ラテンアメリカ・カリブ海地域は広大で人口も多く、北米のメキシコから南米大陸の先端に位置するチリまでを含む。これらの地域には33の主権国家と、最大で17の海外領土が含まれている。
しかし、日本のメディアにおいては、これらは最も報道の少ない地域の一つである。GNVは2015年以降、日本の報道機関による国際報道に関するデータを収集・分析してきた。本記事はこのデータをもとに、2015年以降の10年間にわたる、日本の全国紙3紙におけるラテンアメリカおよびカリブ海地域の報道について焦点を当てる。
ラテンアメリカ・カリブ海諸国首脳会議、アルゼンチン(2023年)(写真:Palácio do Planalto / Flickr[CC BY 2.0])
目次
国際報道の傾向
日本のメディアによる世界全体の報道量は、そもそもかなり限られており、国際報道が全国紙および主要なテレビ局が発信するニュース全体の10〜12%を占めるにすぎない。
この比較的少ない報道量は、少数の強大な国々、また安全保障や貿易の面で日本にとって関心が高い国々に集中している。日本の主要紙における国際報道全体のうち、アメリカだけで25%を占める。日本から地理的に遠く、貧困レベルが高く、日本にとって戦略的な重要性が低いとみなされがちな地域や国々は、ほとんど報道されない傾向にある。ラテンアメリカ・カリブ海地域は、その典型的な例である。
GNVは、2015年から2024年までの10年間にわたり、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の朝刊に掲載された国際報道を計測した。この期間中、ラテンアメリカ・カリブ海を構成するすべての国と地域は、国際報道全体のわずか2.2%を占めるにとどまった。テレビ局による同地域の報道はさらに少なく、ほとんど存在しないと言ってよいレベルである。たとえば2021年、公共放送であるNHKによるこの地域の報道は、主要なニュース番組における国際報道のわずか0.03%にすぎなかった。
ラテンアメリカ・カリブ海地域の報道量減少
ここからは、これらの地域全体の報道が時間の経過とともにどのように変化してきたかを見ていく。2015年以降の10年間で、ラテンアメリカ・カリブ海地域の報道は、2016年をピークとして大幅に減少した。このピークはある種の例外的なものであり、同年にブラジルで開催された夏季オリンピックへの高い関心によって説明できる(※1)。オリンピック報道には大会そのものへの関心に加え、政治的・社会的側面も反映される。また、このことは、ラテンアメリカ・カリブ海地域の報道量が、たとえ大規模なものであっても単一のイベントによって大きく左右されてしまうほど低い水準にあることも示している。
しかし、2016年を除いたとしても、10年間を通じて報道量が減少していることは明らかである。最も顕著だったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがピークを迎えた2020年である。2020年の多くの期間、パンデミック報道が世界ニュースを席巻したが、ラテンアメリカは最も深刻な影響を受けた地域の一つであったにもかかわらず、そのことは報道に十分反映されなかった。その後の2022年には、国際報道はロシアによるウクライナ侵攻に独占されることとなる。これによって、もともと少なかったラテンアメリカ・カリブ海地域の報道はさらに減少した。同地域の報道は、パンデミック前の水準まで回復していないようだ。
日本の報道機関によるラテンアメリカ・カリブ海地域の報道量減少は、同地域に常駐する特派員数の減少とも関連している可能性がある。2024年時点で、日本の報道機関に登録されている同地域の特派員は7人にすぎなかった。これは、30年前の1994年に同地域に駐在していた特派員15人の半分以下である。
国別報道
国別の報道状況を検証することで、これらの新聞社のニュース価値観をよりよく理解することができる。2015年から2024年までの朝日新聞、毎日新聞、読売新聞におけるラテンアメリカ・カリブ海地域の報道を国別に分解すると、少数の国に報道が集中していることがわかる。ブラジル、キューバ、ベネズエラのわずか3カ国で、同地域に関する報道全体の半分以上を占めていた。
