パキスタンにおける女性への酸攻撃はなぜ終わらないのか

執筆者 | 2026年07月1日 | GNVニュース, アジア, ジェンダー・性

GNVニュース 2026年7月1日 

ジェンダーに基づく暴力は世界的に依然として深刻な問題である。中でも女性への酸攻撃(酸をかける暴行)は被害者の身体だけでなく人としての尊厳や社会的存在をも破壊する残酷な暴力と言える。酸攻撃は、パキスタンなどの南アジアにおいて多く報告されている。

パキスタンにおける酸攻撃に関する公式統計はないが、職業キャリアを追求しようとする女性からトランスジェンダーの女性まで、毎年200件程度の被害の報告がなされている。しかし、実際には報告よりさらに多くの犯罪が行われていると指摘されている。

例えば、20266月に報じられたパキスタンのバロチスタン州における29歳の女性医師への病院職員による酸攻撃事件は、こうした暴力が現在も継続していることを示している。犯人は死亡したため、動機は明確にはなっていないが、彼女は顔と体に約13%の火傷を負い、顔に深刻な損傷を与えたと報道されている。

また、2025年に起きた同国のパンジャーブ州でのトランスジェンダーの女性への酸攻撃においては、彼女に好意をもった若者が自分のアプローチに前向きに反応しなかったことへの憤りから犯行に及んだとされている。

これらの事件は単発的な犯罪としてではなく、社会構造の中で理解される必要がある。背景として指摘されるのは、根強い家父長制とジェンダー不平等である。パキスタンをはじめとする南アジアの社会においては、女性が教育や就労など家の外での活動を求めた場合、暴力の対象となり、酸攻撃が伝統的規範に従わない女性の選択に対する制裁や報復として用いられてきたとされる。

近年では酸販売規制の強化や罰則の強化など一定の政策的進展が見られる。しかし、酸の入手が比較的容易であることや、有罪とされたとしても司法の執行の不十分さが、加害行為の抑止を困難にしており、依然として課題が残されている。

パキスタンについてもっと知るパキスタンの隠れた紛争:バルチスタン

女性差別についてもっと知る女性差別に関する国際報道

 

女性への暴力に関する講演の様子(写真:UN Women, Mahnoor Arshad / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])

 

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