低所得国から巨額の利益を受ける資産運用会社

執筆者 | 2025年12月24日 | GNVニュース, 世界, 経済・貧困

GNVニュース 2025年12月24日

2025年12月イギリスの報道機関「インディペンデント」に共有された調査によると、世界の15の債務危機にある低所得国から、大手の資産運用会社が巨額の利益を得ていることが明らかになった。具体的には、ブラックロックが運用するファンドが21億米ドル、ゴールドマン・サックスが運用するファンドが9億米ドル、JPモルガンにより運用されるファンドが7億米ドルの利益を得ると推定されるという。また、この15カ国の債権の保有者は総計で600億米ドルの利益を得る計算になる。

民間企業による融資は高利息でありながら対外債務の中でも比重が大きく、別の調査によると、対外融資を行う貸し手として約39%を占めているという。その中でも強い影響力を持つ資産運用会社は、クライアントの資金を投資により増やすことが主な事業であり、中でもブラックロック、ヴァンガード、ステート・ストリートの大手三社が動かす資産は22兆米ドルにもなると考えられている。

一方、債務に苦しむ低所得国は教育や保健分野などへの投資を犠牲にする形で政府収入の多くを債務返済に充てている。特に2020年代に入ってからは新型コロナウイルスの世界的パンデミックやウクライナ・ロシア紛争による燃料費の高騰、気候変動に関連する災害の頻発によりますます厳しい状況に立たされている。また、2022年から2024年の間で、低所得国において対外債務の返済による資金流出が新規融資による資金流入を合計で7,410億米ドル上回り、過去50年で最も大きくなったとも指摘されている。これにより国レベルの不平等がますます拡大することが危惧されている。特に輸出収入の2倍以上の額を対外債務の返済に充てている国では、平均して人口の半分以上が長期的な健康に必要な最低限の栄養を摂取することができない状況にあるという。

そもそも低所得国の経済の低迷は植民地時代に形成された搾取構造に起因する事情もあるため、一定程度のリスクは債権者側も受け入れるべきだとする主張もある。実際に債務再編や債務国に有利になるような法改正に向けた動きも見られているが、未だ債務は低所得国にとって非常に大きな問題であり、その返済が健康や教育、経済発展や災害対策の障壁となり続けている。

低所得国と債務についてもっと知る→「ハゲタカファンド:弱肉国を貪る強食企業

アフリカと債務についてもっと知る→「アフリカの経済:債務の歴史を断ち切れるのか

低所得国から巨額の利益を得る会社が集まるアメリカ、ニューヨークのウォールストリート(写真:Henry Han/ Wikimedia Commons [CC BY-SA 3.0]

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