GNVニュース2025年12月17日
2025年11月1日、インド・ケーララ州のピナライ・ビジャヤン首相は、州内の「極度の貧困」を完全に撲滅したという声明を発表した(※1)。「極度の貧困」とは、世界銀行が設定した基準によると、1日3米ドル未満で生活する人々の状態を指している(※2)。ケーララ州が用いた基準はこれよりも厳格で、複数の次元において貧困ラインを定義している。
声明によると、これは2021年に発表された「極度の貧困撲滅プロジェクト」を通じた成果である。このプロジェクトでは、貧困状態にあると指定された世帯を特定し、その世帯に対して、個別に計画を作成する。計画は3段階に分かれており、食料や医療サービスへのアクセス、持続可能な収入源の確保、恒久的な住居の提供を行った。プロジェクトを通して、約85,000人が無償の医療サービスを受け、住居については、約5,000戸が改修され、追加で新たに約5,000戸が建築された。
しかしケーララ州の貧困問題には課題が残っており、野党幹部も、声明に対して「完全な詐欺」と非難している。実際、「極度の貧困」状態にあるにもかかわらずプロジェクトの対象になっていない世帯があるという指摘もある。「極度の貧困」状態の中でも最も貧しい層は、補助金や食料の配給を受ける権利を既に持っているという理由でプロジェクトの対象になっていない。また、プロジェクトを通して「極度の貧困」を脱却した世帯についても、失業などで再び「極度の貧困」状態になってしまうリスクがある。
確かにケーララ州は、インドの他の州と比べても貧困層の割合は低い。しかし、「極度の貧困」から完全に脱却するためには、一回限りの支援だけではなく、持続的な経済政策が必要だとする声も上がっている。
※1 ケーララ州では共産党が与党となっている。
※2 ただし、「極度の貧困」状態は、世界で最も貧しい国の中での貧困状態を基準としており、基準を超えていても国によっては十分に生活を送れない場合がある。GNVでは、データがある限り寿命と所得の関係を基準に算出された「エシカル(倫理的)貧困ライン」を貧困の基準として採用している。
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ケーララ州庁舎(写真: Shagil Kannur / Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0] )





















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