2025年には、世界の47か国で2億6600万人が深刻なレベルの急性食料不安を経験したと、「食料危機に関するグローバル・レポート(GRFC)」は報告している。さらに2024年時点で、世界全体で6億7300万人、つまり約12人に1人が、栄養不足の状態にあった。

2015年に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs)において、世界各国は2030年までに飢餓を撲滅することを誓約した。しかし残された期間が5年を切るなか、状況は悪化しており、目標が採択された当時よりもむしろ深刻になっている。2020年には、世界的な飢餓の急激な増加が見られたが、これは2020年の新型コロナウイルスのパンデミックと関連づけられる。しかし、食料不安や栄養不足を引き起こしている要因はこれだけではない。

人々が食卓に食べ物を並べるうえで直面している問題の背景を総合的に理解しようとする試みは、「食料システム(フード・システム)」という包括的な概念の台頭につながった。この概念は、「食料の生産、加工、輸送、消費に関わる一連の活動の集合体」を指す。そこには、農業投入財と生産、加工と保存、サプライチェーン、流通、価格設定、廃棄などをめぐる課題が含まれる。

本記事では、世界各地の食料システムが抱えるいくつかの課題について、大まかな概観を示すことを試みる。

キャベツの収穫、ブルガリア(写真:sandsun / Shutterstock.com)

現在の食料危機

この記事の冒頭で見たように、世界が直面している課題は極めて深刻である。ある年には、数億人もの人々が急性飢餓に苦しむ。急性飢餓とは、短期的にカロリーやたんぱく質の摂取が不十分な状態を指す。極端な不足は、短期間で命に関わる状況になりうる。

一方で慢性的な飢餓は、直ちに命を脅かすものではないかもしれないが、特に子どもにとっては、発育阻害など長期的な影響を及ぼす。こうした慢性的飢餓に直面している人の数は、急性飢餓を経験している人の数よりはるかに多い。

急性食料不安に苦しむ人々の数は、統合食料安全保障段階分類(IPC)システムによって作成されたデータから把握することができる。この取り組みは、21の機関および政府間組織によるパートナーシップの共同作業である。分類システムでは、急性飢餓のレベルを1から5までの段階で評価している。フェーズ1は飢餓が最小限もしくはほとんどない状況を指し、フェーズ5は大惨事または飢饉の状態を意味する。

執筆時点で、最も懸念の大きい47か国では、およそ1億3870万人がフェーズ3以上、つまり危機的状況にあるとされた。これらのレベルの飢餓にある人口が最も多い国は、ナイジェリア(3480万人)、コンゴ民主共和国(2650万人)、アフガニスタン(1380万人)である。最も深刻な大惨事レベル(フェーズ5)で苦しんでいる人々は、スーダン(20万人)、南スーダン(7万3000人)、ナイジェリア(1万5000人)、ガザ地区(2000人)にいた。

食料消費をめぐる問題は、単に量の問題ではない。そこには、得られる栄養の質も含まれる。この観点から見ると、問題はさらに大きくなる。例えば、26億人、つまりほぼ3人に1人が、健康的な食事を購入することができないと報告されている。一方で、2022年時点で8億9000万人もの人々が肥満であると推定されている。

市場で売られている豆、ウガンダ(写真:Alliance of Biodiversity International and CIAT / Flickr[CC BY-NC-SA 2.0])

紛争と気候変動

現時点では、カロリーの観点から見ると、世界全体としては依然として人口を十分に養うだけの食料が生産されているように見える。それにもかかわらず、多くの人が急性あるいは慢性的な飢餓に置かれているという事実は、分配に問題があることを示唆している。しかし、世界全体で食料を均等に分配することは決して容易ではなく、分配上の問題は生産上の問題と切り離して考えるのが難しい。

多くの人々は、主に地元で生産された食料に依存している。何らかの理由で地元の食料供給源が突然減少したり途絶えたりすると、遠く離れた場所から食料を補う、あるいは代替するには、大きな物流上の負担とコストが生じる。

