GNVニュース 2026年3月13日
2026年2月27日、欧州委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエン氏は欧州連合(EU)と南米南部共同市場(メルコスール)(※1)の貿易協定を「暫定的に」適用すると発表した(※2)。この動きは、1月21日に欧州議会が欧州司法裁判所(ECJ)にこの協定の合意に対する審査を求めたことに続くものであり、欧州委員会と欧州議会の溝を深めることになると指摘されている。
25年におよぶ交渉が続けられたEUとメルコスールの貿易協定は、アメリカがEUに高関税を課す中で2026年1月17日に調印されたものであり、発効すれば人口7億人、域内GDP220億米ドルの巨大な経済圏が生まれることになる。この協定の発効によりEUで生産される工業製品やワイン、チーズなどの輸出の増加が見込まれる一方で、メルコスール諸国で生産される安価な農畜産物がEUに流入すると考えられる。この影響を直接的に受けるEUの農業従事者や、南米での農業の拡大による環境破壊を危惧する人々は協定に反対している。特に多くの農業生産を行っているフランスは今回の暫定的適用の発表に対して強い不満を表明している。
なおメルコスール諸国については、アルゼンチンとウルグアイが批准手続きを完了させており、ブラジルでも下院と上院双方で承認が行われた。パラグアイはまだ批准の途中段階にある。今回発表されたようにEUが協定の暫定的適用を実施した場合、メルコスールの批准済みの国とEUの間では数ヶ月以内に協定が発効するが、ECJや欧州議会の動向により協定が停止される可能性があるため、その運用は不安定になることが予想される。
※1 メルコスールの加盟国は、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラの6カ国(2026年3月現在)。ただし、ベネズエラは加盟国としての資格を停止されている。また、2015年にメルコスールに加盟したボリビアはEUとの貿易協定の交渉には関わっていないが、数年のうちにこの協定に参加することも可能とされている。
※2 なお、条約の暫定的適用自体は多くの前例があり、また法律上では欧州議会の同意を得る前であっても可能とされるが、慣習上は欧州議会の合意が必要だと考えられている。今回の決定は欧州議会がECJに審査を申し入れていることから合意があるとは考えにくいため批判を招いている。
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フランスのヴズールで抗議活動を行う農業従事者(写真:FreewayAllan. / Flicker [CC BY-NC-SA 4.0])





















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