現在、ヒトモノカネ情報が国境を越えて行き交うグローバリゼーションが進行している。一見関係ないように見える遠い国での出来事や現象が世界中に響く。様々な変化をもたらしているのだ。それによって我々が影響を受けることもあれば、逆に影響を与えることもある。2015年では、パリのテロ事件やシリア・イラクでの武力紛争は大きく報道されたが、それ以外に大規模な出来事が起きていることをご存じだろうか。南スーダンやイエメンでは大規模武力紛争が続き、エチオピアでは干ばつにより1,000万人以上が食糧難に陥っていた。また、ミャンマーとナイジェリアでは歴史的な民主選挙が行われた。グローバル化の時代を生きる我々が、「他国の事」と切り捨てて良いはずがないであろう。しかし、日本の報道機関はどれほど世界状況を伝えているのだろうか。世界各地で起きている大きな出来事や現象に着目すると、ニュースメディアに取り上げられないものが少なくない。つまり、現状では国際報道が不十分ではないだろうか。
以下、我々GNVが集めたデータをもとに、国際報道量の実態を検証していく。上記の問題意識を数値で表し、まずは現状を客観的に分析する。まず、国際報道量が全体報道量に占める割合(※1)である。
新聞社ごとに大きな差はなく、朝日新聞:10.0%、毎日新聞:9.3%、読売新聞:8.9% という結果になった。これらの数値単体では国際報道の多い少ないは断言できないが、さらに他の指標と比較してみる。ここでは、スポーツ報道(※2)が全体報道量に占める割合を検討する。娯楽の1つであるスポーツと比較することによって、各新聞社が国際報道をどれほど重視しているか明らかになると考え、今回比較対象とした。
朝日新聞:23.4%、毎日新聞:23.1%、読売新聞:21.8%となっている。いずれの新聞社も、国際報道の倍以上の割合をスポーツ報道が占めていることが分かる。スポーツが多く取り上げられる一方で、国際報道の量があまりにも少ない。
さらに、比較のために外国の新聞社にも目を向けてみる。イギリスのガーディアン紙では、2009年の時点ではあるが、国際報道割合を15%に保っている。また、ベルギーの新聞社(3社)は、平均して16%となっている。それぞれの新聞が置かれている報道環境や方針が異なるため、必ずしも精密に比較できるものではない。しかしこれらと比べても、大きな差があることから、日本の新聞社における国際報道の割合は少ないことが分かる。
また、一面に占める国際報道の割合(※3)も、外国の新聞と比べると顕著な差が出ている。朝日:8.1%、毎日:8.0%、読売8.4%となっている。一方、2004年ではあるが、アメリカ大手新聞データによると、17%という数値が出ている。一面はもっとも人の目に留まりやすく、各新聞社が重要視している出来事が報道される面である。このように、一面から見ても日本の新聞社が国際報道に重きを置いていないことが明らかである。
以上のように、日本の新聞社において国際報道が重視されていない現状が浮き彫りになった。冒頭で述べたように、国際報道はグローバル社会を生きる我々にとって非常に大切なものである。十分な量の報道があってこそ、世界の出来事や現象をより迅速・正確・包括的に把握することができる。
まずは、そのような現実に目を向けてみることが大切ではないか。
脚注-----------
※1:データは2015年度。いずれも各社のオンラインデータベースを参照した。国際報道記事の定義については「GNVデータ分析方法【PDF】」を参照。
※2:各新聞社の2015年版オンラインデータベースを参照した。スポーツ面に載っている記事数をすべて数え上げた。
※3:各新聞社の2015年版オンラインデータベースを参照した。
ライター(GNV):Hiroki Shibata
グラフィック:Aya Inoue