対キューバ禁輸の解除を求める国連決議が採択

執筆者 | 2025年11月5日 | GNVニュース, 北中アメリカ, 政治, 経済・貧困

GNVニュース 2025115

20251029日、国連総会は、アメリカが長年キューバに対して課している経済的・商業的・金融的な禁輸措置を終了するように求める決議33年連続で採択した。今回の決議において、票の内訳は、賛成165票、反対7票(※1)、棄権12票(※2)である。2024年の同様の決議の際は、賛成187票、反対2票(※3)、棄権1票(※4)であった。ロシアの同盟国であるキューバのウクライナ戦争に対する支持を理由に、主に中東欧諸国などが同決議への支持を取りやめたが、同決議は依然として圧倒的大多数の賛成により採択されている。

この決議が対象とするアメリカの禁輸措置は、1959年にキューバ革命によってキューバが社会主義国となった時代までさかのぼる。革命後、ソ連との貿易を増加させ、アメリカからの輸入品に対して増税するなどしたキューバに対し、アメリカは1960年にはキューバからの輸入を大幅に制限し、キューバへの輸出を全面的に禁止する措置をとる。さらに、厳格な渡航制限やキューバに停泊した外国船のアメリカへの入港の制限などによって、アメリカ以外の国もキューバに関われないようにしてきた。1960年に作成されたアメリカ政府高官の覚書には、政治的に働きかけてキューバの政権を転覆させられないときには、「キューバへの資金と物資の供給を止め、通貨価値と実質賃金を低下させ、飢餓と絶望を招き、政権転覆を図る」とあり、厳しい制裁を取る理由がうかがえる。

バラク・オバマ政権下で一時的に制限が緩和されたこともあったが、その後のドナルド・トランプ政権下で制裁が強化され、ジョー・バイデン政権でもその方針が引き継がれ、2025年現在に至っている。こうしたアメリカの経済制裁の影響もあり、キューバの経済発展は阻害され、食糧不足が恒常的な問題になるなど人々の生活は苦しいものになっている。貧困についての包括的なデータはないが、人口の9割ほどが極度の貧困の中で暮らしているとする調査もある。キューバの外務省の推計によると、20243月から20252月までの期間で、アメリカの制裁によって被った損害はおよそ75億米ドルにのぼる。

※1 反対票を投じた国は、アメリカ、アルゼンチン、イスラエル、ウクライナ、北マケドニア、パラグアイ、ハンガリーである。

※2 棄権した国は、アルバニア、エクアドル、エストニア、コスタリカ、チェコ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ポーランド、モルドバ、モロッコ、ラトビア、リトアニア、ルーマニアである。

※3 反対票を投じた国は、アメリカとイスラエルである。

※4 棄権した国は、モルドバである。

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2023年の同様の国連総会決議における投票結果(写真:Nikolai Twin / Wikimedia Commons [CC BY 4.0])

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