2021年から2022年にかけて、モロッコはアルジェリアと国交を断絶し、スペイン、チュニジアからは大使を召還するなど、様々な周辺国との摩擦が生じている。こうした摩擦が生じた背景には、西サハラ問題がある。
西サハラは、アフリカ北西部に位置するアフリカ最大の植民地(※1)とされている地域であり、現在、西サハラの領土のおよそ80%をモロッコが占領している。また、アフリカ連合(AU)は西サハラを加盟国として認めているものの、国連は西サハラを加盟国として認めてはおらず、西サハラ地域は「国のようで国でない地域」とも言える。
1975年までスペインの植民地であったこの地域では、スペイン撤退後に侵攻したモロッコと西サハラの独立を目指すポリサリオ戦線が互いに領有権を主張し、両者の間で武力紛争が発生した。1991年に停戦協定が結ばれ、停戦状態が続いてきたが、2020年、停戦協定が破棄され再び紛争状態に突入した。近年、紛争の再開とともに緊張感が高まっている西サハラでは、一体何が起きているのだろうか。この記事では、西サハラ問題を取り巻く国際関係を含め、紛争の背景や現在の情勢について包括的に探っていきたい。

西サハラ地域にあるポリサリオ戦線の拠点(写真:Teresa Marín / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
西サハラ紛争とは
西サハラの人口は約612,000人、面積は約266,000平方キロメートルである。元々、現在の西サハラ地域には様々な民族グループが暮らし、この地域はサハラ交易の一端を担っていた。地域全体を統治する中央政府が存在していたわけではなく、1884年にスペインの植民地となるまでは、直接支配されることもなかったようだ。スペインの植民地となって以降、西サハラ地域は「スペイン領サハラ」と呼ばれるようになった。
1960年代には、アフリカの大半の国々は独立を果たしていったが、独裁国であったスペインは植民地を手放そうとしなかった。植民地を維持し続けるスペインの姿勢に対して国連総会などからの風当たりが強まる中、1963年、モロッコとモーリタニアの両国が西サハラの領有権を主張した。また、西サハラの住民は1973年に独立を目指してポリサリオ戦線を結成し、独立に向けた運動を開始した。
アルジェリアから支援を受けてスペインに抵抗するポリサリオ戦線の運動によって、事実上、西サハラにおけるスペインの支配は失われ、1974年、スペイン当局は西サハラの独立に向けた住民投票を実施することを発表した。住民投票が実施されれば、西サハラ人による独立国家が成立する公算が大きいと考えたモロッコは、国際司法裁判所(ICJ)に対し、西サハラの領有権を主張する旨の提訴を行った。しかし1975年、ICJは、モロッコ、モーリタニアのいずれも西サハラに対する領有権を有さないとする勧告を発表した。
だが、この勧告を受けてもなお、モロッコは領有権の主張を弱めず、国民35万人を西サハラに越境・入植させる「緑の行進」を行うなどしてスペインに圧力をかけ続けた。こうした圧力を受け、1975年、スペインは、モロッコとモーリタニアと3国で秘密の協定を結び、西サハラ地域を2国に分割することを単独で決定した。この協定の結果、モロッコとモーリタニアは国際法に反して西サハラに軍事侵攻し、同地を占領した。このような占領は、西サハラの住民の自決権を無視したものだと言えるだろう。
ポリサリオ戦線は2国の占領に反発し、1976年、ポリサリオ戦線とモロッコ・モーリタニアの間で武力紛争が発生した。同年、ポリサリオ戦線は、国境付近のアルジェリア南西部を拠点として、サハラ・アラブ民主共和国(SADR)を樹立し、独立を目指す西サハラ人の正当な代表を自称した。アルジェリアは、ポリサリオ戦線に拠点を提供するだけでなく、軍事訓練や武器の提供を行い、ポリサリオ戦線を支援し続けた。

アルジェリア南西部の難民キャンプ(写真:EU Civil Protection and Humanitarian Aid / Flickr [CC BY-SA 2.0])
