テヘランはイランの首都で、約1千万人が暮らしているが、現在その歴史の中でも最も深刻な水不足の一つに直面している。これを受け、政府は非常措置として、通常午後8時から翌朝6時までの夜間断水を実施している。この方針は消費を抑制し、市内の主要な貯水池が限界に近づく中で供給システムを安定させることを目的としている。政府当局者は、この水不足の原因を、長期化する干ばつ、降雨量の減少、そして需要の増加にあるとしている。
水不足が全国的な懸念を引き起こすのは今回が初めてではない。2021年には、南西部フーゼスタン州で深刻な水不足により住民が飲料水を確保できず、農業が壊滅的な被害を受けたことから大規模な抗議行動が発生した。このデモはすぐにイスファハン州やテヘランなど他の州にも広がり、環境管理の不備や政府の無策に対する深い不満が表面化した。治安当局による暴力的な対応は、イランにおいて環境危機がしばしばより広範な政治的・社会的混乱へと発展することを浮き彫りにした。
市民の不満が続く一方で、イランのメディアは今回の水不足を主に過剰消費、管理の不備、降雨不足といった要因で説明し、地球規模の気候変動との直接的な関係をあまり強調していない。このような報じ方は、責任を地域内に限定し、化石燃料依存や炭素排出といった構造的要因から注意をそらす役割を果たしていると思われる。イランは世界の炭素排出国上位10カ国に入る国であり、石油・ガス生産に強く依存している。これが地域の干ばつを悪化させる温暖化傾向をさらに促進している。
また、国連安全保障理事会やアメリカなどによる経済制裁の重圧の下で、イランには実行可能な経済的代替手段がほとんどなく、環境への影響にもかかわらず化石燃料依存から抜け出せない状態が続いている。この依存構造を転換しない限り、イランで繰り返される水危機は一層深刻化し、環境の持続可能性と政治的安定の双方を脅かし続けるだろう。
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