2030年までの農薬リスク半減目標は達成不可能か?

執筆者 | 2026年03月11日 | GNVニュース, 環境

GNVニュース 2026年3月11日

2022年12月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年までに各国で農薬及び有害性の高い化学物質によるリスクを少なくとも半減することが目標の一部として設定された。

しかし2026年2月にデジタル版サイエンス誌に掲載された論文 は、ほとんどの国でこの目標の達成は難しいとしている。また、同論文は、農業で一般的に使用される約20種類の農薬と、主要な農産物生産国が生物多様性への悪影響を与えており、COP15の目標達成に近づくためには、有機農業の導入の拡大と毒性の低い農薬への転換が必要であることとしている。

具体的には、この論文では総適用毒性(Total Applied Toxicity:TAT)という分析手法が用いられている。これまでの世界を対象とした研究では限られた種類の農薬や種に注目するか、使用量のみに依存していた。TATは農薬の使用量だけでなく、各化学物質が生物にどれほど有害であるかを把握できる。よってTATは農薬が生態系に及ぼす害を測定する新たな世界共通の手法を開発したものとしてその意義が紹介されており国連においても2026年6月にTATのガイドラインが最終化される予定。

論文ではこのTATの手法を用い、2013年から2019年にかけて65カ国において625種の農薬の毒性に関するデータと、水生無脊椎動物や植物、魚類、受粉昆虫等8つの異なる種群への影響についてのデータを組み合わせ、TATの推移を調べた結果を示している。分析の結果、この期間においてTATが世界的に増加、言い換えれば、農薬が生態系に及ぼす悪影響が増大していることが示されている。特に、主要な農産物生産国であるブラジル、中国、インド、アメリカの4か国が世界のTATの半分以上(53〜68%)を占めていることが明らかとなり、ほとんどの種群において世界的にTATが増加していること、さらには、果物や野菜、トウモロコシ、大豆、穀物、米、その他の穀物が世界のTATの4分の3以上(76〜83%)を占めていることが示されている。

生物多様性に関する報道についてもっと知る→「生物多様性の危機を見逃す国際報道」

インド、アンドラ・プラデーシュ州における農薬散布(写真:PJeganathan / Wikimedia Commons [CC BY-SA 4.0])

 

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