GNVニュース 2025年11月23日
2025年11月15日、メキシコでは、犯罪や汚職に抗議する反政府デモが行われた。首都のメキシコシティでは、クラウディア・シェインバウム大統領が住む国立宮殿にデモ参加者が乗り込むなどし、警察官100人と民間人20人が負傷した。
このデモは、2025年にネパールやマダガスカル、モロッコなどで行われたデモと同様に、一見、Z世代(※)が中心となって自発的に起こしたデモのようにみえる。デモ主催者側は若者が主導し、若者を代表する運動であると位置づけているが、そうした主張は疑わしいものである。ひとつには、デモ参加者の多くがZ世代ではなかったことが指摘されていることが挙げられる。また、エル・フィナンシエロ紙(El Financiero)が10月に実施した世論調査によると、Z世代にあたる年齢層のシェインバウム大統領への支持率は、全体の平均よりはわずかに低いものの、66%になっている。
また、インフォデミア(Infodemia)のファクトチェック部門の調査によると、このデモのインターネット上での宣伝には野党の政治家や実業家が多数関わっているとみられている。今回のデモは、メキシコのインフルエンサーであるカルロス・ベッジョ氏の発信に端を発し、「メキシコのZ世代(Generación Z México)」と名乗るSNSのXのアカウントを通じて組織された。こうしたアカウントによる発信は、資産家のリカルド・サリナス・プリエゴ氏や元大統領のビセンテ・フォックス・ケサーダ氏、野党の国民行動党と制度的革命党に所属する政治家などによって支持され、ティックトックやフェイスブックで拡散された。一定数のアカウントは2025年10月以降に新しく作成されたり、外国人によって管理されているものとみられている。プリエゴ氏のいとこが組織し左派政権に対するネガティブキャンペーンを行っているアトラス・ネットワークも拡散に関与しているとみられており、デモの宣伝が人工的に行われたことが伺える。
シェインバウム大統領はアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール前大統領に引き続き貧困問題に取り組んでいる。今回のデモは、それに反発する右派政治家や富裕層が積極的に支援したものであり、Z世代による自発的な抗議運動ではないことが明らかになった。
※ Z世代とは、1990年代半ばから2010年ごろまでに生まれ、デジタルツールと共に育った世代のことを指す。
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大統領の公邸としても使われている国立宮殿(写真:Israel Bernal / pexels)




















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