減らし、再生可能エネルギー産業を発展させるためには、政府のあらゆるレベルで早急に再生可能エネルギーへと移行すべきだ」と、市長は言う。「世界中の温室効果ガス排出量の70%を占めているのは都市である。そのため、私たちは効果的で証拠に基づいた気候変動対策を行うことが重要である」。
排出量を減らすことに加えて、電力購入契約は雇用を生み出し、コロナウイルスの世界的流行で打撃を受けた地域を支援することにつながるだろう、とムーア市長は主張する。
「この革新的な約6,000万豪ドル規模の再生可能エネルギーに関する契約によって、納税者は節約することができる。そして、グレン・イネス、ウォガウォガ、そしてショールヘイブンにある風力発電所や太陽光発電所において地方の産業を後押しすることにつながるだろう」とムーア市長は言う。
アデレードのエネルギー供給も風力発電と太陽光発電を合わせて行われる。電力の供給はクレメンツ・ギャップ風力発電所と、エア半島と南東地方にある新しい太陽光発電所から行われる。

アデレードのクレメンツ・ギャップ風力発電所(写真:David Clarke/Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
また、フロー・パワーの共同創設者であり技術・事業主任のデヴィッド・エヴァンス(David Evans)は「この電力購入契約は、新たな雇用を生み出し、さらなる再生可能性をエネルギーシステムにもたらすことで、州の新たな太陽光計画を促進させるだろう」と言う。「私たちはこの電力購入契約を長期的なパートナーシップとみなしている。この契約によって都市が気候変動に対する責任を果たし、エネルギーシステムを後押しする機会を作ることができるだろう」。
アデレードが再生可能エネルギーに移行することで、アデレード市内の二酸化炭素排出量を半減させることができると期待されている。市長のサンディー・ヴェルショール(Sandy Verschoor)によると、再生可能エネルギーを用いることで、道路を走る3,500台の車から排出される量に匹敵するほどの温室効果ガスを減少させることができるという。
アデレードにとって再生可能エネルギーに移行することは炭素中立への重要な一歩である。アデレードは2025年までに炭素中立と認められることを目標としている。
「アデレード市は気候変動の問題を深刻に受け止めている。そのため、このフロー・パワーとのパートナーシップは気候変動に対して真の意味のある行動を起こしていることを示している。効果的で環境に良く、信頼性のあるエネルギーを用いる方法への移行を導いている」と、ヴェルショール市長は言う。「2020年7月1日以降、アデレード市によって運営されている活動であれば、それらは全て再生可能エネルギーを動力源としている」。
オーストラリアは、特に気候変動の影響を受けやすい。オーストラリアの気候は、すでに1度以上気温がrisingしている。そして、このまま大きな行動を起こさなければ、2090年までに5度も気温が上昇すると予想されている。
気候変動は、オーストラリア国内の様々な地域に壊滅的な影響を与えている。オーストラリアでは温暖化の影響でさらに気温が高く、乾燥した状況になっており、森林火災が起こりやすい状態を作り出している。記録的な高温と深刻な干ばつの影響で、2019年から2020年にかけての森林火災は特に甚大な被害をもたらした。200万ヘクタール以上に及んだ火災により、何千もの家が焼失、複数の都市は煙で覆われ、10億匹以上もの動物が亡くなった。そして、この森林火災によって40億トンを超える二酸化炭素が排出された。

タガーアノン地区から見えるオローラル・バレーの火災の様子 (写真:Nick-D/Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0])
化石燃料を燃やすことは気候変動危機の主たる原因となるが、オーストラリアは石炭の生産量が世界で4番目に多い。そしてオーストラリアの電力のおよそ86%は石炭と天然ガスから作られているという報告もあり、オーストラリアではエネルギーの大部分を化石燃料に依存していると言える。
市、NGO団体、そして世界の指導者は、オーストラリア連邦政府に対して、化石燃料から再生可能エネルギーに移行することを求めてきた。
今回の再生可能エネルギーへの移行を通じて、シドニーやアデレードはオーストラリアをさらに持続可能で丈夫な国へと導いている。
1 This article is part of the "Climate Reporting Now" ("Climate Reporting Now") in which GNV participates as a partner organization.Climate Covering Now(NYSE: IBK), also a partner organization of theThe Planetary Pressのキムバリー・ホワイト氏(Kimberly White)の記事「Two Australian Cities Go 100% Renewable」を翻訳したものである。「気候報道を今」は2020年9月21~28日の一週間を報道週間として定めている。この場を借りて記事を提供してくれたThe Planetary Pressとホワイト氏にお礼を申し上げる。
※2 都市のFeatureとは、街灯、駅、運動場、市庁舎などの市営の施設運営に使われる電気のことを指す。
※3 炭素中立とは、生活や経済活動において排出される二酸化炭素の量と吸収される二酸化炭素の量が同じである状況を指す。
ライター:Kimberly White(The Planetary Press)
翻訳:Saki Takeuchi