GNVニュース 2025年10月6日
マダガスカルでは9月25日から、停電や断水などに抗議するZ世代(※)を中心とした市民による反政府デモが続いている。国連人権高等弁務官は29日、デモ隊と治安部隊の衝突で少なくとも22人が死亡、100が負傷したと発表した。今回のデモ受けて、アンドリー・ラジョエリナ大統領は29日、内閣を解散した。しかし、多くの若者らは大統領が辞任するまで戦うとの意向を示しており、事態の収束の見通しは立っていない。10月4日時点でも反政府グループはデモの範囲を広げている。一方で政府の支持者らも小規模ではあるが集会を開いており、両者の対立は深まっているとうかがえる。
マダガスカルは世界最貧国の1つであり、政府の腐敗にも直面してきた。こういった国内状況が今回のデモの温床としてあったと見られる。今回のデモにおいて、多くの若者は「Gen Z Madagascar」という名の下で、主にフェイスブックを用いて活動の組織化を進めてきたとされている。
2025年8月以降、デジタルツールを駆使するZ世代を中心とした反政府デモが世界各地で見られた。例えば、インドネシアでは8月下旬、政治家が給料に加えて、高額な住宅手当を受け取ったことを受け、低迷する経済への怒りがデモに発展した。ネパールでは9月上旬、政治的腐敗と縁故主義に対するデモが行われ、政府が倒された。また、モロッコでも9月下旬以降、2030年開催予定のサッカー・ワールドカップに向けてのスタジアムへの政府支出と、標準以下の医療制度などに対してZ世代が中心となり抗議が続いている。
これらの反政府デモの相互関係については、政府の打倒に成功したネパールのデモが、マダガスカルにおける集団意識を高めたとも指摘されている。実際、マダガスカルの反政府デモの参加者の中には、アジア諸国の同世代による運動を参考にするため、オンラインのコミュニケーションサービス「ディスコード」で、ネパールのZ世代のコミュニティーに参加した人もいた。
世界各地で起きている反政府運動の要因は国により異なるが、SNSがZ世代にとって、社会に対する不満を共有し、国を超えた連携を強化する場となっていることは確実である。
※ Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれ、デジタル技術やインターネットが普及した環境で育った世代を指す。
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2019年に国際労働会議で演説を行うアンドリー・ラジョエリナ大統領(International Labour Organization ILO / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])




















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