その後、ポリサリオ戦線はモーリタニアと停戦協定を結び、1979年にはモーリタニアが西サハラの領有権を放棄したが、モロッコがその地域を併せて併合したことで、ポリサリオ戦線とモロッコの対立は強まった。フランスやアメリカは、冷戦下で敵対するソ連と関係が深かったアルジェリアに対抗することを主な目的として、モロッコを軍事支援しており、こうした支援を受けたモロッコは、西サハラ地域のおよそ80%を占領した。モロッコの侵攻から逃れるため、多くの西サハラ人が国外へ避難し、難民となった。こうした難民のほとんどは近隣のアルジェリアに流入し、アルジェリアの南西部には現在およそ20万人が暮らす難民キャンプが存在する。
またモロッコは、1980年から1987年にかけて、全長約2,700kmにもおよぶ「砂の壁」を築き、自国が占領する地域とポリサリオ戦線側が領有する地域を分断した。この砂の壁により、今でも約10万人の西サハラ人がモロッコの占領地に取り残されている。モロッコは砂の壁の周囲に大量の地雷を埋めており、これは世界一長い地雷原だとされている。さらに、モロッコの占領下では、占領当初から、主に西サハラ人に対する人権侵害が行われており、郵便・電話などの通信手段や外国人の入国なども徹底的に制限されてきた。現在でも、西サハラ人の独立支持者や人権論者などが不当に逮捕され、拷問などの非人道的な行為が行われるといった深刻な人権侵害行為が数多く報告されている。
国際機関との関係
1991年、国連の仲介により、ポリサリオ戦線とモロッコは停戦を発表し、西サハラが独立するか、モロッコに統合されるかを決める住民投票を行うことが決定された。しかし、「緑の行進」などの入植によって、既に西サハラ地域に多くのモロッコ人が移住していることから、西サハラに住むモロッコ人の投票権を排除する形での住民投票にモロッコ側が反対し、現在まで住民投票は行われていない。モロッコ側が住民投票を阻止し続ける背景としては、まず一つに事実上占領下にある領土の支配権の喪失を回避する狙いが挙げられる。また二つ目に、西サハラの豊富な資源を確保する狙いもあると考えられる。西サハラ地域には豊富な漁業資源やリン鉱山が存在し、モロッコと西サハラのリン鉱石埋蔵量を合計すると、世界の埋蔵量全体のおよそ72%を誇ると言われる。モロッコはこれらの資源を搾取して利益を上げているため、簡単に西サハラを手放すことを是としないのである。

西サハラにあるリン鉱床(写真:jbdodane / Flickr [CC BY-NC 2.0])
西サハラ人有権者の問題については長年論争が続き、2007年、モロッコは住民投票の代替案として、モロッコの主権の下でSADRによる自治権を認めるという内容の自治計画を提案した。しかしこの自治計画の内容は、結局のところモロッコによる西サハラ地域の統合・吸収合併であることに変わりなく、当事者間での合意には至っていない。
国連総会は、西サハラにおけるモロッコの主権を認めておらず、西サハラの人々には自決権や独立権があるとしている。国連安保理は、西サハラでの住民投票の実施を目指して、1991年に「国連西サハラ住民投票ミッション」(MINURSO)を設置し、西サハラ地域に特使を派遣して妥協案の協議などを行ってきた。しかし前述したように、住民投票実現のための交渉は既に決裂状態にあり、MINURSOによる働きかけは大きな成果を挙げることができていない。派遣された国連特使が強い政治力を行使し、住民投票実施を推進していくといった解決案も考えられるが、安保理で拒否権を持つフランスとアメリカが、モロッコ支援の一環として、住民投票を実施を推し進めることを阻止しているため、実現の可能性は低い。
また、国連総会が西サハラの人々は自決権や独立権を有するとする一方で、西サハラは国連加盟国として認められていない。国連加盟国となるには、安保理からの勧告を受け、総会で加盟が決定される必要がある。しかしこちらの場合も、安保理で拒否権を持つフランスとアメリカがモロッコを支援していることから、西サハラが国連に加盟することは非常に困難だと考えられる。

SADRと南アフリカ共和国の公式会談の様子(写真:GovernmentZA / Flickr [CC BY-ND 2.0])
