GNVニュース 2026年2月23日
2026年1月26日に公開された最新の研究では、北大西洋のクジラの肝臓において、「永遠の化学物質」であるPFAS(※1)総量の指標となる、抽出可能な有機フッ素化合物濃度が2011年から2023年までに60%以上減少したことが判明した。
PFASは分子内に炭素とフッ素の強い結合を持つため、非常に分解されにくく「永遠の化学物質」と危惧されている。水や油を弾き、熱や薬品にも強いため、フライパンのコーティングや食品包装、繊維、化粧品、医療機器、電子機器コーティング等に使用されているが、がんや免疫系への影響、発達障害といった深刻な健康リスクが指摘されている。難分解性であるため人間体内に残留・蓄積しやすく、生態系全体で見ても一度自然界に放出されると生物濃縮により食物連鎖の上位生物(海洋ではクジラなど)に蓄積する。今回のクジラ体内におけるPFAS濃度の減少結果は、海洋に放出されたPFASが減少したことを示しており、その大きな要因として2000年代初頭の国際的なレガシーPFAS(※2)の製造中止が挙げられている。製造中止から濃度減少まで約10年のギャップがあるが、これは主に海洋輸送期間によるものとされている。
海洋に放出されたPFAS全体量は減少しているとされているが、PFASの中には増加しているものが存在する。その一つがレガシーPFASの代替物質であるC4 FASA(ペルフルオロブタンスルホンアミド)であり、2001年から2023年にかけてクジラの体内における濃度は年平均約7% のペースで増加している。これはレガシーPFASと同等の毒性を持つ可能性が指摘されており、レガシーPFASと類似の新規PFASが使用される「残念な代替」がなされていることが課題となっている。また、人間の血液データでは総有機フッ素量が高止まりしており、新規PFASが海洋ではなく陸域や沿岸部に蓄積している可能性も指摘されている。
このように新規PFASに毒性が発見され得る一万種類以上存在するPFASに対し、一種一種を研究することは実現不可能であり、規制においても、アメリカの一部の州や欧州連合、カナダをはじめ個別のPFASではなく化学物質の「クラス」ごとに一括規制する手法へ移行する動きも見られる。
アメリカでは2025年1月1日に州レベルのPFAS規制が施行された。しかし、州ごとに対象となるPFASの範囲や対象製品、許容される閾値が異なり、企業にとっては複雑性が問題となっている。また、同時にPFASを含む製品を輸出する全ての企業に対する過去約10年分のPFAS報告規則も設けられている。欧州連合ではPFASのほぼ全面禁止に向けた段階的廃止を目指し2025年PFAS規制が劇的に加速した。フランスでは2026年から化粧品、繊維製品・靴、およびスキーワックスにおけるPFASの使用の禁止、PFASを含む幅広い製品の製造、輸入、輸出、及び販売の禁止、さらに汚染者負担課税を導入している。日本、オーストラリア、台湾でも従来よりも多くの種類のPFASに対する基準設定や規制、評価が進められている。
※1 ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称
※2 PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)など、2000年代以前に主流だった古いタイプのPFAS
PFAS制限を阻む化学業界が行ってきたロビー活動についてもっと知る→「ヨーロッパ:「永遠の化学物質」めぐり化学業界のロビー活動が判明」

北大西洋を泳ぐセミクジラ(写真:FWC Fish and Wildlife Research Institute / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])





















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