低所得国を苦しめる気候資金の実態

執筆者 | 2025年10月17日 | GNVニュース, 世界, 環境, 経済・貧困

GNVニュース20251017

2025106日にオックスファムと国際NGO ケアが発表した報告書「気候資金 シャドウレポート 2025」において、低所得国に対して供給される国際的な気候資金(※1)には、多くの課題が指摘されている。低所得国向けの公的気候資金の大部分は多国間開発銀行(MDBs)等の国際金融機関を介した提供や、気候特化型ODA(政府開発援助)等の二国間資金提供によって成り立っている。しかし、20212022年においてMDBsが提供する資金の57% は返済義務を伴う非譲許的融資であり、これが低所得国の債務負担を増大させている。2022年に低所得国が得た気候融資は最大42%上乗せで返済する必要があり、債権者によっての利益となっている。

一方で、無償支援や譲許的融資を主体としているODA予算も2020年から2022年まで増加傾向であったものの、20242025年には約9%~17%削減が見込まれている。また、多くの高所得国は新規の気候資金を拡充してきたわけではなく、既存ODA予算の中から気候特化型ODAへ置き換えてきたに過ぎず、真に追加的な資金が低所得国に届いているわけではない。これらに加え、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で低所得国向けの気候資金として設立された「損失と損害基金(※2)」も、COP28で約束された額の大半を確保できていない状況であり、COPでの基金設立に象徴される政策的な成果と、実際の資金動員が大きく乖離している。

20212022年において高所得国が拠出する気候資金の内、そもそも脆弱ないわゆる「後発開発途上国(LDCs)」や「小島嶼開発途上国(SIDS)」への資金配分は20% にすぎない。更に緩和策(再エネ導入など)に資金が偏重し、LDCsSIDSが求める適応策への資金支援は2023年以降わずかに減少傾向にある。つまり、最も気候資金のニーズが高い国に対する資金提供が優先的に行われているとは言えない。損失と損害基金への拠出も2022年には気候資金全体の1.2%にすぎなかった。

民間資金の動員も期待されているが関連データや透明性が欠けており、実態把握が困難である。更に高所得国は気候関連性を過大評価したり、融資利子の返済を考慮しない表面上の額を報告しているため、実際の額はもっと少ない。オックスファムとケアによる公式報告額は高所得国が発表している報告額3分の1以下であった。高所得国はより透明性のある報告と、新たに追加された資金による公平で効果的な気候変動対策資金の提供を求められている。

 

(※1気候資金とは、気候変動の緩和(温室効果ガスの排出削減)と適応(気候変動の影響に対処するための行動)を支援することを目的とし、地域、国レベル、または国際的に、公的、民間、代替的な資金源から提供される資金を指す。

(※2損失と損害基金とは、温室効果ガスの排出量が最も少ないにも関わらず気候変動の悪影響に対して脆弱な低所得国が経済的・非経済的な損失および損害に対処できるよう、公平さ・構成さの観点から高所得国が拠出する基金のこと。この損失と損害には、極端な気象現象や緩やかに進行する事象(スローオンセット事象)に起因するものが含まれる。

 

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