GNVニュース 2025年10月25日
2025年10月20日、ジュネーブで開催された第16回国連貿易開発会議(UNCTAD16)で、今もなお格差は縮まらず、多くの低中所得国は債務不履行と開発の停滞のどちらかを選ばなければいけない状況であることが指摘された。
低中所得国(※1)は主に国際金融機関から債務返済が必要な資金提供を受けており、近年無償支援の多くが利子付きの融資形態に変わってきている 。そのような中、公的債務額は2010年以降、高所得国の約2倍の速度で膨らみ、2025年において31兆米ドルに達した。
特に外貨建て債務は為替変動の影響を受けやすく、不安定な経済状況下では自国通貨に対する返済額が急増する。この状況は、アメリカを中心とした関税障壁の上昇など不確実な国際経済によりさらに悪化している。61の低中所得国は、2024年において公的歳入の少なくとも10%以上を対外債務返済に充てており、この負担は2010年の約2倍に膨れ上がっている。関税の高騰に加え内陸国や小島嶼国では運送コストが世界平均の3倍に達しており、輸出量の減少が外貨収入をさらに減らし、対外債務の負担増加につながっている。これらにより、債務返済負担の大きい低中所得国への投資はリスクとなり投資家による融資条件の悪化や資金の引き揚げが進行している。
これらに加え、2025年には主要な国によって課された関税率が平均2.8%から20%を超え、グローバルな貿易・投資活動そのものが阻害されている。投資資金はリスクの低い高所得国に集中する傾向にある中で、低中所得国の資金調達がより困難になり、開発の停滞を招いている。
結果として、22カ国の低中所得国は教育費よりも利払いに、45カ国は保健費よりも利払いに多くの資金を割いている。これらの国に住む人々は34億人に上る。世界では人工知能(AI)など新しい経済市場も拡大しているが、低中所得国の26億人もの人々はインターネットから取り残されており、恩恵を受けられていない。これらの問題が継続すれば、低中所得国は開発の停滞と債務不履行を選択せざるを得ない状況となる。
このような状況の解決に向けて、2025年10月22日UNCTAD16内でスペインが国連の後援を受けて「セビリア債務フォーラム」を設立した。これは、2025年6月にスペイン・セビリアで開催された、「第4回開発資金国際会議(FFD4)」(※2)において合意された、債務の公平な再編や借入コストの低減、透明性の向上のための計画を定めた「セリビア・コミットメント」を具体的な行動へ移すための場である。第二次世界大戦後から続くこれまでの高所得国主導の金融体制では低中所得国の声が反映されないままであった。そのため、「セビリア債務フォーラム」においては、高所得国と低中所得国両方の政府、財務大臣、債権者が集まり、借入が経済の障害ではなく発展の助けとなるよう、債務に関する対話がなされる予定である。
※1報告書や元記事内では「開発途上国」と記載されている。
※2急増する債務が持続可能な開発目標(SDGs)の達成を妨げていることから開催された。
低所得国の開発の状況とSDGsの達成状況をもっと知る→「誰一人取り残さない?」
これまでの世界の金融システムと低中所得国の関係についてもっと知る→「世界銀行と国際通貨基金:貧困の助長?」
アフリカにおける債務の歴史を知る→「アフリカの経済:債務の歴史を断ち切れるのか」

UNCTAD16で多くの低所得国が債務返済か開発資金のどちらかを選ばざるを得ない状況にあると警告したグリンスパン氏(写真:UN Trade and Development (UNCTAD) / Flickr [CC BY-SA 4.0])




















0 コメント