【この記事ではメンタルヘルスを扱います。ご自身の心身の状態に注意してお読みください。】
世界各地の新型コロナウイルスの流行に伴い、目に見えぬ病気にいつ感染するかわからない状況と向き合う中での不安、ロックダウン、倒産・失業などを含む経済の縮小、家族や友人と簡単には会えなくなるなどの環境の変化が起こった。これらの状況が人々の精神に影響を与えるとして、メンタルヘルスに注目が集まっている。しかしメンタルヘルスに関する問題は、当然どの社会にも以前から常に存在していた。実際に2017年には世界で7.9億人、すなわち約10人に1人がメンタルヘルスに問題を抱えていたとされる。体が健康でも、誰もが何らかのきっかけで心の健康を害してしまう可能性があるのだ。今回はそんなメンタルヘルスの実態と重要性について考えていきたい。

外を眺めるぬいぐるみ(写真:Snugg LePup / Flickr [CC BY-NC 2.0])
メンタルヘルスとは?
そもそもメンタルヘルスとは何か。元々は英語のMental Health(精神の健康)という言葉がカタカナ語として定着したものであるが、もう少し詳しく見ると、世界保健機関(WHO)の定義では、「個人が自身の能力を活かして生活上のストレスに対処し、生産的に活動し、コミュニティに貢献できる健康状態」を指す。このような健康状態は、「人間の健康に不可欠なもの」、「社会経済的・生物学的・環境的要因によって左右されるもの」であるとされている。人のメンタルヘルスが損なわれる原因は様々で、周りの環境的要因に精神が影響され、その結果として障害につながることがある。また、生まれつきの脳の特性により発達障害(※1)などがある場合、このような人々が生きづらい社会では彼らのメンタルヘルスにさらに負荷がかかることもある。このように周囲の環境によって起こる障害の様態は多岐にわたり、うつ、双極性障害、統合失調症やその他の精神病性障害、認知症など(※2)が主である。また、薬物やアルコールへの依存もメンタルヘルスの問題と同様の原因で起こったり、そうした依存そのものがメンタルヘルスの不調の原因あるいは結果となることもある。
上記のようなメンタルヘルス問題を持つ人々はどれほど存在するのだろうか。2017年には世界の男性のうち9.3%、女性のうち11.3%が何らかのメンタルヘルスの不調を持っていたというデータが出ている。しかし、この数字は現実よりも少ないかもしれない。そもそもメンタルヘルスへの注目や対応が足りていなために報告されていないケースや、症状の度合いにより本人や周りが病気に気づかないケースも多いからだ。その結果として、メンタルヘルスに不調がある人に対する必要なケアが不足しているのが現状である。ここで言うケアとしては、カウンセラーやかかりつけ医によるカウンセリング・セラピーによるものと、医師による服薬治療によるものなどが考えられる。また、音楽療法やアニマルセラピーなどによる治療が行われる場合もある。どのような治療方法を採るかは科学的根拠と患者自身の意思に基づいて決定するべきだとされている。そのほかに、家族や友人、職場などからの理解とサポートを得ることもメンタルヘルスケアには重要な役割を果たす。これらのケアとは別に、環境的要因がメンタルヘルスの不調の原因となっている場合、その根本にある問題の解決が必要になるだろう。

セラピー犬(写真:Shawn / Flickr [CC BY-NC 2.0])
特に低所得国では、そもそも保健衛生関連の予算が少なく、メンタルヘルスに割ける予算が大きく限られている。そのため、メンタルヘルスに対する十分なケアやサポートを提供する医療施設、医療従事者やカウンセラーなどの数が足りていないことが多い。メンタルヘルスに対する医療的サポートが不足していると、患者の家族が生計を立てることに精いっぱいで患者のケアにまで手が回らないといった事態に対処することもできない。こうした状況下では、患者を家に閉じ込めたり鎖で繋いでしまうというケースも存在し、人権侵害になりかねない深刻な事態が発生している。このように、メンタルヘルスが不調に陥った時に必要なケアにアクセスできるかどうかは、経済状況などにより国や地域ごとに差があるのだ。
また、世界ではまだまだメンタルヘルスに関する知識が不足していたり、精神障害に対する偏見がはびこっている。人々がメンタルヘルスの不調を隠してしまうため、適切なケアを受けることができずに苦しみ孤独を感じてしまうだけでなく、実情がデータに反映されない原因にもなっている。
現在、世界規模で子どもの生存率が上がり、人々の寿命が全体として伸びている傾向にあり、これに伴いメンタルヘルスケアに必要な予算は将来的にますます増加すると考えられる。
