(本記事はインサイト・クライムに掲載されたものです。クリエイティブ・コモンズ BY-NC ライセンスの下で、ここに再掲載しています)
メキシコとアメリカは最近、政府にとって安価な商用技術であるドローンを犯罪組織がどのように転用しているかに対応するため、対ドローン(カウンター・ドローン)技術を中心とした安全保障協力を深めることで合意した。ラテンアメリカ各国政府は、監視、領域支配、暴力のためにこの技術をますます高度なツールへと変貌させる犯罪組織への対応を急いでいる。
現在ドローンは、コロンビアの武力紛争、ブラジルの都市部における抗争、メキシコの分裂した犯罪勢力の構図において、重要な役割を果たしている。だが、政府側の対応は、安価で市販されているドローン技術を巧みに取り込む犯罪側の適応スピードに追いついていない。
課題は単に犯罪組織がドローンを入手したという点にとどまらない。彼らがその技術を改造する能力を獲得していることが問題なのだ。一般消費者向けに設計された市販のクアッドコプターや ファースト・パーソン・ビュー(FPV)ドローンが、今や手榴弾、爆発物、監視カメラを取り付けられ、日常的に使用されている。こうした機体は比較的安価で購入でき、コロンビアやメキシコでは600~1,200米ドル程度で入手可能だ。
犯罪組織の内部および組織間で技術的知識が急速に共有されているため、ドローンの能力は政府が抑え込めるペースを上回る速さで進化している。
目次
コロンビアの対ドローン部隊
コロンビアにおけるドローン問題の深刻さは急激に増している。ドローン攻撃の影響を受けたコロンビアの自治体の数は、2024年から2025年の間に12から41へと増加した。同期間に違法なドローン攻撃の件数も38件から149件に増えており、これはACLED のデータによるものだ。これを受け、政府は総額16億8,000万ドル規模の対ドローン防御網(Escudo Nacional Antidrones)の構築を進めている。複数段階から成るこのプログラムは、治安要員の訓練と、コロンビア陸軍内に専門軍事部隊を創設することで、敵対的な無人航空機を探知・迎撃することを目的としている。
2026年1月16日に発表されたこの計画は、現在、導入初期段階にある。すでに当局は、ドローンの押収や、犯罪組織に商用ドローン技術と兵器改造の専門性を提供する要員としてリクルートされている、「ドローン専門爆破技術者」と呼ばれる特殊オペレーターに対する標的作戦など、初期の成果を報告している。
供給網の遮断も、コロンビア政府が講じている対策の一つである。関連法令では、カタヘナ地域税関局の管轄下にある港湾やボゴタのエル・ドラド国際空港といった特定のボトルネック地点における機器の輸入規制が重視されている。また、ドローン輸入を郵便サービスや国際宅配便経由で制限することで、さらに管理を強化しようとしているが、法制度上の抜け穴は依然として残っている。
コロンビアのカタトゥンボ地域では、民族解放軍(ELN)のゲリラ部隊が、監視能力を24時間体制で強化するために、ドローンにサーマルイメージングセンサー技術を搭載していると伝えられている。連携した「スウォーム(群れ)攻撃」や、コミュニティ上空を旋回・滞空するドローンは、心理的威嚇の武器として機能し、領域支配や治安部隊への信頼失墜につながっている。
コロンビアの対応からは、政府が犯罪組織のドローン能力を新たに台頭した一時的な脅威ではなく、この複雑な犯罪情勢における「恒常的な」要素として扱っていることがうかがえる。そして、犯罪組織側はすでに抜け道を見つけつつある。政府は、現行の国家対ドローン能力による電子妨害を回避するため、犯罪組織が光ファイバー式ドローン技術を開発していることを強調している。
薬物を捜索する警察官(コロンビア)(写真:Mussi Katz / Wikimedia Commons[CC0 1.0])
ブラジルのファベーラにおける情報収集ツールとしてのドローン
ブラジル当局は、サンパウロやリオデジャネイロといった犯罪組織に争奪されている都市部におけるドローン利用に対し、地域ごとの状況に即した対策で臨む姿勢を強めている。
リオ州民警は「無人航空機運用調整局:COANT)」を立ち上げ、地図作成やリアルタイムでの作戦状況のモニタリングを目的に、ドローンを情報収集および警察活動に組み込んでいる。
