黒い服を身にまとい、武装した機動隊が集結している。その中央には装甲車。まるでこちらの行く手を阻んでいるかのようだ。武力で抗議デモを鎮圧しにきたのだろうか。一見、物々しい光景だが、機動隊一人ひとりの顔がなぜか黄色の「スマイリー」だ。整列した機動隊と装甲車の下に「よい一日を」(Have a nice day)と書かれている。まるでフレンドリーに挨拶しているかのようだ。
この作品は、装甲車の横で武装した機動隊の顔が一律にスマイリーフェイスという不気味さを放っている。作者であるストリートアーティストの「バンクシー」は何を伝えようとしているのか。
独裁国家で言論、報道などの自由が奪われる場合、武力行使が行われるなど、目に見える形で抑圧されることが多いかもしれない。では、「民主国家」と呼ばれる国ではどうだろうか。より巧妙な、目に見えにくい方法で、政府機関やビッグテック企業などによって言論統制、情報統制が行われているのではないか。権力者が市民に対し「スマイリーフェイス」で接していれば、その社会は表面上は言論統制の行われない民主的なものであり、全てがうまく行っているかのように見える。そのため、市民は権利が奪われていることにすら気づかない。
しかし、独裁国家であれいわゆる民主国家であれ、権力に立ち向かうことは何らかの危険を伴う。この作品には、そういったメッセージも込められているのかもしれない。
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