GNVニュース 2025年10月29日
2025年10月28日、紛争が続くスーダンでスーダン国軍(SAF)がダルフール地方最後の拠点であったエルファシールから撤退すると発表した。これに先立つ10月26日、SAFの対抗勢力である即応支援部隊(RSF)はエルファシールの掌握を発表していた。エルファシールはSAFの重要な軍事拠点だったが2024年5月以降RSFに包囲され、中にいた数十万人の民間人が援助物資を受け取れず、飢餓、感染症、暴力などに直面していた。
そしてRSFのエルファシール掌握以降、戦争犯罪や残虐行為が多く報告されている。正当な手続きのない即決処刑の報告や、積み上げられた処刑後の遺体を写した衛星画像なども確認されており、人道状況は極めて悪化している。RSFはエルファシールから民間人や投降兵の避難を認めていると主張しているが、避難の途中で強盗や拉致、性暴力や殺人などがRSFの兵士により行われているとも報告されており、その状況を撮影したと思われる画像や映像もオンライン上で広がっている。さらにRSFのエルファシール掌握から2日間で26,000人以上が避難したと考えられているが、タウィラなど避難先となる街もすでに多くの避難民を抱えており、支援が追いつかない状況となっている。
エルファシールの攻略により、RSFはダルフール地方のほぼ全てを掌握したことになった。2025年8月30日にRSFが新政府の樹立を宣言していたことを踏まえると、近い将来にスーダンが事実上分裂することも考えられる。この状況下で10月24日、アメリカのワシントンD.C.でSAFを支援しているとされるエジプト、RSFを支援しているとされるUAE、ここにアメリカとサウジアラビアを加えた4カ国がスーダン情勢についての会合を行ったが、今後の方針についての合意は未だ形成されていない。
スーダンでは2023年4月に紛争が始まってから国民の半数に及ぶ約2,460万人が深刻な食糧危機に陥っており、約1,410万人が避難を余儀なくされた(※)。死者数については2024年5月時点で15万人という推計がなされているが、その後信頼できる推定は行われていない。
※ 2025年10月には約260万人がハルツームをはじめとする元の場所に帰還したが、住居などの生活基盤の多くは破壊されており、生活は極めて不安定な状況となっている。
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RSFの攻撃で1,500人以上が死亡したとされるザムザム難民キャンプの2014年頃の様子(写真:United Nations Photo / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])





















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