この巨大な壁画に描かれているのは、トルコに住むクルドのジャーナリスト・芸術家であるゼフラ・ドアン氏(Zehra Dogan)。そのまわりに刻まれているのは彼女がトルコの刑務所に投獄されていた日数である。集計に使われている線が鉄格子にも、鉛筆にもなっている。
ドアン氏が投獄された背景にはトルコ政府によるクルド系住民への抑圧がある。2016年にトルコ軍とクルド系反政府勢力が、トルコ南東部の町、ヌサイビン(Nusaybin)で衝突した。トルコ軍が町を制圧し、200人が死亡、1万軒もの家屋が破壊された。ドアン氏が制圧後の町の様子と、破壊されトルコの国旗が飾られた家屋を描いた絵画を発表したところ、「テロリストのプロパガンダ」を発信したとして逮捕された。
ストリートアーティストとして活躍している「バンクシー」がその投獄への抗議として、ニューヨークでこの作品を発表した。ドアン氏は投獄中でもコーヒーの粉やトマトペーストなどを用いて隠れて絵を描き続け、2019年に2年10ヶ月ぶりに刑務所から釈放された。
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(写真:Victoria Pickering / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])