2021年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件(以下9.11)から20年が経過した。9.11は、単にアメリカ国内で発生した事件としてだけではなく、アメリカが数々の国や勢力に対して軍事行動を開始するきっかけとなった。また、事件後アメリカは、国内外で前例のない規模での大幅な監視活動も開始し、9.11は世界情勢に大きな影響を及ぼす事件となった。
重要であると考えられる出来事の何周年かを契機に、改めてその出来事を報道することを「アニバーサリー・ジャーナリズム」という。アニバーサリー・ジャーナリズムは、過去の出来事を振り返ったり、出来事が発生したその後の進展をまとめたりする役割を果たしている。世界で過去に起こった出来事を知り、現在の情勢と結びつけることは、今日の世界情勢を理解することにつながるだろう。実際、日本でも9.11から20年を迎える2021年8月~9月にかけて、9.11及びその後の情勢に関する報道が多く見られた。
それでは、日本のメディアは事件発生から20年という節目を迎え、9.11をどのように報じていたのだろうか。この記事では、9.11の実態とその後20年の経過をメディアが反映できているのかを複数の観点から調べていく。

事件発生2日後のペンタゴンの様子(写真:Cedric H. Rudisill / PICRYL)
9.11同時多発テロの実態
9.11報道を分析する前に、ここでは改めて当日の事件について振り返っておきたい。アメリカ政府の発表によると、2001年9月11日の朝、過激派組織アルカイダのメンバーとされる、主にサウジアラビアの国籍を持つ19人が、米国の旅客機4機を同時にハイジャックした。彼らは、4機のうち2機をニューヨーク市の世界貿易センターのツイン・タワー2棟(WTC第1ビルとWTC第2ビル)に衝突させた。また、残り2機のうち1機はワシントンDCの国防総省(ペンタゴン)に突入し、もう1機はペンシルヴェニア州シャンクスヴィルの野原に墜落した。ハイジャック犯19人を除くと、この攻撃で2,977人が亡くなった。アルカイダの主導者であったオサマ・ビンラディン氏の下で、5年前から練り上げられていたテロ計画が実行に移されたというのがアメリカ政府の見解である。
しかし、9.11に関するアメリカ政府の発表にはいくつかの疑問点も存在する。まず、同国の連邦捜査局(FBI)が、ビンラディン氏とこの事件を関連付ける確たる証拠を発見できず、その容疑で指名手配することはなかったという点である。それにもかかわらず、テロの首謀者がビンラディン氏であると断定するアメリカ政府の見解には疑念が残る。

崩壊したWTC第7ビル(写真:jphillipobrien2006 / Flickr[CC BY-NC 2.0])
また、事件当日の建物の崩壊や飛行機の操縦について、様々な疑問点が挙げられてきた。例えば、世界貿易センターの高層ビルの一つであるWTC第7ビルが、航空機が接触していないにもかかわらず、事件当日に突然、ほぼ自由落下のスピードで崩壊したことである。アメリカ政府によると、第7ビルは崩壊した他のビルから燃え移った火災により倒壊したとされているが、これが事実ならば、火災が主要な原因で高層ビルが崩壊したのは史上初となる。アラスカ大学の研究は、第7ビルの倒壊は建物の全ての柱が同時に破壊されなければ起き得ないと発表しており、火災が原因ではないと結論づけた。また、建物の崩壊に関する政府機関の調査では、崩壊の原因を説明できていないと主張する、建築家・エンジニアのグループも存在する。彼らは、WTCの第1・第2ビルの崩壊が飛行機の追突のみによってもたらされたのかも疑問視している。また、旅客機操縦経験のない者による高度なレベルでの操縦を疑問視するパイロットのグループも存在している。このように、事件当日の出来事については科学的に証明できない部分があることが指摘されている。
事件後の20年間
事件直後、アメリカのジョージ・ウォーカー・ブッシュ政権は、ビンラディン氏を含むアルカイダの幹部がアフガニスタンに滞在しているとして、同国の当時のタリバン政権に無条件での引き渡しを求めた。これに対してタリバン政権は、ビンラディン氏が9.11事件に関わっていたという証拠を求めたが、アメリカは交渉に応じず、軍事介入に踏み切った。この際、ブッシュ大統領は、アルカイダのみならず、あらゆるテロを行う組織に対して「対テロ戦争」を宣言した。