メンタルヘルスは人間の生存に不可欠な問題であり、世界中の誰1人として無関係ではないだろう。そんな中でも、今回は特にメンタルヘルスに影響を受けやすい、またはケアが届きにくい状況に置かれた人々をいくつかの視点で見ていく。メンタルヘルスと、それぞれ武力紛争、貧困、ジェンダー、少数派の人々との関係を順に追う。
武力紛争とメンタルヘルス
武力紛争は暴力や極度の恐怖を伴うものとして、メンタルヘルスに大きな影響を及ぼす。紛争は世界中で多くの人に甚大なダメージを与えており、世界人口の10%が身の安全が保障されていない状況にある。
紛争がもたらす脅威は身体に対するものだけではなく、紛争地域では5人に1人がメンタルヘルスに不調を抱えているとされる。武力紛争を通して、暴力を受けたり暴力を目撃したりする経験、大切な人を失った悲しみ、武装兵士に囲まれて暮らすストレス、特に女性に多いものとしては性暴力によるトラウマなどがメンタルヘルスの不調の原因として指摘されている。

倒壊した建物の間を歩く難民、シリア(写真:Chaoyue PAN 超越潘 / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
人々は紛争を逃れ他の地域に移動する過程でも多くの困難に直面する。2020年、世界では武力紛争やそれに伴う暴力、人権侵害を受け移動しなければならなかった難民・避難民の数は8,240万人にのぼった。彼らは紛争中だけでなく、移動の際にも暴力、危険な渡航、拘置など生命が脅かされる状況に置かれる。また紛争から逃れられたとしても、難民・避難民たちは慣れない地域や人が密集したキャンプでの生活、食料・水・その他生活必需品などへのアクセスが担保されていない状況や将来への不安など、様々なストレスにさらされる。実際に、パレスチナやアフガニスタンのように何十年にも渡るキャンプ生活を強いられている難民や、リビアの場合のように拘置所などで非人道的な扱いを受けている人々が後を絶たない。移住後も各種社会保障へのアクセスが十分ではない場合や、貧困状態、家族離散、労働環境が不整備など様々な問題が残る。
これらのストレスやトラウマが人々の精神に与える影響は様々で、うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)(※3)、睡眠障害などの精神障害を発症することもある。
紛争などの緊急事態下では、人道支援に使える資源・資金が限られている中で、物資面での安全が優先され、十分なメンタルヘルス治療を受ける機会は限られてしまう。また、家を離れざるを得ない状況では、もともと治療を受けていた人が継続して治療にアクセスできなくなってしまうという課題もある。
このような状況の改善策として、NGOや支援団体、国際機関などによる紛争経験者、難民・避難民のメンタルヘルスケアが模索されている。カウンセラーや医療従事者が紛争経験者の話を聞くスキルを培う研修を行ったり、現地コミュニティ内のメンタルヘルスに関する知識向上のための教育としてグループワークやカウンセリングを行う取り組みが実施されている。
しかし、紛争によって起こるメンタルヘルスの不調の原因はトラウマなどだとしてそこに着目した対策がよく見られるが、そのトラウマを生み出す原因となる根本の問題を解決しなければメンタルヘルス問題の本当の意味での解決には至らないであろう。すなわち、政治的暴力、社会的不利益、不平等、差別といった問題に注目して、メンタルヘルスケア強化対策に生活・労働環境の改善を組み込む必要がある。
ここで見たように、紛争はメンタルヘルスの不調の大きな原因である一方で、紛争下や紛争から影響を受ける社会ではケアが後回しにされてしまう現状がある。

雨の中料理をする避難民、ソマリア(写真:Frank Keillor / Flickr [CC BY-NC 2.0])
貧困とメンタルヘルス
続いて、貧困とメンタルヘルスの関係について考察しよう。現在、世界の過半数の人々が貧困状態にいる。2014年のデータでは、衣食住など最低限の生活が保証されるかどうかを示す「エシカル(倫理的な)貧困ライン」(1日7.4 米ドル)以下で暮らしている人々は世界人口のおよそ57%にのぼった。
貧困状態にある人々は、資金の不足から様々な不自由や命の存続に関わる危険を経験する。日々の賃金や食料確保の不安、子どもに十分な教育を受けさせることができないといったストレスに加え、今後の仕事や健康など将来の生活に関する不安、社会から疎外される感覚などを抱く機会は少なくないだろう。
