GNVニュース 2025年10月22日
2025年10月13日、世界保健機関(WHO)は「2025年世界薬剤耐性監視報告書」を発表した。報告書によると、2023年に世界で発生した感染症を引き起こす細菌のうち、約6分の1は抗生物質に対する耐性、すなわち薬剤耐性があると明らかになった。また、2018年から2023年の間で、尿路 ・ 消化管感染症、血流感染症、淋病に用いられる抗生物質の約40%が効果を失った。
なぜ抗生物質は効果を失うのだろうか。最大の要因は、抗生物質の過剰利用にある。抗生物質は、細菌による感染症に効果があるが、風邪やインフルエンザのようなウイルス性の感染症には効果がない。それにも関わらず、抗生物質はウイルス性の感染症に対して頻繁に処方されている。これによって細菌は、進化の過程で薬剤耐性を持つようになる。「スーパーバグ」と呼ばれるそのような細菌によって、抗生物質を投与しても感染症が治らないという事態が起こっている。2019年には、スーパーバグが直接的な死因となった数はのべ130万人とも言われている。
報告書によると、中所得国や低所得国の多い東南アジアやアフリカでは、スーパーバグは全世界の平均より大幅に多い。これらの地域では、薬剤耐性を監視するシステム(※)と医療システムの両方が脆弱で、一層深刻な事態を招いている。スーパーバグを受けて新しく開発された抗生物質は存在しているが、中所得国や低所得国には行き渡っておらず、従来の効果の無くなったものが処方されることもある。
報告書では、薬剤耐性のある細菌はますます増加するとされいる。薬剤耐性による死者数が、2050年までに70%増加するという予測もある。正しく抗生物質が処方され、新たな抗生物質が全世界で普及していくのか、今後も注目が必要だ。
※ グローバル抗菌薬耐性 ・ 使用監視システム(GLASS)
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抗生物質の一種、クリンダマイシン(写真:A. / [CC BY-SA 2.0])




















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