
ハイチ共和国の首都ポルトープランス、ジャルジー地区(Jalousie)。ミントグリーン、レモンイエロー、ローズピンク――パステルの家々が急な斜面に沿って幾重にも折り重なり、屋上には洗濯物がはためく。一見すると、明るい絵画のようにも見える。だが、この塗料に覆われた斜面は、ハイチ最大級のスラムである。2010年大地震後、家を失った被災者が各地から流れ込み、人口は膨れ上がり、1ヘクタールあたりの土地に最大1800人が密集して暮らすことになった。
2013年、ハイチ政府は「美対貧困ー色彩のジャルジー (Beauty versus Poverty: Jalousie in Colours)」と名づけた計画を立ち上げ、約140万ドルを投じてこの斜面の家々を虹色に塗り替えた。しかし多くの人は、この金は本来、衛生・水道・電気・学校・インフラに充てられるべきだったと批判する。ジャルジーがちょうど富裕層の街・ペシオンヴィル(Pétion-Ville)から見上げられる位置にあることから、麓の高級ホテルに美しい眺めを与えるためのものであって、住民の暮らしを根本的に良くするものではない、との疑問も投げかけられた。この一帯のスラムとその住民は、長きにわたり高インフレ、腐敗、政治不安に苦しめられ続けている。
ただ、カメラレンズを麓からの遠望ではなく、斜面の上へと移せば、もうひとつの光景が見えてくる。隣人同士で髪を編み合う姿。食堂で米をとぐ二人の女性。間に合わせのジムで体を鍛える者や、教会で祈る人々。貧しさと黙殺のただ中にあってなお、ジャルジーには尊厳があり、希望があり、濃密な共同体の感覚が息づいている。
その塗料の下で、この斜面を本当に支えているのは色彩ではなく、そこに生きる人々なのだ。この色とりどりの丘は、そう静かに語りかけているように見える。
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(写真:imageBROKER.com / Shutterstock.com)





















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