また、アメリカはビンラディン氏の確保のみならず、タリバン政権の打倒にも及んだ。アメリカ政府は、米陸軍特殊部隊と中央情報局(CIA)を動員して、他の同盟国やアフガニスタンの反タリバン武装勢力と協力し、連合軍は2カ月でタリバン政権を打倒した。ビンラディン氏、タリバン指導者、およびその戦闘員の多くはパキスタンへ逃亡した。一方で、9.11は軍事的な対策ではなく、ハイジャック犯を犯罪者として国際的に糾弾するといったような、刑事的な対策をすべきだったという指摘もある。さらに、タリバン政権を打倒するための軍事介入は国際法上、違法だったともされている。しかし、国際的な組織や各国は、このことを十分に追及できていないのが現状である。また、日本は、このアフガニスタンでの戦争において明確にアメリカを支持し、テロ特別措置法を作ってインド洋で給油活動などの戦争支援を行った。タリバンは、連合軍の侵攻により一時は壊滅したかのように思われたが、やがて再び台頭し、2021年には首都を制圧し、政権を奪還した。

イラク戦争の様子(写真:WikiImages [Pixabay License])
また、アメリカ政府は9.11の直後から、これを契機として計7か国に対して軍事攻撃を計画していたとされている。この計画は、その後多くの国で実行に移された。その7カ国のうちの一つがイラクである。ブッシュ政権は、イラクのサダム・フセイン政権がアルカイダとつながって何らかの形で9.11に関わっており、大量破壊兵器を保持しているという虚偽の発言を繰り返し、イラクへの侵攻を開始した。しかし実際にはイラクはアルカイダと関係はなく、大量破壊兵器も見つからなかった。アメリカはフセイン政権を打倒してイラクを占領し、そのことが継続的な紛争につながった。アメリカによるイラクの占領は、イスラム国(IS)の台頭にもつながり、後に、アメリカはISを追ってシリアにも介入することとなる。
9.11後、アメリカが「テロ対策」という名目で軍事介入した国はアフガニスタンやイラクにとどまらない。アメリカはその他にも、パキスタン、イエメン、ソマリアなどの国々に対して軍事介入や空爆を行ってきた。空爆の例としては、アメリカが行ったイエメン・パキスタンでの暗殺計画において、1,147人の市民を巻き添えにしたドローンによる空爆が挙げられる。ドローンによる攻撃は、オバマ政権下で積極的に運用されていった。同時にオバマ政権は、このような攻撃を可能にするために「人道的戦争」(※1)という概念を定着させていった。このような、アメリカが行っているドローンを使った空爆は、それ自体がテロにあたるという見解もある。また、アメリカによる各地の空爆では、テロ組織とは無関係のパキスタン軍兵士が巻き込まれたものや、市民が巻き込まれたソマリアでの空爆などの事例も数多く存在する。
このような他国での軍事行動は拡大を続け、現在も続いている。例えば、アメリカは2018年~2020年にかけて85か国で軍事活動を行っており、「テロ対策」という名目での軍事活動は、近年、より広範囲の地域に及んでいる。さらにアメリカは2020年現在、少なくとも世界の80か国で約750の軍基地を展開しているとされている。またその他に、アメリカは同盟国などと協力し、テロの容疑をかけている数多くの人に対して拉致、国外連行、拷問なども行ってきた。
その後のコスト・代償
では、9.11以降でアメリカが世界各地繰り広げた戦争によって、どのような犠牲がもたらされてきたのだろうか。まず、人的被害に目を向けると、これらの戦争における直接的な死者は90万人以上にのぼるとされる。死者の半数近くは民間人であり、確認できている人数だけでも、イラクで約20万人、シリアで約9万5,000人、アフガニスタンで約4万6,000人、パキスタンで約2万4,000人の被害が出ている。また、ここで言う「直接的な死者」には、爆撃、銃撃など戦争の直接の結果として死亡した民間人、米軍と敵対する勢力の兵士、同盟軍兵士、米軍兵士、人道援助隊員、ジャーナリストなどが含まれる。ここには、戦争がもたらした疾病・移住・食糧や飲料水へのアクセス不足などによる間接的な死者は含まれていないため、実質的な被害者の総数は90万人を遥かに上回ると推測される。