地域の大国であるブラジルの報道が比較的多いことは、ある程度予想できる。一方で、キューバの報道量は、そのような観点からは説明しにくい。報道量の多い3カ国について、年ごとの報道を細かく見ると、日本のメディアがこれらの国々に関心を寄せる要因がより明確になる。いずれの国についても、10年間の報道のうち約3分の1が、特定の1年間に集中しているのである。
ブラジルについては2016年であり、夏季オリンピックが報道集中の主なきっかけとなった。キューバへの高い関心は2015年に集中している。2015年のキューバ報道は相対的に多く、その年の地域全体の報道の46%をキューバが占めていた。これは、2014年12月に始まったキューバとアメリカの国交正常化プロセスに関連する出来事によって説明できる。対象期間におけるベネズエラ報道のピークは2019年であった。この年には、大統領の正統性をめぐり2つの陣営がそれぞれ自らこそが正当な政権だと主張する事態が発生し、アメリカをはじめとする国々が、実際には権力を握っていない側の候補を強く支持する立場をとった。
キューバとベネズエラへの報道の集中は、日本のメディア報道におけるアメリカの関心の強い影響を反映しており、GNVが過去の調査で明らかにしてきた点でもある。これはメキシコ報道(4位)にも見られ、アメリカ・メキシコ関係が主な関心事となっている。ペルー(5位)の場合には、日本とのつながりが注目を集めているようであり、とりわけフジモリ一族が同国報道に頻繁に登場している。
報道されない地域
ここまで見てきたように、ブラジル、キューバ、ベネズエラといった国々でさえ、ある特定の年にまとまった報道が行われることはかなりまれである。大半の期間において、ラテンアメリカ・カリブ海地域は日本のメディアからほとんど姿を消していると言ってよい。
もちろん、これは報道に値する出来事が起きていないことを意味するものでは決してない。たとえば過去10年間には、コロンビアで歴史的な和平合意が結ばれたものの、多くの面でその和平は定着していない。同じ期間、ハイチでは政情・治安・経済状況が大きく悪化し、人道危機と言える状態に陥っている。より広い政治的観点から見ると、この10年のあいだにラテンアメリカ各国では、左派と右派の政治勢力の興亡が繰り返されてきた。ボリビアにおける突発的な政変や長期的な不安定さは、その象徴的な例である。
コロンビア(3紙合計で10年間に129,756字)を除けば、そのような国々の報道は乏しいと言わざるをえない。たとえばハイチ(40,792字)とボリビア(30,514字)の報道量は、3紙それぞれについて年平均にすると、中程度の長さの記事が年間およそ2本に相当する。
数多くの小さなカリブ海諸国や海外領土(その多くは欧州諸国の属領)は、この10年間にいずれの新聞でも一度も報道されていない。その中には注目すべき領土として、世界的なタックスヘイブンとして大きな役割を果たしているイギリスの海外領土ケイマン諸島も含まれる。世界におけるタックスヘイブンや不透明なオフショア金融の巨大な問題を詳細に明らかにした2016年のパナマ文書や2021年のパンドラ文書の流出でさえ、日本のメディアがこの領土に目を向けるきっかけにはならなかったようだ。
大規模抗議デモ、ボリビア(2019年)(写真:Ariela2020 / Wikimedia Commons[CC BY-SA 4.0])
さらなる減少の可能性?
日本から見ると、ラテンアメリカ・カリブ海地域は遠く離れた、場合によっては自国とあまり関係のない地域に見えるかもしれない。しかし、そのような見方は、グローバル化がますます進む現代世界の現実から乖離しているとも言える。
国際報道全体の量や、ラテンアメリカ・カリブ海地域に駐在する特派員の数は、現時点では一応、下げ止まっているようにも見える。しかし、日本の報道産業全体は明らかに縮小傾向にあり、ラテンアメリカ・カリブ海地域に関する、すでに低水準にある報道がさらに減少するのは時間の問題と思われる。
※1 GNVでは、スポーツそのものの試合報道は国際報道としてカウントしていない。ここでカウントしているのは、オリンピックに直接または間接的に関連する政治・社会・経済ニュースである。
執筆:Virgil Hawkins
グラフィック:Virgil Hawkins





















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