国連総会及び安保理の立場とは対照的に、AUの前身であるアフリカ統一機構(OAU)は1982年、西サハラ(SADR)を主権国家として認め、加盟を承認した。OAU時代を含め、AUは西サハラの最大の支持基盤と言える。モロッコはこれに反発し、1984年にOAUを脱退した。しかし2016年、モロッコが一転してAUへの再加入を申請し、2017年にはAUがこれを承認した。AUがSADRを支持している限り、AUに復帰しないとの立場をとっていたモロッコが再加入の意思を示した背景には、西サハラがモロッコの領土であるという主張に国際的な支持を集めるために、アフリカ諸国と良好な関係を築く必要があると判断したことなどが推測される。
西サハラ問題に対する他国の立場
AU加盟国の中でも特にSADRを強く支援しているのがアルジェリアである。アルジェリアは元々、領土問題 や冷戦下における関係などにおいてモロッコと対立してきた国であり、同じくモロッコと対立関係にあるSADRを支援している。西サハラ地域のおよそ80%をモロッコに支配されている不利な状況においても、ポリサリオ戦線がモロッコに対抗できているのは、アルジェリアがポリサリオ戦線に拠点や軍事支援を提供していることによる助けが大きい。それに加え、アルジェリアは、他国に対し、SADRの承認に向けたロビー活動も行ってきた。また、前述したようにアルジェリアには、モロッコの侵攻によって発生した難民が暮らす難民キャンプがあり、そこでは、モロッコ占領地に取り残された西サハラ人のおよそ2倍の数の、約20万人もの人々が生活している。
一方で、モロッコを通じて西サハラの豊富な漁業資源や鉱物資源を享受している国々は、事実上、モロッコによる占領を黙認し、資源の搾取を助長させていると言える。実際に2002年、当時の国連法律顧問は、モロッコ占領下において、西サハラ人の利益が考慮されていない経済活動は国際法に違反するとの見解を出している。例えば漁業資源の関連では、モロッコの最大の貿易相手国である日本やアメリカが挙げられる。日本は、タコなどに関してモロッコの最大の貿易相手国であり、日本が輸入している冷凍タコの約3割をモロッコからの輸入に頼っている。西サハラの海域は、タコの漁獲地として有名であり、当然、輸入したタコの中には西サハラの海域で漁獲されたものも多く含まれているだろうが、日本の店頭に並ぶタコのパッケージには「モロッコ産」としか表記されない。

西サハラの都市ダフラの魚市場(写真:David Stanley / Flickr [CC BY 2.0])
モロッコが西サハラから搾取しているリン鉱石に関する貿易については、インドやニュージーランドが挙げられる。リン鉱石に関しては、2002年の国連法律顧問の声明をきっかけに、西サハラにおける不法な採掘に反対する気運が世界的に高まり、既に多くの外資系企業がモロッコ企業とのリン鉱石取引を中止している。しかし、インドとニュージーランドの企業は未だにモロッコ企業との取引を継続し、西サハラ産のリン鉱石を輸入し続けている。
また、欧州連合(EU)は2000年、モロッコとの間に、将来の自由貿易を目指す連合協定(FTA)を発効している。EUとモロッコは、この協定を発効して以降も、漁業や貿易に関して複数の協定を締結して関係を強化してきた。これらの協定の下で、EU諸国やイギリスに加え、これらの国々に拠点を置く多国籍企業などが、モロッコとの間に、西サハラの資源を搾取するような経済的利害関係を築いてきたことが知られている。EU諸国の中でもフランスはモロッコの最大の貿易相手国であり、元々モロッコを植民地支配していた歴史から、政治・経済の分野で深い繋がりがある。また、スペインもフランスと並び、モロッコの主要貿易国であり、隣接する国同士であることからも、歴史的・経済的に強い結びつきがある。
