HIV/エイズ、結核、マラリア感染症対策のためのグローバル基金の減少

執筆者 | 2025年12月3日 | GNVニュース, 世界, 保健・医療

HIV/エイズ(※1)、結核、マラリア感染症対策へのグローバル基金の減少傾向に伴い、これらの三大感染症の制圧は危機に瀕している。

2025年11月21日、 G20の首脳会議にあわせ、南アフリカのヨハネスブルクで誓約会議が開催された。この誓約会議はグローバル基金によって3年ごとに開催され、各国のドナーがグローバル基金へ具体的な拠出額の目標を表明する。2026年から2028年の表明額は合計およそ114億米ドルであり(※2)、グローバル基金の掲げる目標額、180億米ドルを大きく下回った。

このような拠出額の伸び悩みには、大手のドナーが関係している。アメリカでは、2023年から2025年にかけての誓約額は60億米ドルであったのに対し2026年から2028年までの誓約額は46億米ドルに減少している。ドイツにおいては2023年から2025年にかけて12億米ドルを誓約したが、2026年から2028年にかけては10億米ドル程度の誓約額に減少している。また日本では、2023年から2025年の誓約額がおよそ10億米ドルであったのに対し、2026年から2028年にかけての誓約額は約5,300万米ドルと、大幅に減少していることが見て取れる。 さらに、誓約した表明額は最終的に全額支払われないことも多い。

こういった誓約と拠出の最終額の減少は、感染症の被害の深刻化につながりうる。世界保健機関(WHO)の事務局長、テドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏は、「二国間援助・多国間援助の両方における突発的で計画性のない削減が、特にHIV、結核、マラリア対策を危うくしている」と警鐘を鳴らした。継続的な資金投入がなければ、それぞれの感染症に対する予防や治療が損なわれる。さらに研究者の間では、新たなHIV予防薬、改良されたマラリア対策、結核の治療やワクチンの革新により、十分な資金があれば、これらの疾病を公衆衛生上の脅威として終息させることが可能になると指摘がされている。

グローバル基金が2002年に始まって以来、20年間でHIV、結核、マラリアの感染者数が半減したように、グローバル基金は感染症への対策に、重要な役割を果たしてきた。

感染症対策への資金が減少する事態に対し、アメリカの政府研究機関、グローバル開発センターは妥協案を提示している。それは感染率が最も高い低所得国にのみ助成金を提供し、それ以外の国々に融資を行うという内容である。感染症への対策において厳しいコスト削減が迫られていることがあらわになっている。

※1ヒト免疫不全ウイルスを「HIV」、後天性免疫不全症候群を「エイズ」と省略して記す。

※2日本は誓約会議後に誓約したため、この数字に日本の誓約額は含まれていない。

HIV/エイズついてもっと知る→「アフリカにおけるHIV/AIDS対策の変遷

マラリアについてもっと知る→「マラリア:アフリカで達成された改善は失われるのか

結核についてもっと知る→「結核:世界で最も人を殺している感染症

グローバル基金誓約会議の様子、ノルウェー首相(写真: Statsministerens kontor / Flickr [CC BY-NC 4.0] )

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