GNVニュース 2025年12月22日
2025年、国連アフリカ経済委員会(UNECA)は、東アフリカおよび西インド洋(WIO)地域において、年間海洋総生産の約5.7%に相当する年間約11億4,000万米ドルの経済損失が推定されることを報告した。
西インド洋地域の自然資本は3,338億米ドルと評価されている。産業面においては、アフリカの貿易の90%が海を経由しており西インド洋地域もこれに含まれる他、漁業において東アフリカの約400万人への雇用提供、クルーズや沿岸観光、水産再生可能エネルギー、海底通信ネットワークなどにより年間200億米ドルの海洋総生産を生み出している。そのため、海洋資源の持続的な利用により経済成長を目指すブルーエコノミー(※)への期待とともに海洋安全保障の重要性が訴えられている。
経済損失の具体的な内訳としては、主に以下のようなものが挙げられる。
薬物や野生動物製品、武器等の違法取引に対する、防止・被害者支援のための政府支出、税収損失、執行・拿捕コスト等が、年間3億3,000万米ドル。
紛争、貧困、気候変動など複数の要因で発生した混合型海上移民に対する、捜索救助・被害者支援・司法処理への政府支出、人命・生産性損失等が年間3億米ドル。
違法・未報告・無規制(IUU)漁業に対する、収益損失、資源枯渇、海洋生態系への損害、執行・監視コスト等が年間2億4600万米ドル。
海賊・武装強盗に対する、高額保険料、危険手当・高速手当、船舶保護措置、私設警備、海軍展開等が年間1億6400万米ドル。
石油・化学物質流出に対する、清掃コスト、修復機器、健康コスト、生計喪失、海洋環境損害、漁業・観光収益損失等が年間1億米ドル。
加えて気候変動、違法投棄、海上テロリズム、沿岸紛争、粗油窃盗なども、ブルーエコノミーや海洋安全保障に対する新たな脅威となっている。
これらの脅威に対し、UNECAは西インド洋を管轄する国家のブルーエコノミー計画に海上安全保障を組み込むことや、政府間機関であるインド洋委員会の下に設置されている海上安全保障センターの長期資金確保の必要性、海上安全保障センターである、セーシェルに拠点を置く地域作戦調節センター(RCOC)とマダカスカルに拠点を置く地域海洋情報融合センター(RMIFC)間の連携、国家と地域でのIUU漁業監視体制の強化、などを提言している。
(※)「ブルーエコノミー」とは海洋資源を持続的に利用しながら、海洋生態系の健全性を保ちつつ経済発展を目指す考え方を指す。
海洋に関する世界の動きと報道についてもっと知る→「『海洋の10年』:メディアは世界の動きを捉えているか」

マダガスカル南西部の海沿いの地域、ブトゥレ(写真:krishna naudin / Wikimedia Commons [CC BY-SA 2.0])





















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