EU諸国がモロッコとできるだけ友好的な関係を築きたがる理由の一つとしては、アフリカからの移民・難民流出の問題があると考えられる。モロッコはアフリカからヨーロッパへの移民・難民の通り道の一つであり、モロッコとの関係が悪化すれば、アフリカからヨーロッパへの移民・難民流出を普段厳しく制限しているモロッコが制限を緩和し、通過を黙認する可能性がある。これは、EU諸国側としては避けたい事態であろう。さらに二つ目の理由として、モロッコはEU諸国と長年に渡ってテロ対策のための情報共有を行うなどの連携をとっていることも挙げられる。
一方で、EUは欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)を通じて、西サハラ問題解決に向けた国連の努力を支持する公式見解を繰り返し示している。また、欧州司法裁判所(ECJ)は2016年以降、EUとモロッコ間の協定は、西サハラ地域には適用されないとする判決を複数回下した。これら複数の判決によって、EU諸国の漁船による西サハラ近海での操業が禁止された。日本やアメリカなどの他国政府はこのような制限をかけていないものの、ECJの判決は西サハラの資源搾取問題を改善していく上で重要な意味を持っていると言えるだろう。ECJの判決を受け、モロッコはEU諸国とのテロ対策における協力を事実上凍結するなどの対応を見せており、今後、EU諸国が西サハラ問題についてどのような立場をとっていくのかが注目される。

西サハラの停戦を監視する国連西サハラ住民投票ミッションの職員(写真:United Nations Photo / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
また、長年に渡りモロッコを支援してきた国の一つとしてアメリカも挙げられる。アメリカは、自国の世界戦略の観点から、ジブラルタル海峡に面するモロッコ地域を重要視している。冷戦期にはモロッコと同盟を結ぶなど関係を強化し、モロッコに対して軍事支援などを行ってきた。さらにアメリカは、2020年のドナルド・トランプ政権下において、モロッコがイスラエルと国交正常化することと引き換えに、西サハラにおけるモロッコの主権を認めるという内容を含んだアブラハム協定を結んだ。この協定は、現在のジョー・バイデン政権下においても引き継がれている。ただ一方で、アメリカ政界にはモロッコによる占領に否定的な意見(※2)も存在し、毎年モロッコで行われている米軍主催の多国間合同軍事演習の開催地をモロッコから変更することを求める声も上がっている。
また、先ほどモロッコ側の立場をとる国としてスペインを挙げたが、西サハラの元宗主国であるスペインはそういった国々の中でも比較的中立的な立場をとってきた。2020年にアメリカが西サハラにおけるモロッコの主権を承認した際には、スペイン政府はアメリカを名指しで批判し、同年には新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したポリサリオ戦線の指導者ブラヒム・ガーリ氏を、スペインの病院で治療するという対応をとった。こうした一連の動きに怒りの反応を示したのがモロッコである。2021年、モロッコはスペインの対応に遺憾の意を示し、大使を召還した。また同年には、モロッコと国境を接するスペイン領セウタ(※3)に、モロッコからの移民およそ8,000人が流入することを黙認し、スペインに外交的圧力をかけた。このような移民を利用した圧力のかけ方は、1975年の「緑の行進」と類似の手法だと言える。
モロッコの圧力を受けたスペインは、2021年、モロッコが提案している西サハラの自治案を支持する声明を出し、モロッコ寄りの立場に転換した。スペインがモロッコによる支配を黙認するだけでなく、正式に支持する声明を出したことは、SADRやアルジェリアに大きな動揺を与えた。特にアルジェリアの反発は大きく、2021年には天然ガスをモロッコ経由でスペインへ送るパイプラインについて、契約を更新しないとの声明を出し、天然ガスの継続的な輸出の停止の可能性をちらつかせた。さらに2022年に入って、アルジェリアはスペインとの製品およびサービスの対外貿易を停止することを発表するなど、スペインとアルジェリアの関係は悪化している。
紛争再発の動き
