国境を越えるエリート・ネットワーク

執筆者 | 2026年07月2日 | Global View, ヨーロッパ, 世界, 北中アメリカ, 政治, 経済・貧困

2026年6月、ダイアログ(Dialog)と呼ばれる排他的な団体の会員および招待客が集まる会合の招待者リストが流出した。この会合は2026年8月にアイルランドのダブリンで開催される予定で、複数の国から企業、政治、軍事分野のトップクラスの人物が名を連ねている。

この年次集会にはテクノロジー業界の参加者が多いものの、出席者は特定の産業、分野、国籍に属しているわけではない。また、世界が直面する単一の共通課題の解決に取り組んでいるわけでもない。全体として、参加者に共通しているのは、莫大な富または政治権力、そして一部には文化的・メディア的権力を持っていることだけのように見える。

そのような集まりの機能とは何なのだろうか。ダイアログには一般向けのウェブサイトがなく、自らを「CEO、創業者、公共知識人、政府指導者、投資家、アーティストなどが招待制で集まり、オフレコの会話を通じて互いから学ぶコミュニティ」とだけ説明している。ワイアード誌は、2026年会合で議論される予定のテーマの一部を明らかにしており、その中には「お金は幸福を(買えるのか)買えないのか」「第三次世界大戦をどう乗り切るか」「戦場テクノロジー」「カルトの作り方」などが含まれている。ダイアログは内部向けの出会い系サイトまで立ち上げており、「特別な人々のための有意義なつながり」を提供している。きわめて個人的なレベルでのネットワーキングが、この団体の目的の一つであると考えられる。

ダイアログは、並外れた富と権力を持つ人々にネットワーキングの機会を提供する複数の会合の一つにすぎない。本記事では、そのようなネットワークと、その存在理由を探る。

スイス・ダボスで開催されるWEF年次総会でのネットワーキング(写真:World Economic Forum / Flickr[CC BY-NC-SA 4.0])

ダイアログ

ダイアログは2006年からこの種の社交イベントを開催している。一般的には、約150人が参加する2日間のリトリート形式で行われていると考えられている。この組織を最初に立ち上げたのは、送金サービスのペイパル(PayPal)やデータ分析企業パランティア(Palantir)などを共同創業した億万長者ピーター・ティール氏である。ダイアログの常連出席者には、イーロン・マスク氏やリード・ホフマン氏など、ペイパルの立ち上げに関わった元同僚たちが含まれる。彼らはその後も強大なテック企業を次々と設立し、その一群はまとめて「ペイパル・マフィア」として知られている。

同じセクターで働いていた元同僚たちが親密な関係を保ち、ビジネス上のネットワークを続けていくのは、ある意味自然なことかもしれない。しかし前述のとおり、ダイアログのようなネットワークは、そのような業界固有のつながりをはるかに超えており、その目的はグローバルなものだ。アメリカの金融業者ジェフリー・エプスタイン氏のメールの中から見つかり、いわゆるエプスタイン文書として公開された2014年のダイアログ会合への招待状では、この集まりは「世界を変えることについての参加型かつ起業的な対話」とうたわれていた。

また、参加者は国境に縛られているわけでもない。2026年のダイアログの参加者は、主に米国の裕福な個人や政策決定者によって占められているものの、ドイツ、日本、クウェート、パキスタン、サウジアラビア、英国などの国々からの参加者も記載されている。

その他のエリート・ネットワーク

富を持つ人々と政治権力を持つ人々を結びつける活動には長い歴史がある。たとえばビルダーバーグ会議は、1954年から開催されている。ヨーロッパと北米を中心に約130人の「政治指導者と、産業、金融、労働、学界、メディアの専門家」が集まる、非公式かつ秘密性の高い年次会合だ。この会議は主にネットワーキングの場と受け止められており、詳細な議題はなく、公式の決定もなされない。しかし、そこでのネットワークづくりが現実世界の成果につながるケースもある。たとえばビルダーバーグ会議の元議長の一人は、この会議がユーロ導入の基盤づくりに寄与したと示唆している。

2011年、スイス・サンモリッツでのビルダーバーグ会議(写真:swiss-truth / Flickr[CC BY 2.0])

スイス・ダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会も、1971年以来、政治・経済エリートが非公式の議論を行う場となってきた。ダボス会議は、ビルダーバーグ会議と比べて規模が格段に大きく、はるかに公開性が高い。会合はグローバル・ノース諸国の有力政治家や裕福なCEOたちに独占されており、そこから「ダボス・マン」「ダボス・ウーマン」や「ダボス階級」といった言葉が生まれた。この「階級」は、「銀行やテクノロジーの億万長者たち、そうした利害ときわめて近しい関係にある選挙で選ばれた指導者たち、そして全体を耐えがたいほど華やかに見せるハリウッド・セレブから成る、ネットワークが非常に発達した人々のネットワーク」として特徴づけられている。

