ニュージーランド:企業に対する気候訴訟を差し止める法案が可決

by | 2026年08月25日 | GNVニュース, オセアニア, 法・人権, 環境

GNVニュース 2026年8月25日

2026年8月18日、ニュージーランド議会は、気候変動による環境破壊の責任を企業に問う訴訟を差し止める法律を可決した。先住民マオリの活動家マイケル・スミス氏が大手企業6社を相手取って起こした訴訟に対し、与党は、裁判が議会の定めた枠組みと矛盾する新たな規制を生みかねず、企業の信頼と投資に不確実性をもたらしかねないとの認識を示した。政府は、温室効果ガス排出に関する政策決定は「選挙で選ばれた政府と議会」が担うべきとの立場から、今回の法改定に踏み切った。最高裁が審理継続を認めていたスミス氏の訴訟は、これにより事実上終結した。

法改定には批判も相次いだ。野党側は、まだ判決の出ていない裁判を後から法律で強制的に打ち切らせるのは、争っている最中に一方的にルールを変えて相手の主張の道を閉ざすようなものであり、法治の原則に反すると主張している。加えて、対象企業が裁判で劣勢に立たされる中で政府に働きかけを行ったとの指摘もあり、対象企業から首相府スタッフへ送られたロビー活動文書が、情報公開請求の際に開示されていなかったことも明らかになっている。

気候変動委員会の最新報告書は、ニュージーランドが本件以外でも気候変動対策への姿勢が不十分であることを指摘している。気候変動への適応策に関しては、自然災害対策費のうち将来リスク低減に充てられているのはわずか3% で、97%は発生した災害への対応に使われている。そのしわ寄せは国民にも及んでおり、洪水危険区域では保険料が高騰し、保険に加入できない住民も出ている。背景には、費用のかさむ新たな適応策の実施より問題の先送りを選びがちな政治家の姿勢もあり、実際、地方議会に適応計画の策定を義務付けながら費用負担の在り方は示されていない。

また、排出削減の面でも燃費基準を引き上げて排出の少ない車への切り替えを促す規制が緩和されたことなどにより、2026〜2030年の削減目標の半分以上が達成困難な状況にある。政府は、排出枠を売り買いする「排出量取引制度(ETS)」を主要な政策手段としているが、農業部門に排出上限が設けられていないほか一部産業も排出枠を無料で受け取るなど優遇されており、価格負担が生じているのは総排出量の36% 分にすぎない。これらを背景に、ニュージーランドは適応・排出削減の両面で、必要なペースに追いついていないと指摘されている。

 

気候変動における国家の法的な責任を問うた試みについてもっと知る→「気候変動問題における大きな一歩:ICJへの持ち込み」

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近年の気候変動の状況についてもっと知る→「1.5℃超えの現実:世界の気候変動問題・対策と日本の報道」

気候変動における富裕層の責任についてもっと知る→「気候危機の解決と富裕層の責任」

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ニュージーランド議会(写真:Peter / Flickr [CC BY-NC 2.0])

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