エクアドル:暴力を伴う大規模な抗議活動が長期化

執筆者 | 2025年10月10日 | GNVニュース, 南アメリカ, 政治, 法・人権, 経済・貧困

GNVニュース 2025年10月10日

2025年9月22日以降、エクアドル各地で大規模な抗議活動が続いている。この抗議活動の発端は、エクアドルの大統領ダニエル・ノボア氏がディーゼルへの補助金を終了すると表明したことである。これは停滞しているエクアドル経済の活性化に必要な資金を作るという名目でノボア氏が行なっている政策の一環であるが、補助金停止の影響を特に受けるのは農業や漁業、交通産業に従事する人が多い先住民コミュニティであると考えるエクアドル先住民連盟(CONAIRE)が中心となり、ストライキや道路の占拠などの抗議活動が行われている。ノボア政権はこれらの活動に参加する人々を薬物組織や犯罪組織のようなテロリストだと主張し、複数の州で非常事態を宣言して警察や軍を使った強権的な抑圧を行っている。この暴力的な抑圧により、これまでに抗議活動の参加者の1人が死亡し、100人以上の人々が逮捕された。

なおこの抗議活動の最中、エクアドル政府は9月28日に大統領が派遣した人道支援物資を積んだ車両が350人の武装した集団に襲撃され、軍の兵士17人が拉致されたと発表した(※)。また、10月7日にはノボア氏を乗せた車列を標的に集団での投石が行われたと主張した。エクアドルの防衛大臣はこの投石を「明確な暗殺の試みであり、テロ行為だ」と非難した。軍はさらに、5,000人の兵士を首都キトに展開すると発表しており、沈静化の目処は立っていない。

この一連の動きは補助金の終了が直接のきっかけと考えられるが、その背景にはエクアドルの治安の悪化や汚職などへの不満があるという見方もできる。エクアドルはかつて中南米で最も治安のいい国の1つだと考えられていたが、過去10年で多くの麻薬密輸組織や犯罪組織が流入し、麻薬の主要な密輸ルートとなっている。その結果エクアドルでの治安が大幅に悪化し、2023年の殺人率は2018年に比べて6倍近く増加した。このような状況の下で行われた2025年4月の大統領選挙では、2023年から大統領の地位にあったノボア氏が不正の疑惑を指摘されつつも大統領に再選された。彼は犯罪組織に対して強硬な手段をとっているが、これが国民の権利の侵害につながっている。さらに、ノボア氏自身が不正や汚職を行っているとも考えられており、犯罪組織の取締りを行いつつも、マネーロンダリングなどの特定の分野については実効性のある対策をとっていないとも指摘されている。

 

※ この時拉致された17人の兵士は3日後に解放された。

 

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2025年9月に撮影されたノボア氏の政策に対する抗議活動の様子(Martin.vascovinueza / Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0])

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