《The Planetary Pressの翻訳記事(※1)》
米大手IT企業グーグル(Google)は世界中で化石燃料を採掘している石油・ガス関連会社に対して、今後その会社仕様の人工知能(Artificial Intelligence:AI)を開発することはないと宣言した。
IT企業を扱うメディア、ザ・キューブ(the CUBE)とのインタビューの中で、グーグル・クラウド(Google Cloud)の代表取締役ウィル・グラニス(Will Grannis)は、「グーグルは今後石油・ガス業界に対して、化石燃料の採掘に役立つようなAIや機械学習(machine learning:ML)を開発することはない」と述べた。その代わりに、再生可能エネルギー関連会社の事業を改善するためのAI開発に力を入れていくとしている。

石油採掘の様子(写真:Pickpik [Public Domain])
環境保護を訴えるNGOグリーンピース(Greenpeace)によってある報告書が公開された後、グーグルは科学技術を扱うニュースサイト、ワンゼロ(OneZero)に対しても同じ宣言を述べた。その報告書には、グーグルとアマゾン(Amazon)、マイクロソフト(Microsoft)が石油・ガス関連会社に対して化石燃料採掘に役立つような技術を提供することによって、気候変動への取り組みをどのように妨げているかについて詳細に述べられていた。
「これら3つの会社の気候変動対策を損ねているのは現在も続けられている石油・ガス関連会社との繋がりそのものである。IT大企業は大手石油関連企業に対して、機械学習システムや他のAI機能が石油とガスをより効率的に採掘するのに役立つとして購入を促してきた」。報告書の共同執筆者であり、アメリカのグリーンピースのシニア・コーポレート・キャンペーナーであるエリザベス・ジャーディム(Elizabeth Jardim)が1月にこのように述べた。さらに「もし私たちがこれ以上の壊滅的な温暖化をくい止めようとするならば、この10年がとても重要となってくる。温暖化の根本的な原因となっている産業をこれ以上強化している場合ではない」と続けている。
またグリーンピースは、石油・ガス産業がAIなどの技術をどのように使用してきたかについて、グーグルが詳細を明らかにしていないということも指摘している。それに対しグーグルは、グーグル・クラウドは石油・ガス関連会社から2019年でおよそ6,500万米ドルを受け取っているが、その額は収入全体の1%にも満たしていないと強調している。
とはいえ、グリーンピースはグーグルが世界で再生可能エネルギーに対して最も積極的な買い手の一つであることは認めている。グーグルは2017年に100%の再生可能エネルギーに切り替えると宣言し、それ以来世界各地の自社の電気使用を100%再生可能エネルギーで賄ってきた。グーグルの再生可能エネルギーの容量は合計で5,500MW となっている。

アメリカにあるグーグル本社(写真:Niharb/Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
一方でマイクロソフトはグリーンピースの報告書に対して、石油・ガス関連会社との繋がりを擁護するような姿勢をとりつつも、現在の気候変動に対する取り組みの責任と炭素ゼロ社会への移行の必要性について繰り返し述べた。
マイクロソフトは「現在世界は地球温暖化の危機的状況に直面しており、炭素ゼロ社会に到達するために、私たち全員がより積極的な対策を早急に行う必要があるということに賛成だ」と述べている。一方で、「しかし現実としては世界のエネルギー供給は化石燃料で賄っており、世界中の生活水準が上昇する中でさらなるエネルギーが必要となってくるだろう。そういった現実を考えると、炭素ゼロ社会への切り替えは人類史上最も困難だと気付かされる」とも主張している。
グリーンピースはグーグルが石油・ガス関連会社に対するAI機能開発から撤退することを称賛している。またアマゾンやマイクロソフトもグーグルの動きに続いて欲しいと期待している。
グリーンピースのエリザベス・ジャーディムは「グーグルは未だ石油・ガス関連会社との以前からの契約が残っており、私たちはその関係性を絶って欲しいと考えているが、私たちはグーグルが今後石油・ガス関連会社に対して化石燃料採掘に役立つ技術は開発しないという動きを見せたことを歓迎する」と述べた。さらに「私たちはマイクロソフトとアマゾンが彼らの気候変動対策への取り組みを阻み、気候危機をさらに助長するような石油・ガス関連会社とのAIパートナーシップを早急に終わらせてくれることを期待する」と続けた。
※1 この記事はGNVがパートナー組織として参加する「気候報道を今」(Climate Covering Now)の同じくパートナー組織であるThe Planetary Pressのキムバリー・ホワイト氏(Kimberly White)の記事「Google Pledges to No Longer Build Custom AI for Oil and Gas Extraction 」を翻訳したものである。「気候報道を今」は2020年9月21~28日の一週間を報道週間として定めている。この場を借りて記事を提供してくれたThe Planetary Pressとホワイト氏にお礼を申し上げる。
ライター:Kimberly White(The Planetary Press)
翻訳:Maika Kajigaya