「グローバル化」という言葉をあえて使う必要がないほど、現在の私たちの生活は、他の国と密接に繋がり、日常の買い物から環境問題、安全保障に至るまで世界情勢や外国の動向に影響を受けている。新型コロナウィルス感染症がもたらしたパンデミックは、感染症が国境とは関係なく世界全体に否応なしに影響をもたらし、世界がつながっていることも実感させられた。しかし、世界に関するニュースは私たちに十分に届いていると言えるだろうか。現在、SNS等でニュースや情報を得る機会も増えてはいるが、世界のニュースについて言えば、アクセスの問題もあり、マスメディアが果たす役割は、依然非常に大きい。
現状として、GNVでも2019年に朝日新聞のデータを中心に日本における国際報道に関する報告を行なった通り、メディアによる国際報道には減少がみられる。2019年には朝日新聞のデータを参考にしたが、今回、改めて読売新聞のデータを中心に国際報道の報道量の長期的な変化について考察を行いたい。

2011年1月1日(元旦)の読売新聞一面(写真: Danny Choo / Flickr[CC BY-SA 2.0])
目次
読売新聞から見る国際報道の推移
まず、2000年以降の読売新聞における25年間の国際報道の記事数に関する傾向はどのようになっているだろうか。今回は、読売新聞の過去の記事が掲載されている「ヨミダス」のデータベースを利用した。そのデータベース内で「国際」として分類されている記事数を確認したところ、以下のグラフにある通り、2000年から2008年までは常に2万記事を超えていたが、それ以降は2万件を下回っていることが確認される。2018年以降については、ヨミダス内の分類方法の変更があり「国際」に分類される記事に海外のスポーツ記事が含まれなくなったため、単純な比較はできないことから今回のヨミダスでの分析は2017年までとする(※1)。
長期的傾向として、2000年から2017年の18年間を9年ずつにわけて見てみると、2000年から2008年の1年の平均記事数23,813件に対し、2009年から2017年の平均記事数17,204件と、約28%減っていることがわかる。
また、国際報道の記事数の増減については、年による違いも大きく見られる。2000年以降で一番国際報道が多かったのは約27,000件が掲載された2002年となる。これは前年の2001年9月にアメリカで同時多発テロがあり、その後のアメリカによるアフガニスタン侵攻やイラク侵攻などが大きく報じられた時期であることが影響しているものと考えられる(※2)。その後2003年から2011年にかけて徐々に記事数は減少している。この点について読売新聞広報部に確認したところ、2025年7月18日付の回答において、2011年については、3月11日に発生した東日本大震災により、相対的に国内報道が増えたことが影響しているのではないか、との回答があった。
2017年に記事が増えている点については、ドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領選挙に勝利し、第一次政権が発足したことによりアメリカに関する報道が増加したことなどが考えられる。GNVが独自に行なっている2015年以降2024年まででの読売新聞に対する国際報道の調査でも、2017年がアメリカについての報道量が一番多かったことが確認できる。
また、GNVの2015年から2024年の調査結果とヨミダスの2018年から2024年のデータからみても、この期間の国際報道の量が比較的安定していると言える。つまり、読売新聞における国際報道は2003年から2011年までの期間で減少したものの、現在も減少し続けているわけではないと言えよう。
海外支局と特派員の減少の影響は?
上記のグラフで見た2002年から2011年の国際報道記事数の大幅な減少について別の角度からも見ていきたい。
国際報道を行う上では、現地に駐在し直接取材を行うために、読売新聞をはじめとするマスメディアは海外に特派員を派遣している。しかし、特派員の数は読売新聞に関する状況としては2000年から2025年の間に61人から50人へと減少している(※3)。この時期について、2000年以降5年ごとの特派員数を調べたところ、以下のグラフの通り、2010年から2015年の間に50名までの減少が見られた。これは、国際報道の記事数が減った時期とも一致すると言える。
また、特派員が派遣される国・地域においても2000年からの25年間で大きな変化がみられる。特に、ヨーロッパから中国への配置転換が見られる。中国には2000年には5名の派遣であったが2025年には9名とほぼ倍増している反面、ヨーロッパについては、2000年にはロンドンをはじめとして、9か所に17名が派遣されていたが、2025年には10名となっており、特派員が駐在しなくなった支局も存在する(※3)。この点についても読売新聞広報部に質問を行ったところ、以下の通り回答(2025年7月18日付)があった。
「国際報道の内容に変化はありません。海外支局の特派員が近隣地域を担当し、世界のすべての地域をカバーしています。さらに、国際部をはじめとする国内の記者が世界各地の情報を収集し、必要に応じて現地を訪れて取材活動を行っています。」
体制が変化する中においても、特派員が近隣地域のカバーを行い、国内の記者が国内から取材活動や現地出張を行うことにより、報道内容に変更がないように取り組んでいることは十分理解する。一方で、やはり、現地に駐在する特派員がいなくなる、または少なくなり一人の特派員がカバーしなければいけない地域が増え、物理的に、追求できる課題や収集できる情報量が減少することで、本社の国際部に届けられる記事原稿の数も減るなどの影響も出てくる可能性も否定できない。
国際報道のみならず、国内の報道も減少?
ここで、改めて、記事数の減少傾向について考えた時に、この傾向は国際報道に限ったものと言えるのかについても見てみたい。ヨミダスを基に国内の記事も合わせた総記事数と国際報道の記事数、国際報道の割合を示したものが以下のグラフとなる。グラフからは総記事数が、2000年代から2010年代前半においては年間10万を超えていたものの、2024年には8万件弱と総記事数自体も減少傾向にあることがうかがえる。
ただし、新聞の紙面には記載されたがヨミダスには掲載されていない記事や、ヨミダス上で記事のカウントの扱い方に変更があった可能性も否めず、ヨミダスのデータだけでは報道量が減少したと言い切れないかもしれない。そこで、新聞紙面のページ数についても確認を行なった。
結果、大きく紙面数が減っていることも明らかとなった。2000年と2024年で比較すると、2000年には朝刊、夕刊を合わせて、1日平均52.0ページあった新聞は、2024年では39.3ページとなっており、約24.5%紙面が減っている(※4)。さらに朝刊、夕刊に分けると、2000年では朝刊が平均約36.9ページ、夕刊が約15.1ページだったが、2024年には朝刊が約30.6ページ、夕刊が約8.6ページと朝刊で17.2%少なくなっており、特に夕刊については、42.1%減とかなり新聞が薄くなっていっていることがわかる。
以上から、国際報道・国内報道の量がともに減少している状況が確認される。では、その中でも、国際報道が特に減っているのだろうか。総記事数の中での国際報道の量の割合も確認した。グラフ上の折れ線で示した通り、総記事数における国際報道の割合として見ると、2011年までは国際報道の割合が大きく減少したこことがうかがえるが、その後は必ずしも国際報道の割合が突出して減少しているとは言えない。先述の国際報道の長期的傾向と同様に、2000年から2017年の18年間を9年ずつ、国際報道割合をみてみると、2000年から2008年は国際報道が全記事中平均18.2%であるのに対して、2009年から2017年には16.7%となる。これは、わずかな減少額としてとらえられる範囲と言え、国際報道、国内報道の減り幅には大きな差がないと考えられる。
国際報道、国内の報道の減少の背景
これまで見てきた総記事数、国際報道の減少の根本的な背景として、新聞離れが根底にあることは否めない。読売新聞の最高の発刊部数は2001年の10,310,091部とされる。しかし、2024年の販売部数は6,182,228部となっている(2024年については発行部数ではなく販売部数)。
この減少傾向は読売新聞に限ったものではなく、一般社団法人日本新聞協会の調査では、一般紙(朝夕刊のセットを1部として計算)の発行部数は2000年から2024年47,401,669部から24,938,756部の53%と約半減している。また、一般社団法人日本新聞協会の調査では、新聞広告費においても、同じ計算方法を行いはじめた2005年から2024年にかけて約33%にまで減少している(※5)。