次に、これらの戦争による金銭的なコストはどれほどであっただろうか。皮肉なことに、アメリカによる軍事介入が行われ、国土が広範囲にわたって破壊された国々が負うこととなった金銭的なコストに関する包括的データは存在しない。しかしアメリカにとってのコストについてのデータは存在する。アメリカのブラウン大学の研究プロジェクトによれば、アメリカは9.11以降の20年間の戦争で推定8兆米ドルを費やしたとされている。その内訳は、アフガニスタンでの戦争に2兆3,000億米ドル、イラクとシリアでの戦争に2兆1,000億米ドル、その他の戦争に3,550億米ドルである。費やしてきた軍事予算のうち、武器メーカーなどの軍事関連企業に渡った資金は半分にも及ぶとされている。また、9.11以降、戦場での活動の多くが民間会社に委託されていき、戦争の民営化という傾向がみられた。
9.11後に支払われたもう一つの代償として、人々のプライバシーも挙げられる。すなわち、アメリカをはじめとして世界各地で監視社会が加速した問題だ。事件発生から数週間後、「テロ対策」という名目を掲げ、アメリカの議会は愛国者法を可決した。愛国者法第215条は、政府に、テロに関与している可能性のある人物に関する記録を企業に求める広範な権限を与えている。アメリカ国家安全保障局(NSA)はこの第215条を都合よく解釈し、通信企業などから、電話記録、Eメールやインターネット通話の記録、動画、画像、SNSなどの個人情報の収集が可能となるプリズム(PRISM)という大規模な監視プログラムを運用し始めた。それらの情報は、通信企業の他にグーグル、フェイスブック、ヤフー、マイクロソフトといった大手企業からも大量に入手しているとされている。このことは、2013年、エドワード・スノーデン氏によってリークされた。後にアメリカの裁判所は、NSAが行った情報収集は外国情報監視法に違反しており、違法であるとの判決を下している。
政府が情報を収集することでテロの発生を防ぐという名目で制定された愛国者法であるが、それでは、愛国者法によって本当にテロを未然に防ぐことができているのだろうか。アメリカ政府は、特に215条がテロ対策に重要な役割を果たしているとの立場を示してきたが、プライバシーと市民の自由の監視委員会(PCLOB)によると、2015年の時点で、愛国者法がテロ防止に寄与したケースは発見されなかった。

現代社会の至る所に設置されている監視カメラ(写真:Px4u by Team Cu29 / Flickr[CC BY-ND 2.0])
9.11アニバーサリー・ジャーナリズムの分析
上記のように、9.11同時多発テロは、この20年間で数々の戦争や軍事介入および一般の人のプライバシーの大幅な侵害につながるきっかけとなった。では、日本のメディアはこのような20年間をどのように振り返ったのだろうか。今回、2021年の日本の9.11関連報道を分析するために、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞3社について調査(※2)を行った。該当記事は、朝日新聞で88件、毎日新聞で89件、読売新聞で17件の合計194件で、主に2021年9月11日前後に集中していた。以降、3紙の報道をまとめて分析する。
2021年の9.11関連報道を見てみると、その内容について、9.11から20年経過した現在の情勢についての記事、9.11からの20年間の進展についての記事、事件そのものについての記事というおおまかな3パターンに分類することができる。その内訳を調べてみると、現在の情勢についての記事が96件(49%)、9.11からの20年の進展についての記事が80件(41%)、事件そのものについての記事が20件(10%)であった。
事件そのものについての記事20件については、そのうち18件が、当時現場にいた人や、その遺族などの個人へのインタビューに基づく記事であった。上でも触れたような、同時多発テロについて、誰による犯行でどのように行われたかについての疑問点に言及した記事は1件もなかった。
