GNVニュース 2205年11月21日
マリの首都バマコは、武装組織のイスラム・ムスリムの支援団(JNIM)による燃料輸送の妨害を受けて深刻な燃料不足に直面している。これにより11月2日にマリの軍事政府は学校と大学の2週間の閉鎖を行ったり、日用品の物価が上昇したりするなど、住民の生活にも影響が広がっている。一方で完全な包囲封鎖にはなっておらず、市民生活は多少の混乱はありつつも現時点ではまだ崩壊と言えるような状況ではないとも伝えられている。
JNIMは2017年にマリ、ブルキナファソ、ニジェールなどのサヘル地域で活動している武装勢力が結合してできた組織であり、アルカイダと繋がりを持っている。2024年まではJNIMのマリでの活動は主に北部が中心だったが、2025年になるとバマコのある南西部での活動が活発になり、9月にバマコへの燃料の輸送を阻止すると表明して以降はこれまでに何百もの燃料を輸送するトラックを攻撃している。しかしJNIMの戦闘員は6,000人程と推定されており、300万人近くの人口を抱えるバマコを制圧して統治するのは困難だと考えられている。そのため、輸送妨害の目的はバマコの陥落ではなく軍事政府に対する人々の不満を高めることにあるという分析もなされている。
マリでは2012年以降、複数の武装勢力の活動による情勢不安が続いており、政府と非政府武装勢力の両当事者ともに人権侵害に加担しているとも報告されている。旧宗主国のフランスによる「対テロ」の名目で行われた軍事作戦も治安の悪化を改善するには至らなかった。この後発生した複数のクーデターを経て2021年以降軍部のアシミ・ゴイタ氏が実権を握ることになったが、彼が率いる軍事政府との関係の悪化により2022年にフランス軍はマリから撤退した。代わりにロシアの民間軍事会社が武装組織の対処にあたることになったが、武装組織の勢いはむしろ増していると指摘されている。特にJNIMはブルキナファソやニジェールに加えてベナンやトーゴでも攻撃するなど活動の範囲を広げている。
2025年11月に公表された国連児童基金(UNICEF)の報告書によると、マリでは現在約640万人の人々が人道支援を必要としており、40万人以上が国内で避難生活を送っているという。
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マリの首都バマコの大統領官邸につながる道路(写真:Robin Taylor / Flickr [CC BY 2.0])





















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