GNVニュース 2026年5月8日
イラクの南部に位置する湿地帯は、2025年の冬から2026年の春にかけての降雨に恵まれて、長期に渡る干ばつから回復しつつある。イラクの南にはフワイザ、中央、東ハンマー、西ハンマーの主な4つの湿地がある。それまで4つの湿地全体で最も干上がっていた時では冠水時の約8%の水位面積だったが、今回の雨により、約32から36%の水位
に回復した。その中でもフワイザ湿地の再生は顕著で、水位は約85%にまで回復した。
これらの湿地はチグリス川とユーフラテス川を水源としており、エデンの園の地であるとも言われている。葦やパピルスが植生し、多くの絶滅危惧種の生息地であり、渡り鳥の停留地でもあるため、湿地とそこに生息する動植物を保全するためのラムサール条約に登録されている場所である。冬から春にかけて雨が降ると、河川の洪水で水は満たされるものの、6月から9月の乾季には気温が50℃になることもあり、その際には湿地は渇き面積が縮小する。
2020年頃から続く最近の干ばつ以前にも湿地が危機に陥ったことがあった。1990年代のサダム・フセイン政権下で、この地のイスラム教シーア派を一掃する目的で意図的に湿地の水を排水した。この時、湿地は約90%が干上がった。その後水位は徐々に回復傾向にあった。
2020年頃からおよそ6年間この地を悩ませている干ばつでは、魚や鳥類などが激減し、この地域の重要な家畜である水牛の大量死も起こった。さらに、水量が減ることで塩分濃度が高くなり、湿地に流入する汚染物質が浄化されないままであることが生態系の崩壊を加速させている。この干ばつの原因はイラクが世界でも気候変動の影響を受けやすい5つの国の一つであるためだといえる。しかしそれだけにとどまらず、この湿地につながる大河の上流、支流のダム建設が干ばつの原因として挙げられている。河川を共有するトルコやイラン、シリアとも水資源をめぐり問題となっている。
今回の回復で、ひび割れていた湿地は潤い、干ばつにより避難していた農民や漁業民、水牛牧畜民がこの地に戻りつつある。
しかし、この地ではさらに油田の採掘による環境汚染や健康被害が問題となっている。一時的に水位は回復したものの、水資源管理のインフラを整えることが完全な回復には不可欠となるだろう。
イラクについてもっと知る→「イラク:連続する危機から立ち直れるか」
水をめぐる問題についてもっと知る→「世界の水紛争:報道されていない事実」

イラクの水場に浮かぶ漁船(2005年)(写真:Luca Spadini / Flickr [CC BY NC-2.0]





















0 コメント