GNVニュース 2025年10月12日
2025年10月に発表された環境報道機関モンガベイの調査によると、メコン川流域のカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5カ国は、2024年に合計で約99万ヘクタールの広大な森林を失った。失われた森林の30%以上が森林保護区内で発生しており、森林保護方策の見直しと対策強化の必要性が注目されている。
メコン川流域での森林破壊の主な要因は、農業産業による大規模農園への転換、違法伐採、道路設備やダム建設などのインフラ開発だとされている。ラオスでは中国、東南アジア諸国向けの食物輸出需要が高まり大規模農園の設立に伴う違法森林伐採が報告されている。同国では鉱物の採掘利権が急拡していて外国資本による土地収奪が問題視されている。
2021年に起きたミャンマーのクーデター後、国内では森林保護や違法伐採の監視、報告活動を行う先住民族や非営利団体員に対する弾圧、迫害などの人権侵害が報告されている。また、ミャンマーの紛争と政治混乱は、資金源の確保を目指す軍事政権と反政府勢力の両者による、無秩序な伐採や非規制な採掘を常態化している。カンボジアに関しては、登録されたカーボンクレジット・プロジェクト(※)の水力発電ダム建設が森林破壊になっているという指摘もある。
一方で、タイやベトナムでは、伐採禁止の徹底や、高額な罰金・禁錮刑を含む森林保護法の厳格な施行に加え、企業や市民への教育と植樹活動の支援が、森林保護に大きな成果をもたらしているという報告もある。国際連合環境計画(UNEP)の一貫であるフォレスト・フォア・ライフ活動では竹や再生木材で作られた製品を選ぶよう消費者に促し、メコン川流域諸国の政府と連携し、森林認証制度の導入や輸出規制を支援するなど国際的な取り組みを行っている。森林保護を促進するためには政策・法執行の強化、需要の抑制と転換、地域社会の関与、技術・監視体制、国際的な連携など多様な政策が不可欠になっている。
※ カーボンクレジット・プロジェクト:温室効果ガスの排出量を削減、大気中の温室効果ガスを吸収または除去したりすることを目的とした事業でその成果が認証されたプロジェクトのこと。温室効果ガスの排出削減量や吸収量を数値化し(カーボンクレジット)、企業間で売買する仕組み。
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木材、ミャンマー(写真:EU FLEGT Facility / Flickr [CC BY-NC-SA 2.0] )





















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