では、なぜ食料供給源が断たれることがあるのか。その一つが武力紛争である。武力紛争は依然として、世界における急性飢餓の最大の要因である。前述の国々はいずれも武力紛争を経験しており、ソマリア、イエメン、ハイチなど、深刻な飢餓に直面している他の多くの国も同様である。紛争は食料生産を妨げ、食料サプライチェーンを遮断し、生計手段を破壊し、人々に避難や移動を強いる。場合によっては、紛争当事者が意図的に食料供給を遮断し、事実上飢餓を戦争の武器として用いることもある。最近の例としては、スーダンにおける主要な紛争当事者双方の行為や、ガザ地区におけるイスラエルの行為が挙げられる。

干ばつや洪水などの自然災害も、同様の形で食料生産や流通に影響を及ぼしうる。気候変動は、極端な高温やその他の気象条件によって、干ばつや洪水をより長期化、頻発化、激甚化させることで、こうした影響を増幅する。気候変動による農業および水産養殖の生産への損害は長期的なものであり、今後さらに悪化すると見込まれている。

食料関連の支援

危機の時期に急性飢餓が発生した場合、国連世界食糧計画(WFP)などの国連機関や、各国政府、国内外の非政府組織が提供する緊急食料支援は、重要なつなぎの措置となる。

この種の支援の多くは現物支給の形で行われ、ドナー国から大量の食料が輸送される。この実務は、ドナー国の農家が(この場合は政府に対して)農産物を販売するのに役立つが、受け入れ国の農家にとっては不利になることがある。大量の食料が流入することで、食料を生産し販売できる人々の販売価格が押し下げられてしまうからである。食料支援を地元で調達することは、支援を必要とする人々への利益を最大化し、地元の生産者への悪影響を最小限に抑えるうえで、より望ましい方法と見なされている。

栄養失調の兆候を確認する様子、バングラデシュ(写真:WFP_Shehzad-Noorani, via Peter Casier / Flickr[CC BY-NC-ND 2.0])

しかし、より最近の、そして潜在的にはさらに憂慮すべき変化として、食料支援の規模が大幅に減少していることが挙げられる。これは、多くの高所得国で政府開発援助全体の優先度が下がっていることを反映しており、同時にこれらの国々では軍事費が増加しているという傾向がある。2022年から2025年の間に、食料および農業プログラム向けに提供された緊急支援総額は59%減少した。このことは、何百万人もの人々の生活に悪影響を与える可能性が高い。

利用可能な食料支援の減少の背景には、別の要因もある。食料関連支援に利用できる資金総額が減少する一方で、食料そのものの価格は上昇している。その結果、同じ金額で購入できる食料の量が減っているのである。

食料価格

ここから、食料システムが直面するより広範な問題に話が及ぶ。仮に適切な時期に適切な場所で食料が利用可能であったとしても、家計にとって価格が手の届かないものであれば、その食料にアクセスすることはできない。

近年、世界全体が大幅な食料インフレを経験している。食料の国際取引が進展したことで、価格はもはや産地周辺の状況のみに左右されるわけではなく、世界的な需給バランスの影響を強く受けるようになった。つまり、世界の食料価格は相互に連動している。

このインフレが特に顕著になったのは2021〜2022年であり、その時期は新型コロナウイルス感染症のパンデミック、2022年のロシアによるウクライナ侵攻、主要な食料生産地域における気候ショックの増加と関連づけられている。もっとも、インフレは一様に生じたわけではない。2025年のある分析によると、多くの高所得国ではインフレをある程度抑えることができた一方で、低・中所得国では2桁台のインフレが続き、これは一次産品への依存度が高いことが一因と示唆されている。

デリカテッセンの食料品、カナダ(写真:Dennis Sylvester Hurd / Flickr[Public domain])

2026年にアメリカとイスラエルがイランに対して開始した戦争は、この問題を大きく悪化させた。ホルムズ海峡が閉鎖された結果、石油とガスの輸出が阻害され、エネルギーコストが高騰した。これにより、耕起、灌漑、収穫のエネルギーコストが上昇し、投入財や収穫物の輸送費も増大するなど、食料生産にはさまざまな影響が及んだ。また、窒素肥料やリン酸肥料の生産・流通にも影響が出た。世界の肥料取引の30%がホルムズ海峡を通過していることを踏まえると、その影響は特に深刻だった。まだ判断するには早いものの、2025年6月に海峡が暫定的に再開されたことで、肥料の流れが改善したように見える。