このような状況が続くと、気分障害、人格障害(※4)などのメンタル面での不調が出てしまう傾向が高まり、これらが自殺や薬物・アルコール乱用という行為に至るケースもある。貧困が子どもに与える影響も大きく、低所得の家庭で育った子どもは、高所得の家庭に比べて3倍精神に不調をきたしやすいというデータもある。
つまり、貧困とメンタルヘルスは強い相関関係にある。貧困状態が続くとメンタルヘルスに支障が出てしまい、金銭面の心配事がなくならない限りこの流れから抜け出すことは難しい。また、心身ともに健康ではないと自立した生活を送る気力も削がれてしまい、貧困からの脱却はより一層ハードルが上がってしまう。
貧困とメンタルヘルスの負のサイクルを断ち切ることを考えた時に、貧困の撲滅が解決の糸口になるだろう。ただし、貧困が蔓延する世界ではそれ自体が困難である。貧困を生み出す構造が莫大であり、もはや個人の働きかけだけで解決できるレベルではないからだ。貧困状態という環境を変えることが難しい中、低所得者層に向けたメンタルヘルスケアを提供するプログラムを充実させることが求められる。メンタルヘルス改善と金銭援助を組み合わせたプログラムもある。
また、低所得国は高所得国よりも圧倒的に多くの課題を抱えている。低所得国では人口の大半が貧困状態にあるため、社会全体の貧困削減がある程度達成されない限りメンタルヘルスケアの提供にも障壁が残る。例えば、一般的な病院や医療従事者などの数が足りていないような地域では、メンタルヘルスケアのための施設・人員は尚更不足している。

南アフリカの貧困地域(写真:Niko Knigge / Flickr [CC BY 2.0])
貧困状態で見られるメンタルヘルス問題について様々な対策が考えられている一方で、各国の政府がメンタルヘルス・貧困改善プログラムへの出資に積極的かというと、必ずしもそうではないのが現状だ。低所得国では政府に資金が足りていないことも考えられるし、高所得国においても効果が目に見えにくいメンタルヘルスケアに力を入れることは後回しにされがちである。これに伴い貧困とメンタルヘルスの関係が十分に政策に盛り込まれていないという課題もある。
ジェンダーとメンタルヘルス
メンタルヘルスをジェンダーの視点で見た時に、まず性別によってメンタルヘルスの不調のあり方に差が出ることがわかっている。症状別に見ると、発症率は単極性うつ病(※5)は女性が男性の3倍。薬物・アルコール依存症は男性が女性の2倍。反社会性パーソナリティ障害(※6)は男性が女性の3倍。他方で、統合失調症や双極性障害の発症率にははジェンダー差がないとされている。
メンタルヘルスに影響を及ぼすストレスに注目し、その原因を考えると、一般的に女性のほうが男性よりもストレス原因となる社会的要因が多いとされている。暴力、社会経済的不利益、低賃金労働、低い・従属的な社会的地位、家族など自分以外の人間をケアするのは女性の仕事だとされる風潮、などストレス要因は様々だ。女性はこれらの要因により、男性よりも、うつ、不安などの症状につながる傾向が大きいとされる。また、家事などを含めると男性よりも女性のほうが「働く」時間が長いという実情もあり、女性にはより一層の精神的負荷がかかっていると言える。
また、妊娠・出産などのリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に関連するストレスも女性に特有のものだ。ホルモンの変化に伴う大きな身体的変化や出産、続く子育てへの不安、仕事への影響などがストレス原因となり得るだろう。実際に、妊娠中に不安・気分変調に悩む女性は全体の20%にのぼるという。
このように女性が経験する社会的なストレス要因は多様だが、ストレスの程度は国、地域、社会によっても異なることにも留意したい。就学率の男女差が大きかった、サウジアラビアなどのように女性の行動が制限される慣習がある、中南米などのように中絶が禁止されている、など地域ごとの違いによって女性のメンタルヘルスの健康状態も変わってくるであろう。
性的少数派(※7)の人々も様々なストレスによりメンタルヘルスに影響を受ける。性的少数派の人々は、性的指向や性自認(※8)が周囲の人々と自身との違いを日々の生活の中で感じることで、それ自体がストレスの原因になることがある。加えて、他者によるマイクロアグレッションからヘイトクライム(※9)まで様々な形の偏見と差別、時には精神的・身体的な暴力にさらされる。これらはうつ、不安、薬物依存などの症状につながってしまう。さらに、同性愛者の人々は異性愛者に比べて3倍以上も自殺未遂が多いとされている。
