GNVニュース 2025年9月10日
2025年5月、ボツワナはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の母子感染をなくしていく過程において大きく前進したことによって、世界保健機関(WHO)から表彰された。21世紀初頭、ボツワナはHIV有病率が世界で2番目に高い国であり、およそ8人に1人の乳児がHIVに感染した状態で誕生し、授乳による感染を含めると、母子感染率は20~40%程度もある状況であった。しかし、ボツワナではHIVの母子感染を撲滅するための対策を進め、2023年には母子感染率が1.2%まで低下し、HIVに感染した状態で生まれた子どもの数は年間100人未満になった。
ボツワナがHIVの母子感染をここまで減少させることができたのは、医療の改革がすみやかに行われたことにある。産科のサービスへのアクセス改善や、母乳による感染を防ぐための粉ミルクの公的な提供、感染を抑える抗レトロウイルス薬の導入など、医療的な取り組みが進められた。また、地域コミュニティを巻き込むことで、HIVとその治療に対する偏見を減らす取り組みも行っている。こうした数々の取り組みが功を奏し、2024年にはHIV感染者の妊婦の98%が治療を受けていた。
しかしながら、2025年9月現在、ボツワナでは公衆衛生が危機的な状況にある。2025年8月25日、ボツワナ政府は医薬品不足などを挙げ、公衆衛生の非常事態を宣言した。同国が経済的に依存するダイヤモンドの価格低迷による政府収入の減少や外国からの援助の減少が理由として挙げられる。特に、HIV対策の資金の3割にあたる額を支援してきたアメリカからの援助削減は、同国の医療に大きなダメージを与えている。様々な医薬品が不足し、緊急性の高くない病気の手術を停止せざるをえない状況だという。
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ボツワナで実施された血液検査の様子(写真:U.S. Army Southern European Task Force, Africa / Flickr [CC BY 2.0])




















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