GNVニュース2025年10月31日
2025年10月28日に、世界保健機関(WHO)とランセット誌が「健康と気候変動に関するランセットカウントダウンの2025年報告書」を発表した。この報告書は128人の学際的な専門家によって開発された57の指標をもとに、気候変動対策の現在の状況が健康に及ぼす影響を最も包括的に示している。この報告書によれば、熱関連の死亡者数は1990年代以降63%増加し、2012年から2021年の平均で年間54万6,000人に達したとされている。
2020年から2024年おける生命を脅かす熱波日19日の内、16日は気候変動がなければ発生しなかったと推計されており、また、2024年には1950年代の平均を299%上回る世界の土地面積の61%が干ばつの影響を受けたとされている。そして、熱波日数と干ばつ月数は分析対象の124カ国における食糧不安経験人数1億2,700万人の増加と関連していたとされている。
また、気候変動により感染症感染リスクも増加している。温度や降雨パターンの変化等により、デング熱の気候適合性は1951~60年と比較して急増し、過去最高となった2024年初めに報告された760万人のデング熱症例の一因となったとされている。
これらを始めとして気候変動による被害が増加している一方で、異常気象関連損失の保険補償は2010~2014年の67%から2020~2024年には54%に低下しており、異常気象の被害に遭った人が保険適応されず、健康の脆弱性を悪化させていると指摘されている。気候変動に対する適応戦略の展開が世界で遅れており、WHOは人々の健康を守ることを気候行動の最も強力な原動力として位置づけるよう呼びかけている。
近年の気候変動の状況と被害についてもっと知る→「1.5℃超えの現実:世界の気候変動問題・対策と日本の報道」

農民間で高温や異なる降雨パターンへの対処法を学ぶ取り組みもされているネパール(写真:Alliance of Bioversity International and CIAT / Flickr[CC BY-NC-SA 2.0])




















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