また、2021年9月の米軍のアフガニスタン撤退の影響もあってか、このような新着ニュースを含めた現在の情勢についての記事が49%と大きな割合を占めた。このような「今」を伝える記事が、報道の重要な役割を果たしていることは言うまでもない。しかし、今回はこの20年間この事件が世界にもたらした影響がどのようにメディアで記憶されているのかを調査するために、9.11からの20年の進展について書かれた記事を分析していきたい。
まず、9.11からの20年間に視点を向けた記事はどのような国に関連した報道になっているのだろうか。そこに地域別の偏りはあるのだろうか。分析対象となった80件について、報道量を地域別(※3)で見てみると、アメリカに関する記事が約39%、アメリカの地上軍が多く派遣されたアフガニスタン、イラクに関する記事がそれぞれ約29%、約12%と、この3か国で約80%の報道量を占めていた。その他の国では、日本、中国、ロシアの順で報道量の割合が高くなっており、その他の国々は1%以下の割合となっている。日本、中国、ロシアについての記事は、日本からの視点の記事や、9.11から米中関係、米露関係にまで話を広げた記事が特徴的であった。また、アメリカが空爆などの軍事行動を行ったパキスタン、イエメン、ソマリアに関する記事数はそれぞれ、パキスタンが1.1件、イエメンが0.5件、ソマリアが0件にとどまった。
上記のように、アメリカは現在でも世界各地に約750の基地を展開し、85か国で「テロ対策」と称した軍事活動を行っているが、報道量は一部の地域への偏りが著しいということが分かる。アメリカが展開している約750の軍基地や85か国での軍事活動に触れた記事は朝日新聞の3件のみで、毎日、読売新聞では取り扱っていなかった。上でも取り上げた、アメリカによる拉致・拷問問題やドローンによる暗殺問題を取り上げた記事はいずれも0件であった。また、日本による米軍への給油活動に関する記事は、朝日新聞の1件のみであった。
また、イラク戦争は9.11関連事象として9.5件で報道されていた。しかし、フセイン政権とアルカイダには関連がなかった点を指摘した記事は1件、大量破壊兵器が見つからなかった点に触れた記事は3社合計で4.5件にとどまった。
一方で、各戦争や軍事行動において、民間人や米軍の死者をはじめとする人的被害に触れた記事は31件、20年間の戦争におけるアメリカの多額の出費に触れた記事は25件と、ある程度の報道量があった。人的被害について書かれた記事の内容を見ると、それぞれの国での民間の死者は米軍より圧倒的に多かったにもかかわらず、民間人への被害を記述した記事が15件、米軍側の被害を記述した記事が14件であった(※4)。民間人への被害について書かれたものについてさらに詳しくみると、そのすべてが民間人全体への被害、もしくはアフガニスタンやイラクにおける民間人への被害を記述したものであり、その他の地域における被害に言及する記事はなかった。また、アメリカの戦費については、25件のうち18件が具体的な金額まで記述してあった。一方で、戦争の対象となった国の被害総額に言及する記事はなかった。

キューバのグアンタナモ米軍基地内の収容施設(写真:Shane T. Mccoy / U.S. National Archives & DVIDS)
また、9.11後の監視社会問題に関する報道量を調べてみると、9.11が大きく助長した監視社会問題について、「世界をおおう監視社会の出現」と一言言及する朝日新聞の記事1件のみであった。世界中のあらゆる地域がインターネット上でつながる現代において、監視社会問題はアメリカだけでなく日本にも大きく影響する問題である。現状の日本における報道量は、問題の重大さに見合ったものだとは言えない。
「対テロ戦争」という言葉
記事の内容を調査していく中でたびたび登場したのが、「対テロ戦争」、「テロとの戦い」という言葉だ。「対テロ戦争」という言葉は、9.11発生直後のブッシュ政権がアフガニスタンに侵攻する際に用いた言葉である。ブッシュ政権は、この語を用いることで、意図的に「敵」の範囲を曖昧にし、どこにでも戦争をしかけ、それを正当化できるようにした狙いがあったのではないかという見解もある。しかし、そもそも「テロ」は紛争当事者や集団ではなく、暴力の手法であり、手法に対して戦争をしかけることはできない。したがって、この言葉はあくまでも戦争当事者による政治的な意味合いを込めたプロパガンダの言葉であり、ジャーナリズムがその正当性を問わずしてそのまま使うことには問題があるといえる。2008年以降、この「対テロ戦争」という言葉は、アメリカ政府でさえ使用しなくなった。