性的少数者の権利は国や地域によって違いがあり、例えば、同性婚が合法である国・地域もあれば、ウガンダのように犯罪として扱われる国、スーダンやイランなどのように同性愛が死刑にあたるケースもある。
ジェンダーに留意したメンタルヘルスケアはまだまだ充分とは言えない。女性に関しては、あったとしても、既存のヘルスプログラムは「女性」ではなく「妊婦・母親」を中心にしたものが多い。子どもの健康との関連や、リプロダクティブヘルス、家族計画という文脈でしか女性の健康に関して議論がなされず、実際の女性のニーズが充分に採用されていない状態なのだ。政策決定の場に女性が十分にいないことなどが原因の1つとなるだろう。これを踏まえて、近年、「女性の健康」の定義や、メンタルヘルス政策にジェンダーの視点を組み込んでいくことの必要性が叫ばれている。性的少数者の視点を取り入れることも同様に必要だ。ヘイトクライム法、反差別政策、同性婚の禁止および合法化などの政策が性的少数派の人々のメンタルヘルスを左右する可能性も注目されており、法制度など社会全体の構造を見直す必要が出てくると見られている。
少数派の人々とメンタルヘルス
世界中にその社会の少数派として生きる「人種」・民族グループの人々や、故郷を離れて外国で生活する人々がいる。これらの人々はコミュニティの少数派であるがゆえに周縁に追いやられたり、差別の対象となる現状がある。少数派の人々を取り巻く状況がメンタルヘルスに与える影響について見てみよう。
まずはじめに、「人種」・民族少数派の人々に着目してみよう。「人種」・民族少数派とは、人種、肌の色、言語、宗教、文化、食などのアイデンティティや生活習慣の違いによりその社会では少数派に分類される人々を指す。このような人々は、差別、社会経済的不平等などの社会的なストレス要因にさらされることが多い。これらの人々が直面する差別には、マイクロアグレッション、言葉の暴力、身体的暴力などがあり、社会経済的不平等としては、貧困・ホームレス状態、教育・雇用環境の悪さ、福祉サービスとのつながりの弱さなどが問題となる。これらの状況にさらされることで、うつやその他の精神障害に陥ることがある。例えばアメリカでは、「アフリカ系」のアイデンティティを持つ人々は「白人」のアイデンティティを持つ人々よりも統合失調症やうつの割合が高いことなどがわかっている。
また、ケアを受ける際にも様々な問題が生じている。メンタルヘルス問題に関する認識の違い、サポートの存在を知らない、言語的障壁、金銭的障壁、サービスへの信頼度の低さなど様々な課題がある。アメリカでは、これらのうちどの要素がどの程度障壁になるかにも人種・民族グループによって違いが出ているが、共通して金銭的な障壁が最大の要因になっている。これらの障壁に阻まれて、少数派の人々は多数派に比べ、ケアを受けられない、受けられたとしても質の劣るケアにしか手が届かない傾向にあることもわかっている。

移民へのスキル研修、インドネシア(写真:ILO Asia-Pacific / Flickr [CC BY-NC-ND 2.0])
次に、年々数が増えている移民の人々の置かれている状況について考える。世界の移民は過去50年間増え続けており、その数は2020年時点で約2.8億人に上った。しかし、割合にすると世界人口の3.6%にとどまり、ペルシャ湾諸国を除き、各国の中で移民は少数派であることがわかる。
移民は移住前から移住後まで、すべての段階で異なるストレスを経験する。移住前には、貧困、失業などの苦しい生活を強いられるというストレスがある。よりよい生活を求めて外国へ移ったとしても、移住後も、受け入れ側の国民と比較して雇用条件が悪いなど、安定した職を得るハードルが高いことや、移民への福祉が不十分であることなどが原因で貧困に陥る可能性もある。定住プロセスにおいても愛する家族や友達、故郷から離れた土地で、文化・言語の違い、差別、受け入れ側社会との不和、将来への不安などと向き合い続けなければならない状況が続くだろう。また、国外に出稼ぎなどで移住する親に取り残された子どもがメンタルヘルスに不調を抱えやすい傾向にあることもわかっている。
これらすべてがメンタルヘルスに影響するリスク因子となり、うつ、不安、PTSDなどを引き起こす可能性がある。対策として雇用・福祉サービスの強化、言語サポート、家族の再結合が考えられる。また、患者の移住経験に耳を傾ける態勢を整えることで、医師やカウンセラーが病気予防、治療介入における課題を認識できる土壌づくりにつなげていくことも重要だ。
メンタルヘルスに目を向ける