2022年6月リトアニア外務大臣訪日時の読売新聞のインタビューの様子(写真: Lithuanian Ministry of Foreign Affairs / Flickr[CC BY-NC-ND 2.0])
また、「紙」での新聞の発行部数が大幅に減っている中で、新聞各社においてデジタル化に向けた取り組みが進められているが、ロイタージャーナリズム研究所が毎年作成しているデジタルニュースリポートの2025年版では、「日本の新聞社はデジタル化への対応が遅く、複数の情報源のニュースを集めて提供するYahoo! ニュースやLINEニュースなどに主導権を握られている」ことや「持続可能なビジネスモデルを見出すべく模索中」の状況にあることが指摘されている。
以上、若干単純化して議論を行なってきたが、これまで見てきたように、新聞離れが進む中で、総記事数が減少しており、国際報道についていえば、特派員数も減少するなどの状況において、国際報道、国内報道ともに記事数が減少してきていることが今回の考察において集約される。
今後の国際報道について
今後も新聞離れが進み、新しいビジネスモデルが確立できない状況が続けば、国際報道、国内の報道ともにさらに減少していくことが考えられる。現状では、デジタル化が進む中で、取材活動や執筆を直接行なっていないインターネットニュースのまとめサイトやSNSに多くの収益が入る仕組みとなっている。この状況の中で取材や執筆にコストをかけている新聞社の収益には十分つながらなければ、質の高い報道が維持されなくなる可能性もある。現時点において、国際報道のみが特に減っている状況でないことはこれまでも見てきた通りだが、やはり取材や維持コストの高い国際報道にしわ寄せがくる可能性も否めない。そして、国際報道、国内の報道ともに報道量の減少により、情報の多様性が失われることは、報道の受け手側の市民にとってもプラスとは言えない。国際報道のみならず、ジャーナリズムの置かれた状況が危うくなっている中で、一概には言えないが、情報の受け手側の市民も多様性のある報道を得るためには、コストがかかることについての議論も必要になってくるのではないかと思われる。
※1 本稿では、ヨミダスのデータの「国際」に分類されるものを「国際報道」として整理している。GNVにおける国際報道の定義については、「単に国際面に掲載されている記事に限らず、各社が紙面に乗せる記事の中で国際関係や社会、世界の姿への理解に役立つ情報だとGNVが判断したもの」としており、マニュアルに記載の通りの統一方法を採用している。なお、ヨミダスの分類については、読売新聞広報部によると、適宜見直しがなされているとのことである。
※2 ヨミダスで「国際」に分類された記事で「同時テロ」の単語を含む記事を検索すると、2002年の1年間だけ1,681件が該当する。
※3 日本新聞年鑑(2000年、2005年、2010年、2015年、2020年、2025年)「海外特派員一覧」より。兼任は1箇所のみでのカウント、嘱託も含む。
※4 読売新聞縮刷版より。
※5 財務省が発行する月刊の政策広報誌「ファイナンス」の2024年8月号に掲載されたコラム「新聞事業の動向と在り方」では、新聞社は厳しい状況にあり、販売収入や広告収入に変わり、不動産業といったその他の収入の割合を増やしているとの分析がなされている。
ライター:Maiko Takeuchi
データ:Virgil Hawkins, Honoka Nishiuke
グラフィック:Virgil Hawkins






















0 コメント