1973年に投資銀行家デイヴィッド・ロックフェラー氏ら、日本、北米、西欧の民間人によって設立された三極委員会も、同様の種類のエリート・ネットワークの中核をなしている。「高位の政策決定者、ビジネスリーダー、メディアや学界の代表者」を結びつける場として、「セクターと地域をまたいでアイデアを育み、関係性を築くための重要な場」であるとうたっている。

こうしたエリートの集まりの中には、政治権力よりも経済権力、さらに文化的権威があるとみなされる人々に重点を置くものもある。比較的小規模な集まりの一つが、1999年から2015年までエッジという団体が毎年主催していた「億万長者ディナー(Billionaires’ Dinner)」だ。これは「我々のグローバル文化を書き換えつつある傑出した頭脳たちの集まり」であると自らを称していた。

こうした会合の参加者には大きな重なりがあることも注目に値する。たとえばジェフリー・エプスタイン氏は、ダボス会議、三極委員会、億万長者ディナーのいずれにも出席していたことが知られている。加えて、もっと小規模で非公式な国境を越えたエリート・ネットワークが無数に存在する。エプスタイン氏のメールには、政治、経済、学問、文化など多様な分野や国籍、背景を持つエリートたちが少人数で集まるランチやディナーの途切れることのない連なりが浮かび上がる。

取引としてのネットワーキング

ここで、富と権力を持つ人々が集まるインセンティブについて、大まかな整理をしておきたい。

一般的に、富を持つ人々は自らの富を維持・拡大したいと考えていると推測できる。その追求において、政策決定者は重要な役割を果たしうる。彼らは、特許保護のように、企業オーナーにとって有利な政府の企業規制を強化する権限を持つ一方で、労働環境保護といった、企業や個人の利益拡大を妨げる規制を弱める権限も持っている。企業オーナーたちは、こうした有利な政策の実現を求めて、しばしば政策決定者にロビー活動を行う。

2026年、日本の高市早苗首相と会談するパランティアのピーター・ティール氏(写真:首相官邸 / Wikimedia Commons[公共データ利用許諾(Ver.1.0)])

さらに、政策決定者は、さまざまな財やサービスについて、企業に対して大規模な政府契約を与える権限も持つ。ティールのパランティアは、その代表例だ。このデータ分析企業は、米中央情報局(CIA)のプロジェクトから発展したものであり、現在も世界中の政府機関からの契約に大きく依存している。政府はまた、多額の税金を企業への補助金や救済措置に充てている。たとえば米政府は、2008年の金融危機後、自国の金融システムを構成する企業の救済に数千億米ドル規模の資金を投じたが、その多くは現在も返済されていない。

富裕層は、政治権力を持つ人々に便宜を求めているだけではない。経済エリートは互いにネットワークを築くことにも関心を持つ。そこには、事業を拡大したり、収入源を多様化したりする方法を探すという目的もあれば、を回避する創造的な方法を見つけるという目的もあるだろう。また、似た立場にある他者と連携し、政策実現に向けて政治家への集団的ロビー活動を行うこともある。

一方、政治権力を持つ人々は、総じてその権力を維持したいと考える。民主主義体制では、そのために高額な選挙キャンペーンが必要になる。そこで、富裕な個人や企業は、選挙資金として政治家に献金を行うことで、重要なプレーヤーとなる。

しかし政治家としての地位は、いずれ終わりを迎える。多くの政治家は、その時に備え、在任中に築いた政治的・企業的な人脈を活用して、退任後の収入源を確保しようとする。退任後に急激な資産の増加を見せたイギリスのトニー・ブレア元首相は、その典型例だ。そこまでいかずとも、一社のアドバイザー職を得られれば十分という政治家もいる。

一部の政治家にとっては、こうしたネットワーキングが、政治キャリアのステップアップへの道を開くこともある。たとえばビル・クリントン氏は、1991年にビルダーバーグ会議に出席した当時、アーカンソー州知事だった。その数カ月後、彼は米大統領選への出馬を表明した。ある観察者は、この展開を「グローバルなフォーラムが、台頭途上の政治指導者たちにネットワーキングの機会を提供する様子を示すものだ」と指摘している。研究者の中には、ビルダーバーグ会議でのネットワーキングが、ウルズラ・フォン・デア・ライエン氏の欧州委員会委員長就任や、ジェームズ・ウォルフェンソン氏の世界銀行総裁就任を後押ししたとする状況証拠を提示する者もいる。

2008年、ビルダーバーグ会議に出席した米連邦準備制度理事会議長ベン・バーナンキ氏(写真:Shepherd Johnson / ウィキメディア・コモンズ[CC BY-SA 2.0])

収斂する利害

これまで見てきたように、富と権力を持つ人々の関係は、一見すると取引的なものに見える。しかしそれは、単純な便宜の交換や、特定の政策変更に賛成・反対するための一度きりの介入、あるいは単一の選挙をめぐる介入にとどまるものではない。

政治家は、社会全体の動きを規定する広範で長期的な政策選択の数々に関わっている。そこには、税制、軍事費、社会福祉、企業福祉、さらに企業が公共財をどの程度まで民営化できるか、市民のプライバシーをどの程度まで侵害できるかといった問題も含まれる。支配階級に近い距離を保つことで、超富裕層は自らの政策的な好み全体を押し出し、長期的な利害に資する政治エリートの同盟者を育てることができる。

