ICJがストライキの権利を巡る公聴会を開催

執筆者 | 2025年10月19日 | GNVニュース, 世界, 法・人権, 経済・貧困

GNVニュース 2025年10月19日

2025年10月6日、国際司法裁判所(ICJ)は2023年に行われた国際労働機関(ILO)理事会からの要請に基づき、ストライキを行う権利が国際法上認められているかを判断するための公聴会を開催した。この公聴会は10月8日まで開かれ、18カ国の政府と5つの国際機関が口頭陳述を行った。

この問題の焦点は、ストライキを行う権利が1948年に定められた結社の自由及び団結権の保護に関する条約(87号条約)において認められているかという点にある(※)。ILOは87号条約が採択されて以降、一貫してこの条約はストライキの権利を認めていると解釈してきたが、2012年の国際労働総会でILOの雇用者代表がこの解釈に正式に反対し、ボイコットした。ILOは労働者、雇用者、政府のそれぞれの代表から成るという三者構成主義を採用しているため、このボイコット以降現在に至るまでILOは統一的な解釈や年次報告書の発表を行うことができない状況が続いている。

また、この影響により多くの国でストライキの権利が縮小され、労働者の権利が脅かされていると指摘されている。ストライキは、雇用者に比べて弱い立場にある労働者にとって劣悪な労働環境の改善や賃金の上昇を雇用者に求めるための重要な手段であり、その権利の縮小は労働者の権利を侵害する恐れがある。特に最近の傾向としては、ストライキの権利が制限される職業としてILOが定義する必要不可欠なサービスについて、その対象となる職業をILOの定義を超えて拡大することでストライキへの制限が強められているという。

この問題についてのICJの勧告的意見は数ヶ月後に発表されると見込まれている。勧告的意見は法的拘束力を持たないが、各国の裁判や国際的な解釈に大きな影響を与えるものと考えられている。さらに勧告的意見によりこの問題に決着がつけば、雇用者の代表がボイコットを終了してILOの活動が正常に戻る可能性もあり、その判断が注目されている。

 

※ ILO87号条約はストライキの権利を明示的には規定していない。しかし、第3条1項「労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する。」、及び第10条「この条約において『団体』とは、労働者又は使用者の利益を増進し、かつ、擁護することを目的とする労働者団体又は使用者団体をいう。」から、この条約はストライキの権利を黙示的に認めているとする解釈が労働者側の見解であり、ILOの監視機構も概ねこの解釈を支持してきた。

 

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2018年にオーストラリアのシドニーで抗議活動を行う労働組合(写真:Stilgherrian / Flickr [CC BY 2.0]

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