ブラジル中央銀行(BCB)が開発、運営する電子決済システム「ピックス(Pix)」が2020年の導入開始以来、同国内で急速に普及している。ブラジルの成人の90%以上が買い物などの決済に利用している。低所得者層の多いグローバルサウスの国々が、Pixをお手本に同様のシステムの導入を検討する。これに対してドナルド・トランプ政権は、アメリカを拠点とするクレジットカード会社や大手IT企業の市場を奪っているとして反発を強めている。
BCBによると、Pixは、24時間365日、瞬時にお金を送ったり、受け取ったりできる決済システムだ。ブラジル国内に銀行口座があれば、だれでもメールアドレスや電話番号を使って利用できる。QRコードをスキャンするだけで送金も可能だ。手数料は個人が利用する際は無料、加盟店や企業の取引でも低く抑えられる。
BCBが目指すのは、貧富、規模の大小を問わず、希望すればだれもが市場にアクセスできる「金融包摂」だ。クレジットカード会社の審査に通らない低所得層でもPixによって、より安全な買い物、取引が可能になった。こうした取り組みは、ラテンアメリカやアフリカの国々で金融インフラのモデルとして高く評価されている。
これに対して、トランプ政権は不満を隠さない。フランス政府系テレビ局「フランス24」によると、フェイスブックを運営するメタは2020年、Pix導入の数か月前にブラジルでワッツアップの決済システムを始めようとした。しかし銀行当局にPix導入後に延期させられ、普及を阻まれたという。アメリカ通商代表部(USTR)は2025年7月、Pixと名指ししていないものの、「不公正な貿易慣行」の調査を開始すると発表。同年8月には世界最高水準の50%の関税をブラジルに課した。
トランプ氏は、クーデター未遂で禁固27年3カ月の有罪判決を受けた極右のジャイル・ボルソナロ前大統領と盟友関係にある。2026年秋のブラジル大統領選を前に、現職のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領への批判を強める。USTRは2026年3月末に発表したレポートでも、改めてPixが「アメリカの電子決済サービス提供業者の不利益になる」との懸念を表明した。これに対してルーラ氏は「だれもわれわれにPixの変更を強いることはできない」と対決姿勢を鮮明にしている。
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いちご:「Pixで支払いができます」(写真:Mateus S. Figueiredo)Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0]





















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