商業化と利ざや追求

パンデミックや紛争に伴う一時的なショックだけが、食料価格を考える際に検討すべき問題ではない。食料生産と流通のバリューチェーンのさまざまな段階に影響する、より構造的な要因が数多く存在する。そこには、原材料を生産する農家から、その他の主体へと生産・流通から得られる利益が移転される仕組みも含まれる。

これは、農業投入財のレベルで見ることができる。力を持つ多国籍アグロケミカル企業とその国家による後ろ盾は、近年、アフリカ諸国に種子の民営化を義務づける法律を導入するべく働きかけてきた。これにより、特許権者が種子取引を支配し、利益を得られるようになる。種子の価格は上昇し、場合によっては、農家が自家採種した種を分かち合ったり交換したりするという、古来からの慣行が違法とされることすらある。

農産物のアンフェア貿易も、世界の食料産業が長年抱えてきた慢性的な課題である。国際的な食料生産・流通のバリューチェーンにおいて、大企業は農産物の買い取り価格を決めるうえで大きな力を行使できる。その結果、強大なスーパーマーケットや商社は食料の流通・販売から多額の利益を得る一方で、多くの農家は生産物に対して公正な価格を得られず、慢性的な貧困に苦しみ続けている。

農家の種子バンクに保管された種、ケニア(写真:Alliance of Biodiversity International and CIAT / Flickr[CC BY-NC-SA 2.0])

先物市場を通じた農産物販売における利ざや追求も、注目に値する問題である。先物契約は本来、価格を事前に固定することで、悪天候による不作や急な価格変動などのリスクをヘッジし、市場参加者がリスク管理を行えるようにするために作られた。しかし、多くの先物取引は、実際に農産物を受け渡すのではなく、金銭決済によって清算される。その結果、市場は投機や、将来の供給量や価格に関する期待によって支配されがちになる。状況によっては、これが価格の変動性を増幅し、価格の乱高下を生み出したり強めたりすることで、脆弱な世帯に影響を与える食料価格の上昇に寄与することがある。

最後に、財務的な観点は食品ロスにも影響を与えている。例えば、買い手が見つからなかったり、価格が低すぎたりする場合、農家は収穫を見送る(あるいは破棄する)ことを選ぶ場合がある。小売レベルでは、企業は消費者が求めていると考える見た目の基準を満たさない食品を廃棄しがちである。また、品切れを避けるために過剰在庫を抱え、後に余剰分を処分する場合もある。こうした要因が、生産後に大量の農産物が廃棄される背景の一部となっている。

食料システム概念の台頭

これらの相互に関連した問題を踏まえると、食料システム改善の取り組みはどのように調整されているのだろうか。国連「栄養のための行動の10年」(2016〜2025年、その後2030年まで延長)に関連する活動は、「食料システム」という概念を強調し、食料問題に対してより包括的なアプローチが必要だという認識を広めるうえで重要な役割を果たした。

こうした活動は、2021年に開催された食料システム・サミットの土台となった。同サミットは、「世界が食料の生産・消費・捉え方を変革するため、私たち全員が協力しなければならないという事実に、世界を目覚めさせる」ことを目的としていた。これは、国連加盟国の首脳だけを対象とした政治的イベントではなかった。世界中の農民、女性、若者、先住民、その他の市民社会のアクターを代表するグループと連携して開催されたのである。

国連食料システムの状況評価、アディスアベバ、2025年(写真:Ecuador Dice No Más / Wikimedia Commons[Public domain])

サミットでは、「新たな行動とパートナーシップを促進し、既存の取り組みを強化する」ことを目的として、5つのアクショントラックが設けられた。その内容は次のとおりである。1)安全で栄養価の高い食料へのアクセスを確保すること、2)持続可能な消費パターンへの転換、3)自然に好影響をもたらす生産の促進、4)公正な生計手段の推進、5)脆弱性やショック、ストレスに対するレジリエンスの構築。その後も、2023年にはローマ、2025年にはアディスアベバでフォローアップの状況評価の会議が開催されている。

これらの取り組みは有望ではあるものの、食料システムを改善し、世界の食料不安を軽減するうえでの進展は、依然として限定的である。持続的な改善を実現するには、問題の根本原因に取り組む、はるかに大規模で協調的な努力が求められる。

 

執筆者:ヴァージル・ホーキンズ(Virgil Hawkins)

 

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