2023年、GNVは日本のメディアにおいて「グローバルサウス」という用語が突如として登場したことを明らかにした。この登場は同年5月のG7広島首脳会議に向けて、この概念を広めようとする日本政府の試みの結果であった。この呼称は、グローバルサウスを構成する国々を結集し、ロシアのウクライナ侵攻に対抗するための取り組みの一部であるように見えた。日本のメディアは政府の方針に追随し、国際報道にこの用語を導入した。
グローバルサウスというラベルは、一般的に低所得国および中所得国を指すために用いられている。「サウス(南)」という部分は、これらの国々の多くが、世界の高所得国(グローバルノース)の大半よりも南側に位置していることに由来する。しかしこの概念は、地理的な位置や所得水準だけの問題ではない。多くの国々の間には、グローバルノースの国々に植民地支配された歴史に基づく連帯意識がある。また、グローバルノースの国々や企業による搾取が現在も続いているという理解も共有されている。さらに、G7のような場は、世界の進む方向をめぐる意思決定にグローバルサウス諸国が十分に参加することを妨げる役割も果たしているという認識もある。
このラベルが日本の主流メディア報道に登場してから、まだわずか3年しか経っていないが、その使用はすでに下火になりつつあるのかもしれない。
BRICSサミット、2025年(写真:GovernmentZA / Flickr[CC BY-ND 4.0])
目次
流行遅れに?
2023年にこの用語の急増を確認した後、GNVは翌年、主要な日本の新聞によるグローバルサウス報道を再検証した。その結果、2023年初頭には大量の報道が行われていたものの、2024年には報道量が大きく減少していることがわかった。この用語の使用は、定着しつつあるようには見えなかった。
また、存在していた報道も、グローバルサウスそのものや、それを構成する世界の大多数の国々に焦点を当てたものではなく、中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本による影響力争いの中で、このグループがどのような位置づけにあるかに主眼が置かれていた。グローバルサウスという用語には言及されるものの、そのグループ自体についての文脈やニュアンスは乏しかった。逆に、グローバルサウスに属する人口上位10カ国の報道は減少傾向にあった。
この分析から2年が経過した現在、報道は変化したのだろうか。2024年7月から2026年6月までの2年間について、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3紙で「グローバルサウス」という語句を含む記事数を再度集計した。
その結果、過去2年間でこの用語の使用がさらに減少していることが明らかになった。2026年前半における3紙の「グローバルサウス」に言及した記事数は、それぞれの新聞で月平均わずか6本だった。これは、使用がピークに達していた2023年前半の約4分の1であり、2024年前半の半分にあたる。
さらに、この用語を使用している記事の大半は、この概念やグループ自体について実質的な報道を行っていなかった。GNVがそれ以前の期間について行った分析と同様、ほとんどの記事はグローバルサウスに簡単に触れるだけにとどまっていた。調査対象とした2年間で、「グローバルサウス」が見出しに登場したのは、朝日新聞でわずか7本、毎日新聞で3本、読売新聞で4本に過ぎなかった。
報道内容
これらの新聞記事におけるグローバルサウスへの言及の多くが、記事中の1段落で一度だけ登場するという形であったことは確かだが、このラベルがどのような文脈で使用されていたかを見る価値はある。
ここでは例として、3紙のうちの1つである朝日新聞を取り上げてみよう。朝日新聞は2024年7月から2026年6月までの間に、「グローバルサウス」という用語を196本の記事で使用した。以下のグラフは、その用語が使用されている文や段落の文脈の概要を示すものである。一部の言及には重なりがあったため、カテゴリーの選定は、その言及を取り巻く議論の主題としてもっとも中心的なものに基づいて行った。
日本の新聞が2023年に「グローバルサウス」という用語を使い始めたとき、日本政府によるナラティブ(物語)の拡散の試みに応じていた。すなわち、日本とその同盟国は、G7で共有するロシアへの対抗という目的のもと、グローバルサウスを構成する国々の協力と参加を得なければならない、という物語である。日本のメディアはこの物語を、ほとんど疑問を挟むことも検証することもなく受け入れた。
ある程度まで、この傾向は近年も続いている。2026年現在も、朝日新聞はウクライナの文脈で日本がグローバルサウス諸国との関係を強化すべきだと訴える社説を掲載している。グローバルサウスは、日本政府や日本企業との関係の文脈で言及されることが2割以上を占めている。
しかし、この用語の使われ方の焦点は変化している。2024年から2026年にかけて、「グローバルサウス」は、中国と欧米諸国の間で起きていると新聞がみなす影響力争いの文脈でもっとも頻繁に現れた。具体的には、多くの言及は、アメリカや他の西側諸国の力が衰えつつあり、中国がグローバルサウス諸国を自らの側に引き込もうとしている、という理解に基づいて書かれている。このような描写は、全体の約3割を占めた。
