気候変動。現在、人類が直面している最も深刻な危機と言っても過言ではない。気温上昇、海面上昇、干ばつ、洪水、異常気象、森林火災など、この現象がもたらす被害はすでに大いに発生しており、今後も悪化する一方であろう。天気予報では、「史上最大」や「記録的」などの言葉が使われる回数が増加中。その負の影響は保健医療、経済、社会、安全保障など、あらゆる分野で現れている。
問題の悪化を止めるためにさまざまな対策が打ち出されているが、いずれも社会・経済における抜本的な改革を要する。エネルギーの使い方、産業の運営の仕方、生活や消費のあり方など、グローバルなレベルでの見直しが必要とされる。
しかし、危機の深刻さをわかりながらも、改革が進まない。2030年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を半減するという目標を掲げながらも、いまだ排出が増え続けている。各国政府による本格的な対策は少なく、言葉と行動が矛盾する点があまりにも多い。企業がひたすら消費の増加を促す。さらに、世論の意識を高め、政府と産業に火を付けるはずのメディアによる報道量と内容がほとんど変わらない。「気候沈黙」(climate silence)状態なのである。
そこで生まれたのが「気候報道を今」(Covering Climate Now)という運動。コロンビア大学(アメリカ)のコロンビア・ジャーナリズム・レビュー紙(Colombia Journalism Review, CJR)とザ・ネーション誌(The Nation、アメリカ)が報道の責任と役割に着目し、危機の規模に相応するレベルの報道の必要性を訴えた。世界各国から250以上の報道機関がこの呼びかけに答えた。GNVもその一つとなる。
気候変動への対策が進まない中、国連主催で2019年9月23日に「気候サミット」が開催される予定である。国連事務総長は各国代表からは演説ではなく、具体的な計画を用意するようにと、行動志向的な場を設けている。「気候報道を今」運動に参加している報道機関は、サミット開催までの1週間(9月15〜23日)で気候変動に関する報道を増やすことにコミットしている。
GNVはすでに、記事やポッドキャストを通じて日本のメディアにおける「気候沈黙」を指摘している。「気候報道を今」のキャンペーン期間中も、ポッドキャスト、グローバルビュー(GV)の記事、ICHIMAI WorldやFacebook、Twitterなどでも気候変動に関する情報を集中的に発信していく。
(写真:Dirk Ingo Franke / Wikimedia [CC BY-SA 2.0])