人間は、身体の健康がそうであるように、精神の健康も変わりゆく環境の中で絶え間なく変化する。しかし現状を見てみると上記のどのグループにおいてもメンタルヘルスへの偏見、ケアの欠如、それに伴うデータの不足という問題が浮かび上がってきた。
メンタルヘルスは個人の問題であるように見えて、周りの社会とも深くかかわっている。そのため、個人や家庭レベルでのケアに加えて、個人の声を汲み取るためのコミュニティレベルの努力、福祉サービスを提供する医療機関や福祉関連機関がまず必要になる。加えて、それらを支えるための国・地方自治体政策、そして国際機関などすべてのレベルでの対応が迫られているのだ。実際に、例えばWHOは、2019年から2023年の5年間で、特に優先すべき12カ国の1億人に質の高い・アクセスしやすいメンタルヘルスケアを提供することを目標に掲げ、官民様々なセクターとの連携を進めている。
また、近年の新型コロナウイルスのパンデミック禍では感染症関連のストレスに加え新たな問題も生じており、国内・国家間の経済格差が拡大し、メンタルヘルスに割り当てられる予算にも大きな差が出ている。感染症対策のために対面でのケアサポートが完全には行えないという状況にも陥っており、今まで以上にケアを必要とする人々がアクセスしやすいサービスが求められている。
メンタルヘルスについて考えることは、ケアが必要な人々への理解を深めるだけでなく、自分自身がメンタルに異常を感じた時にも大きな助けになるかもしれない。1人ひとりが当事者意識を持って向き合いたい話題ではないだろうか。
※1 発達障害とは脳機能の特性により子どもの発達時期に認知・行為に違いが起こる状態。
※2 うつとは気分障害の1つ。気分の落ち込みなどの精神症状に伴い、不眠、食欲不振、疲れやすいといった身体症状が現れ、生活に大きな支障が生じている状態。
双極性障害とは気分障害(うつ)の一種。気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す状態。
統合失調症とは脳の様々な動きをまとめることができずに幻覚や妄想などの症状が起こる状態。
認知症とは脳の障害などの原因により認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態。
※3 心的外傷後ストレス障害(PTSD) とはトラウマになる圧倒的な出来事を経験した後に、自分の意志とは関係なくフラッシュバックのようにその体験を思い出し、不安や緊張が高まってしまう状態。
※4 気分障害とは気分によって日常生活に支障をきたす病気の総称。今回の記事に登場する、うつ、双極性障害、単極性うつ病などが含まれる。
人格障害とは大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんだり、周囲が困ったりする状態。パーソナリティ障害とも呼ばれ、反社会性パーソナリティ障害はこの一種。
※5 単極性うつ病は気分障害(うつ)の一種。極端に気分が落ち込んだり物事への無関心が続いている状態。躁状態がなく、うつ状態のみが見られる。
※6 反社会性パーソナリティ障害は人格障害の一種。社会の規範を破り、他人を欺いたり権利を侵害することに罪悪感を持たない障害。
※7 性的少数派は性的指向や性自認の在り方が性的多数派とは異なる人々を指し、LGBTIQなどの人々も含まれる。それぞれ、レズビアン(女性に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる女性)、ゲイ(同性愛の人、特に男性に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる男性)、バイセクシュアル(異性、同性、その他のジェンダーを持つ人に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる人)、トランスジェンダー(性的少数者のうち、心と体の性が一致しない人)、インターセックス(身体の性が一般的に定められた男性・女性という状態とは一致しない、またはその中間にある人)、クイア(同性愛者などを含む性的少数者の総称)。
※8 ジェンダーアイデンティティ(性自認)とは自分の性をどのように認識しているかということ。こころの性とも呼ばれる。
※9 マイクロアグレッションとは、明らかな差別ではなくても、ステレオタイプ・偏見に基づく発言や行動で無自覚に相手を傷つける行為。また、ヘイトクライムは日本語で憎悪犯罪。人種、肌の色、性的指向、性別、宗教など特定の属性を持つ個人や集団に対する憎悪や偏見を動機とする暴力、脅迫などの犯罪行為。
ライター:Madoka Konishi