グローバルサウスへの言及は、武力紛争と結びつけられることも多かった。すでに見たとおり、日本におけるグローバルサウスというラベルの使用は、ロシア・ウクライナ戦争を起点としている。その後、ガザにおけるジェノサイドや、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃などとも結びつけられるようになった。
破壊されたガザ、2023年(写真:WAFA / Wikimedia Commons[Public domain])
より広い意味では、朝日新聞によるグローバルサウスへの言及のかなりの部分は、グローバルサウスが国際政治において無視できない勢力として台頭しているという見方を示していた。これは特に、主要なグローバルサウス諸国がより強く自己主張していると受け止められたG20サミットをめぐる報道で顕著に見られた。グローバルサウスは、世界における「存在感増す国々」として記事の中でしばしば描かれていた。こうした描写は、以前の報道でも見られたものである。
視野の拡大
全体として、日本のメディアでグローバルサウスに言及する報道は、当初からグローバルサウスには属さない国々の視点から書かれてきた。朝日新聞でも、2024年から2026年にかけて、インドやインドネシアといった個別の国や、大陸としてのアフリカの視点から書かれた言及がいくつか見られた。しかし、そのような言及は依然として数が少なく、全体の約14%にとどまっている。
同時に興味深いのは、朝日新聞におけるグローバルサウス報道は量的には減少する一方で、その描写の幅はやや広がっている点である。報道は、当初の日本政府の視点に焦点を当てた段階から、ある程度発展している。例えば、グローバルサウスが一枚岩のブロックではなく、同じ利害や関心を共有しているわけではないことを認める、限定的ながらも言及が掲載されている。
西側諸国に批判的な視点も現れ始めている。たとえば、ガザでジェノサイドが起きていることが明らかになるにつれ、朝日新聞の一部の記事は、強国が国際関係における法の支配を支持すると主張する一方で、実際には二重基準を示していることを、グローバルサウス諸国の人々がよく理解している点を指摘し始めた。つまり、ウクライナ問題ではグローバルサウスの支持を得るために国際法を持ち出していた西側諸国が、ガザにおいてはその国際法の侵害に加担していたということである。
また、2025年以降、朝日新聞が「帝国の幻想 崩れゆく世界秩序」というタイトルで掲載している連載記事は、グローバルサウスの取り上げ方をさらに広げている。この連載の一つの記事では、日本のメディアではほとんど見られない視点、すなわちグローバルサウス諸国の富がグローバルノースによって搾取され続けているという指摘が行われた。記事は、アフリカの旧フランス植民地に焦点を当て、「新植民地主義はグローバルサウス諸国に共通する問題だ。アフリカでは大国の大企業が進出して資源を買い、加工し、売りさばくことで大きな利益を得ている」と述べている。また重要な点として、この連載の中には、グローバルサウスの人々の声を直接伝える記事もいくつか含まれている。
セネガルの手掘り金鉱山(写真:UN Women Africa / Flickr[CC BY-NC-SA 2.0])
とはいえ、日本のメディアによるグローバルサウス報道には、依然として多くの問題が残っている。少なくともドナルド・トランプが権力の座にあるあいだは、グローバルサウスにおけるアメリカの国際法違反について、以前よりはいくらか批判的な論調を示すことができるようになっているのかもしれない。しかし、ここ数十年にわたるグローバルサウス諸国におけるアメリカの国際法違反を日本政府が支持してきたという事実に向き合うことには、いまだに消極的であると言えよう。また、グローバルサウスの人々の継続的な搾取に日本企業がどのように関与しているのかについて議論する準備もできていない。
興隆と衰退?
「グローバルサウス」という用語の使用が減ったこと自体は、必ずしも深刻な問題とは限らない。このラベルは世界中のきわめて幅広い国々を一括りにしているため、その有用性には限界がある。また、この代わりに使いうる用語も存在する。「発展途上国」といった頻繁に用いられる言葉にはさまざまな問題が抱えているとはいえ、「低所得国・中所得国」などの表現を用いれば、グローバルサウスのある程度の代替となりうる。
しかし、このラベルの突然の興隆とその後の急速な衰退は、世界を描写する際に用いる用語の選び方においてさえ、メディアが自国政府の方針に従いがちであるという傾向に疑問を投げかける。
朝日新聞のある記事は、「グローバルサウス」という用語が、「ロシアのウクライナ侵攻や中東での紛争、第2次トランプ米政権の成立を受け」2020年代に広まったと説明している。しかし、これは正確な評価とは言い難い。この説明は、日本政府がこのプロセスを主導した役割が抜けており、2023年に日本の世界報道の中でこの用語の使用が急増したものの、その後ほぼ同じ速度で減少したという事実も捉えていない。
とはいえ、これらの新聞の記事が「グローバルサウス」の重要性をなお主張し続けている一方で、自らの報道ではその用語の使用が減少しつつある現状を踏まえれば、今こそ世界全体に対するメディアの報道のあり方を振り返る良い機会なのかもしれない。
東京都内の朝日新聞本社(写真:Akonnchiroll / Wikimedia Commons[CC BY-SA 4.0])
執筆:Virgil Hawkins
グラフィック:Virgil Hawkins





















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