サンパウロ州警察は、情報主導型の監視作戦を優先し、ドローン銃を用いてドローンを狙ったピンポイント攻撃を試みるなどの実験も行っている。
こうした取り組みは、犯罪組織に情報面での優位性をもたらしているドローンの活用を阻もうとするものだ。ブラジル最強クラスのギャングである「ファースト・キャピタル・コマンド(Primeiro Comando da Capital:PCC)」や「レッド・コマンド(Comando Vermelho:CV)」は、ドローンでファベーラを監視し、治安部隊の動きを把握し、敵対勢力の位置を特定し、従来の人的偵察よりもリスクを抑えながら攻撃を調整しているとされる。
レッド・コマンドと「ピュア・サード・コマンド(Terceiro Comando Puro:TCP)」は、2026年初め、リオデジャネイロのファベーラで互いに向けて手榴弾や爆発物を投下できるよう改造したドローンを使用していたと報じられている。CV はまた、民兵組織メンバーとも対立している。連邦検察によれば、7月には、同派が勢力拡大を図っていたクリシカ地区で、CVのドローンが爆弾を投下し、爆発させたという。
ブラジルのアプローチは、ドローンが犯罪組織にもたらした情報面での優位性を逆転させることを目指すものだ。しかし、ドローンに対する攻撃や押収といった情報主導型の取り組みだけでは、犯罪組織のドローン運用を完全に根絶することはできない。低コストの商用ハードウェアにより、犯罪シンジケートは押収された装備をすぐに補充しつつ、領域支配を維持できるためだ。
リオデジャネイロ・ロシーニャ・ファベーラ内部の警察官(2012年)(写真:Hairburrito / Wikimedia Commons[CC BY-SA 4.0])
メキシコはドローン専門家を標的に
メキシコでは連邦・州の両政府が、専門的なドローン操縦者、製造者、技術支援者、供給業者を処罰するため、ほかの措置と並行して、厳罰化を進めている。
メキシコは2024年、犯罪目的のドローン使用に対する連邦レベルの刑罰を強化し、爆発物や武器の投下にドローンを用いた攻撃には10~20年の禁錮刑、禁止物資の輸送用にドローンを製造・取得・改造した場合には5~10年の禁錮刑を導入した。これらの刑が併科された場合、合計で最長40年の懲役となりうる。
メキシコ州では、ドローンを使って被害者を監視したり、強盗、家畜窃盗、不法占拠などの犯罪の実行を容易にする情報を収集したりした場合に、最長18年の禁錮刑を科す法案が検討されている。
こうした措置は、「ドロネロ(droneros)」と呼ばれる熟練のドローン操縦者を標的にすることを狙っている。ドロネロは、領域や麻薬ルートを支配するために高度な武装に依存するメキシコの犯罪組織にとって極めて貴重な戦力であり、また市販機器を利用して失われた能力を再構築できる技術者や爆弾製造者も同様である。
ハリスコ新世代カルテル(Cartel Jalisco Nueva Generación:CJNG)は、ミチョアカン州やハリスコ州において、即席爆発装置(IED)を用いた攻撃など、高度なドローン運用能力を繰り返し示してきた。これらの攻撃は、敵対組織や治安部隊、さらには民間人を標的として実行され、同組織が複数年にわたり、領域や密輸ルートへのアクセスを確保するために活用してきたものである。この技術的専門性は、報道によれば、同組織の同盟勢力であるファミリア・ミチョアカナにも波及している。一方で、より小規模な組織であるカルテレス・ウニドス連合も、熟練した操縦者を確保したことで同様の戦術を採用しており、ドローンの専門知識がメキシコ最大の犯罪組織をはるかに超えて拡散していることを示している。
ドローン訓練(写真:BLM Oregon & Washington / Wikimedia Commons[CC BY-SA 2.0])
メキシコのアプローチの有効性は、当局が、こうした専門技術者・オペレーターやそのネットワークを特定するために必要な情報収集、科学捜査、訴追能力を構築できるかどうかにかかっている。
執筆:Stella Horrell(for InSight Crime)





















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