GNVニュース 2025年10月3日
2025年10月1日、カリブに位置するバルバドス、ベリーズ、ドミニカ、セントビンセント及びグレナディーン(SVG)の4か国間で、市民がビザや就労許可、技能証明なしに無期限で入出国・居住・働くことができる「完全自由移動制度」が正式に始まった。これは欧米への頭脳流出に歯止めをかけると期待されるほか、文化的に近しい4か国からこの動きが広がり、カリブ共同体の域内統合を深める画期的な取り組みとされている。
従来、カリコム(※)単一市場・経済(CSME)の下では、技能労働者や事業設立を目的とした移動など経済活動に限られていたが、今回の制度により、家族同伴での移住や余暇目的も可能となり、配偶者や子どもは教育や医療など基本的な社会サービスを受けられる。また、治安や公衆衛生に深刻な脅威を与える場合や国庫の負担となる恐れのある場合には、入国拒否や退去も認められており、安全面の懸念にも対応している。さらに権利が侵害された場合には、CSMEの苦情手続きを用いて申立が可能である。
今回の制度開始は、SVG議会が2025年9月29日に「入国制限法」を改正し、東カリブ諸国機構(OECS)準加盟地域の仏領マルティニークやグアドループ出身者に最長6か月の滞在を認めた2日後に実現した。従来、SVGとバルバドス間では不法就労が横行していたが、今後は合法的に働けるようになる。ただし、島嶼国の社会経済発展への投資と引き換えに外国人投資家に市民権を与える経済的市民権制度(ゴールデン・パスポート)で取得した国籍には自由移動は適用されない。
カリコム他国は人口流入で特定の社会サービスが逼迫することなどを懸念し慎重姿勢を示すが、2009年に開始されたOECS内の自由移動制度では特定の国への人口流入は生じず、今回の制度は比較的安心感をもって開始されたとされている。
(※)カリブ共同体(CARICOM)は、カリブ地域15か国が加盟する地域統合機構であり、経済、社会、文化、安全保障など多分野での協力を推進している。単一市場・経済(CSME)構想は、域内での貨物・サービス・資本・労働力の自由移動を目指す重要な枠組みで、一部加盟国間では技能労働者の就労や事業設立のための移動が認められている。
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セントビンセント入国・出国の際に押されたパスポートスタンプ(写真:Ian Mackenzie / Flickr [CC BY 2.0])




















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