「対テロ戦争」という言葉の問題性が公に指摘されている2021年現在でも、日本のメディアはこの語を使い続けている。「対テロ戦争」とその類語(※5)の報道量を見てみると、「対テロ戦争」のように鍵括弧ありで用いられたのが30件で使用回数が37回、鍵括弧なしは35件で使用回数が61回であった。毎日新聞、読売新聞、朝日新聞の3社ともに「対テロ戦争」の語を使用しており、記事のタイトルにこれらの語が用いられたものも複数件存在した。
さらに言えば、上記のように、アルカイダとイラクのフセイン政権を結びつける証拠はなく、イラク戦争を「対テロ戦争」の一環として表現することには大きな問題があるが、日本の新聞はこの戦争に関しても「対テロ戦争」の語を使用している。例えば、2021年10月23日毎日新聞「イラク現地報告・動乱の20年を超えて:/上 ファルージャ 戦闘の町、爪痕と復興と スンニ派集住、米報復・IS一時占拠」の記事中には、「アフガニスタンと並び、米国が01年9月の米同時多発テロ以降に展開した『テロとの戦い』の最前線だったイラク。」との記述が存在した。ここでは「テロとの戦い」を鉤括弧に入れた表記としているものの、同記事内で9.11の首謀者とイラクを結びつける証拠がなかったことなどについては書かれておらず、読み手によってはイラクと9.11を結びつける印象を持ちかねない。

イラクにおける国内避難民の様子(写真:Mstyslav Chernov / Wikimedia Commons[CC BY-SA4.0])
今回の調査では、語を生み出した張本人であるアメリカ政府でさえ使用しなくなった「対テロ戦争」の語について、日本のメディアはその正当性を問うことなく、そのまま使用し続けているという事実が浮き彫りとなった。このことから、日本のメディアは、9.11後にアメリカが繰り広げてきた数々の戦争は「テロと戦うためのもの」であったという見解を未だに持ち続けていることがうかがえる。
まとめ
今回、9.11事件の20周年の時期に合わせ、その前後の関連報道を分析したところ、現状、9.11関連の報道は地域・内容ともに偏りが生じており、重要な関連情報を伝えきれていないことが分かった。今回調査した記事の多くで、紛争当事者であるアメリカ政府の発する情報を鵜呑みにし、そのまま読者に発信するような傾向も見られた。また、「対テロ戦争」という語の多用からも分かるように、未だにメディアは事実を反映していない言葉を使い続けているというのが現状である。このような偏った内容の報道が続くことで、読者はアメリカによる戦争が「テロと戦う」ためのものという認識を強化してしまうだけでなく、戦争そのものへの批判的な見方やその是非を問う機会すら失っていくのかもしれない。
※1 対人地雷や毒ガスといった兵器は、攻撃の対象が区別できないために民間人に多大な被害を与えたり、後遺症などの不必要な苦痛を与えるため、「非人道的兵器」とみなされている。オバマ政権は、これらの「非人道的兵器」を用いない「人道的戦争」を提唱することで、ドローンによる攻撃を推し進めた。しかし実際は、ドローンによる攻撃によって多数の民間人への被害が発生している。
※2 期間は2021年1月1日~2021年12月31日。東京朝刊・夕刊・地方版(東京のみ)ですべての紙面を対象とした。検索ワードは「9・11 or 9.11 or 同時多発テロ」とし、該当記事の中から9.11に関する記事を抜粋した。
※3 1つの記事を1として、記事に関連する国の数で1を割ってカウントする(例:1つの記事にアメリカと日本が関連していた場合、それぞれ0.5件とする)方法を用いて集計した。
※4 米軍側の被害と民間人への被害の両方が記述してあるものは、それぞれ0.5としてカウントした。
※5 「対テロ戦争」、「テロとの戦い」、「対テロ戦」、「対テロ」、「対テロ戦線」など
ライター:Seiya Iwata
グラフィック:Mayuko Hanafusa
すごくおもしろかったです。9.11のビル倒壊の謎や、イラクとの外交の裏側についてはほとんど知りませんでした。日本のメディアはやはりアメリカに忖度しているのでしょうか