このようにして、政治エリートと経済エリートは、同じアリーナで語り、行動するようになる。ある観察者は、WEFの「最も危険な遺産」は「コーポレート・キャプチャー(企業による支配)と呼びうるものだ」と評している。すなわち、「ステークホルダー・ガバナンス」という柔らかい言葉を通じて、多国籍企業が、グローバルな意思決定において主権国家と同等の発言権を持つべきだという考えが正当化されてきた、というのだ。そのようなテーブルにつく中で、富裕層は自分たちが世界をどう統治・再編すべきだと考えるのかという壮大なビジョンを抱き、それを実現しようとすることもある。

多くの領域で、政治指導者と富裕層の間には、利害、目的、イデオロギーの共有が見られる。たとえば「軍産複合体」と呼ばれる現象では、軍事予算の拡大が、両者にとって利益になるものとしてしばしば受け止められている。また、エプスタインと米銀JPモルガン、そして英国の元ビジネス相ピーター・マンデルソン氏の関係をめぐる暴露で見られるように、政治家が、自国の利益に反しているように見える場合であっても、他国の経済エリートと連帯することもある。

この状況をさらに複雑化しているのは、政治エリートと経済エリートを構成する個人同士の境界が曖昧になる場合だ。すでに見たように、政治指導者が退任後に富を求めるケースがある一方で、富裕層が政治の要職を目指すケースも少なくない。

米大統領とイーロン・マスク氏、サウジアラビア皇太子との会談、2025年(写真:ホワイトハウス / Wikimedia Commons[Public domain])

エリート・ネットワーキングの社会的機能

ネットワークの外側、あるいは周縁から出発する者にとっては、そもそもネットワークにアクセスできるようになること自体が大きな目標となりうる。エリート・ネットワークに入るということは、裕福で、権力があり、有名な人々を紹介されることを意味する可能性が高い。また、エリートの「クラブ」や「ギャング」の一員になったという、新たな社会的ステータスを達成した感覚として経験されるかもしれない。

多くの人にとって、他では得られない断片的な情報にアクセスできることも、ネットワークの魅力の一部だろう。それは、自分の分野で優位性を与えると見なされる情報かもしれないし、単に他人が知らない情報にアクセスできること自体に価値を見いだす場合もある。ジャーナリストのアナンド・ギリダラダス氏は、エプスタインのメールを大量に読み込んだうえで、「情報へのアクセスが広がれば広がるほど、非公開の情報はより貴重なものになる。誰もが即座に意見を発信できるようになればなるほど、限られた人だけが知る見解はより価値を増す。これらのメールは、投稿できない、あるいは投稿しない人々のための、私的で一対一のソーシャルメディアなのだ」と述べている

また、ネットワークは固定されたものではないことにも留意する必要がある。それらは築き上げ、維持し、更新し続けなければならない。こうしたネットワークにおける社交的な活動や儀式は、新たなつながりを生み出すだけでなく、参加者の思考を揃え、同質化していく役割も果たす。

アメリカに拠点を置きエリート・ネットワーキングを促進する組織であるボヘミアン・グローブを対象とした研究は、「社会的な相互作用は支配階級の結束を高める役割を果たしている」と指摘している。これと同様に、ダイアログを詳細に調査したジャーナリストは、この組織を「権力と影響力の領域を探索し、もともと同じ考えを持っている候補者を見つけ出し、そうでない者に対しては、中核ネットワークが持つ世界観、視座、目標へと入門させるための一種のマシン」だと評している

2011年、ビルダーバーグ会議を警備する警察(写真:swiss-truth / Flickr[CC BY 2.0])

説明責任に向けて?

ダイアログ、ビルダーバーグ会議、ダボスでのWEF会合といった場で、富裕層や権力者たちが密室で交わす議論の結果は、何らかの形で、そこから排除されている数多くの人々にも、いずれ確実に影響を及ぼすだろう。

報道機関は、本来、このように説明責任を欠いたエリート権力の集中に対して監視の役割を果たしうる、数少ないアクターである。しかしすでに見たとおり、メディアの代表者たちも、こうしたネットワークにしばしば招き入れられている。影響力のあるジャーナリストを排他的なグループの参加者として内部に取り込み、「クラブ」の一員にすることは、支配階級に対する批判のない、あるいは好意的な報道を確保することにつながりうる。これは、会合やエリートたちの利害を、より広いオーディエンスにとって正当なものとして見せるのに役立つ。

エプスタイン文書の公開は、本来であれば、こうしたネットワークの外にいる人々が、ますます集中しつつある権力の中心に光を当て、説明責任を求める機会となりえたはずだ。しかし、その機会は失われつつあるように見える。

 

執筆:ヴァージル・ホーキンズ

 

0 コメント

コメントを投稿する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


GNV:報道されない世界がある

新着記事

アーカイブからの注目記事

Japanese