GNVニュース 2025年9月26日
2015年に2030年に地球温暖化を工業化以前と比較して1.5℃に抑制することを目標とするパリ協定が結ばれ、2025年には国際司法裁判所が気候変動緩和のための化石燃料撤退を義務付けたにもかかわらず、各国政府の化石燃料生産計画は加速し、気候危機の解決への道をさらに遠ざけている。2024年には既に1.5℃を上回ってしまっている状況にも関わらず。ストックホルム環境研究所、クライメート・アナリティクス、国際持続可能な開発研究所によって作成された2025年の生産ギャップレポートによれば、2030年までに世界が計画している化石燃料の供給量は、パリ協定が定める1.5℃目標の達成に必要な排出量の2倍以上となっている。
同レポートによると、世界の化石燃料生産の約8割を占めるアメリカ、ロシア、サウジアラビア等主要生産国20カ国の内、17カ国が少なくとも一つの化石燃料の増産を計画しており、14カ国は気候目標へ近づけるための調整も行っていない。2021年の国連気候変動枠組条約のCOP(締約国会議)で全ての国が段階的に廃止すると合意した石炭に関しては、インド、ロシア、コロンビア、オーストラリアが採掘を強化している状況である。また、大手エネルギー企業はアメリカ、ドナルド・トランプ政権による2025年パリ協定離脱表明や環境規制緩和を背景として、再生可能エネルギー投資を減らし化石燃料生産を大幅に増加させている。
化石燃料生産拡大の背景にはトランプ政権以前からの、国家経済や生活水準向上の名目で化石燃料消費を続ける現実も挙げられる。2021年のCOP26や2023年のCOP28では、石炭の段階的廃止や化石燃料からの移行に対し、成長期真っ只中の中国とインドの土壇場の介入等により具体性を欠く弱い言葉が用いられることになった。
2023年世界の化石燃料消費量は50年前の約2倍以上となった。この需要とともに再生可能エネルギーも増加しているが、元の化石燃料消費量も増加しているため、現在の緩やかなエネルギー転換を早めるべきだと指摘されている。また、エネルギー効率の向上も同時並行で行われているが、これが化石燃料の価格低下を招き、化石燃料の使い過ぎを招く反発効果もあるため注意が必要であると指摘されている。さらに、多くの国で化石燃料に対する政府の補助金が価格を低く抑えており、再生可能エネルギーの導入を妨げるという問題も依然として残っている。
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石油施設でのガスフレア、メキシコ(写真:Yerevan Malerva / Pexels [Pexels license] )




















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