マラッカ・シンガポール海峡:海賊が急増

執筆者 | 2025年08月29日 | GNVニュース, アジア, 法・人権

GNVニュース 2025年8月29日

2025年前半、マラッカ海峡とシンガポール海峡において海賊や武装強盗の発生件数が80件に達し、前年同期の約4倍に急増したことが報告された。この地域は世界の海上貿易の約60%、アジアの石油輸入量の70%の輸送に利用され、年間に約9万隻の商船がここを通過している。

増加した事件の多くは船舶が速度を遅くする必要のあるフィリップ水路で起きており、主に午前1時から6時にかけて大型のバルクキャリアやタンカーに接近して乗り込み、船に固定されていないものやエンジン、発電機の予備部品を窃盗する事例が多い。乗組員に大きな被害を与えないことが特徴だが、事件数の上昇は船舶の安全に対する懸念を呼び起こしている。また、船舶を追跡できる自動識別システム(AIS)を用いて標的を割り出すなど、データ駆動型の海賊行為を行っていることも最近の傾向である。犯人の多くを占めるのは経済的に困窮していたり、仕事が限られた遠隔のインドネシアの島々出身の人々だとされている。

この急増の背景には様々な説がある。一つは航路の混雑が挙げられており、特に近年、紅海の不安定化を背景に船舶が紅海を避けてマラッカ海峡を経由するケースが増加したことが流通量増加の要因となっている。船会社や治安機関の腐敗もこれらの犯罪増加を後押ししているとされている。シンガポール、マレーシア、インドネシアの連携による警戒体制の強化や遠隔パトロール等だけではなく、政治・経済の側面からの解決策も求められている。

また、マラッカ・シンガポール海峡以外にも世界的に海賊事件が増えている。

海上での犯罪や人権侵害についてもっと知る→「海の上での人権侵害

シンガポール海峡(写真: David Manuel / Flickr[CC BY-NC-ND 2.0])

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