ソマリア近海での海賊行為が急増している。2026年に入ってから少なくとも13隻が襲撃された。イランとアメリカのホルムズ海峡の支配権をめぐる戦争が長引いていることが背景にある。年間200件の襲撃があった2010年代初頭の水準には及ばないものの、海賊行為は以前よりも組織化しており、事態の悪化が懸念される。
ソマリア連邦政府は2026年8月29日、ソマリア軍とトルコ海軍が貨物船「MVルトゥフ号」を解放し、海賊14人をドローン攻撃によって殺害、ボート4隻を破壊したと発表した。MVルトゥフ号は8月17日、ソマリアの半自治地域プントランド沖で襲撃を受けた。ソマリアとトルコは2024年に防衛協定を結んでおり、貨物船はトルコ軍の武器を運んでいたとされる。一方、プントランド当局は軍事的な救出作戦は行われず、多額の身代金が支払われたと主張している。
イランとアメリカが戦争を続ける中、紅海の出入口であるバブルマンデブ海峡がホルムズ海峡の代替ルートとして注目されている。しかしイエメンの首都を支配するアンサール・アッラー(別名フーシ派勢力)がサウジアラビア関連船の航行を阻止し、この周辺でも緊張が高まっている。このため各国の海軍がこの海域に向かい、ソマリア沖が手薄になった。さらに紛争に巻き込まれるのを避け、商船などの航行ルートがソマリア沿岸に近づいていることが、海賊行為の増加につながっている。また原油価格の高騰により、より高い身代金を見込み、タンカーが狙われやすくなっている。
ソマリア近海での海賊の歴史は、1990年代初めのソマリア政府崩壊にまでさかのぼる。地元の漁師たちが違法な漁業や廃棄物投棄から沿岸海域を守るため民兵組織をつくったが、それが徐々にエスカレートし、船舶の乗っ取りにまで発展した。2005~2012年に外国船への襲撃は1000件以上にのぼり、4億米ドル以上の身代金を要求した。
しかし北大西洋条約機構(NATO)、ヨーロッパ連合(EU)などが海軍によるパトロールを強化し、海運各社も船舶の防護を徹底した結果、海賊による船舶乗っ取りは2013~2023年はわずか2件にまで減少した。
再び増加する海賊行為は以前よりも組織的になり、手口も高度化している。アルジャジーラによると、最近はイエメンやソマリアのビジネスマンたちが資金提供している。海賊たちはGPSや衛星を利用し、よりすぐれた武器を使っている。アルカイダ系反政府勢力アル・シャバブなどとも連携しているという。
一方で海賊を生む土壌はかつてと何も変わっていないとの指摘もある。外国船による違法操業が漁民の漁業資源を「暴力的」に奪い、アメリカからの援助も大幅に削減された。ソマリアの2026年3月のインフレ率は9.2%に達し、ここ数年で最高水準となっている。経済的な困窮が人々を海賊行為に向かわせているというのである。
ドナルド・トランプ政権は2025年、アル・シャバブなどを標的にしたソマリアへの攻撃を拡大している。2026年8月7日には南部の村を空爆した。同年に入って78回目、2025年の124回を上回るペースである。死傷者数、民間施設への被害を明らかにしていない。国内情勢も安定には程遠い状況だ。
ソマリア情勢とその背景についてもっと知る→「ソマリア:安定を目指して」

ソマリア海岸線(写真: Global Partnership for Education / Flickr [CC BY-NC-ND 4.0])





















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