2020年、西サハラの独立活動家たちが、西サハラの緩衝地帯において西サハラとモーリタニアを結ぶ道路を封鎖した。これを受けてモロッコ軍は、これらの市民を強制退去させる作戦を実行した。この作戦では死傷者や逮捕者は発生しなかったが、ポリサリオ戦線は、モロッコによる軍事作戦の開始自体が停戦協定に反するとして、1991年に結ばれた停戦協定の破棄を宣言した。

ポリサリオ戦線の軍隊(写真:Western Sahara / Flickr [CC BY-SA 2.0])
ポリサリオ戦線は武力を用いた抵抗を再開し、2021年にはポリサリオ戦線による攻撃でモロッコ側に6名の死者が出る事件が発生するなど、今後も武力紛争が拡大していく兆候が見られている。ポリサリオ戦線が武力による紛争解決の方向へ向かった要因の一つとして、1991年からの30年余りの期間において国連主導の紛争解決プランが実質的に機能せず、西サハラの人々の不満が募っていたことが挙げられる。住民投票の実施を待ち続け、フラストレーションを溜めているポリサリオ戦線のメンバーの中には、西サハラで暮らしたことのない人々も多く、「祖国奪還」を掲げて武力紛争に訴える機運は高まっている。
また、紛争の再燃に伴いモロッコとアルジェリアの関係も悪化している。西サハラを巡る摩擦に加え、モロッコがアルジェリアに敵対的な行動を続けているとして、2021年、アルジェリアはモロッコと国交断絶することを発表した。また、同年にはアルジェリアは同国上空をモロッコの航空機が飛行することも禁止している。さらに国交断絶後には、ポリサリオ戦線側が支配する西サハラ地域で、モロッコ兵によってアルジェリア人3人が殺害されるという事件が起きるなど、関係は悪化の一途を辿っている。
問題解決へ向けて
近年、武力紛争が再開された西サハラ地域。このまま問題が解決されなければ、西サハラ紛争がより大規模な武力紛争へと発展する可能性は否定できない。また、モロッコとアルジェリアの両政府は、失業率の上昇、汚職、経済の低迷などの内政上の課題を抱えており、西サハラでの対立を利用することで自国民の関心を国外に引き付けようとしていることも問題とされる。
紛争解決に向けて、国連安保理は2021年、国連西サハラ住民投票ミッションを通じて、約2年ぶりの西サハラ特使となるステファン・デ・ミストゥーラ氏を派遣した。ミストゥーラ氏は、シリア担当特使を歴任しており、紛争解決に向けて尽力した経験を持つ人物である。ミストゥーラ氏を中心として、再度の停戦に向けた具体的な協議を期待したい。
しかし、貿易や安全保障の面でモロッコと連携し、政治的・経済的利益を追求する高所得国やこれらの国に拠点を置く企業が多く存在する中、国連特使が発揮できる政治力は限られている。これらの政府や企業を西サハラ問題の平和的解決に向けた具体的行動に向かわせるためには、より多くの人々が国民や消費者としてこの問題を知り、問題解決を促すようなアクションを起こすことが一つの鍵となるかもしれない。
現在、西サハラ地域では、過去から引き続く主権問題だけでなく、死傷者が発生する軍事衝突やモロッコ当局による深刻な人権侵害が多数報告されている。多くの人々の生命や安全を守るためにも、一刻も早く問題解決に向けた取り組みが望まれる。
※1 諸説あるが、現在でもアフリカ地域には未だに非植民地化を完了していない地域が点在する。詳しくはこちら→『ヨーロッパではない「ヨーロッパ」』
※2 アメリカ国内でモロッコによる占領に対して強く反対しているジェームズ・インホフ上院議員は、国防総省に対して、軍事演習の開催地からモロッコを除外するよう働きかけ、国防総省もこれを検討している。また、このような国内でのモロッコの西サハラ占領に対する反対意見を受け、2022年、アメリカの上院は、国防授権法(NDAA)に、アメリカ政府が西サハラでモロッコ側とポリサリオ戦線側が相互に受け入れられるような政治的解決を促すことを約束しない限り、モロッコで開催される多国間軍事演習に米軍が参加できないとする規定を追加した。
※3 アフリカ大陸の北岸近くに位置する飛び地。現在スペインの自治都市となっている。
ライター:Seiya Iwata
グラフィック:Takumi Kuriyama